海鳴市某所
午後8時
一人の少年――が空手の練習を終えて帰宅中だった。
練習中に先輩の一撃を避け損ねて足を捻挫してしまったが、酷いものではなく
一人で帰路についていた。


           秘密がばれた日


遅くはなったものの晩御飯の準備をしなければならないが、一人暮らし同然なので
インスタントで良いか・・・と考えていたその時、世界が変わった。
まるで異世界に踏み込んだかのような違和感を覚え、ついで周囲に人が居ないことに気が付いた。
はっきり言って異常である。
先ほどまで帰宅中のサラリーマンやOLが大勢居たはずなのだ。
すると、視界の端に高速で動くモノが3つ存在することに気が付いた。
一つは小さく青い光を放つモノ、そして残り二つは自身でも見た事があるような気がする少女達。
金の髪の少女が青い物体に金の閃光を放ち、青い物体はそれをよけた。
が、その射線の先に居るのはわれらが主人公
知り合いがあまりに非常識なことをしていることに気が付き、思わず呆けてしまい
まともにその閃光を受けてしまった。

「あ、あれ?」
「ね、ねぇフェイトちゃん?い、今のって・・・」
少女たちの困惑する声。
そして・・・
「エ、エイミイ!今のってまさか・・・」
『あ、あはははは。その、結界の中に君が取りこまれたと言うか、巻き込んじゃったと言うか・・・」
「エイミイィィィィ!笑ってないでの治療を!」
君!君!大丈夫なの!」
『すぐにアースラに連れて来て!シャマルさんが来てるから直ぐに治療できる!』
!・・・ああ!腕がなんだか曲がっちゃいけない方向に曲がってる!」
「なんか心音が小さくなってくよ!フェイトちゃん早く転移ぃぃぃぃ!」
そして、ここまで意識を保ち続けてきたも此処最近知り合った人物が皆して
こういうことに関係していると悟り、意識を失った。


朝、は目を覚ました。
当たり前のように目を覚ましたので、自分が見たのは夢かとも思ったが・・・足の捻挫が治っているのを確認した。
とりあえず学校に行く用意をし、家を出る。
さあ、学校であの二人を尋問するとしようか・・・・

「おはよう
「おはよう君」
「ああ、おはようなのは、フェイト」
学校のグラウンドで出くわした3人。
当たり前のように挨拶を返すに二人はほっと胸をなでおろす。
結構やばい状態までいったのだがシャマルの治癒魔法と管理局の医療技術により
異例の速度で怪我を治療したのだ。
「なぁ二人とも、昨日変な夢を見てな」
「へ、へぇ。どんな夢なの?」
「家族3人で団欒する夢だよ。見も知らぬ父親が出てきたのは驚いたけど」
昨日のことではなくてほっとするフェイトとなのは。
丁度そこに来たアリサとすずかは3人に声をかけようとして、
「そうそう、昨日の事件は解決したのか?」
「ううん・・・結局逃がし・・・ちゃって・・・」
が何を言っているのかを理解して、思わず固まるフェイトとなのは。
アリサとすずかはが魔法関係の事件に巻き込まれたことを悟り、なのはとフェイトを見捨てた。
の顔が笑っているが目が全く笑っていないのを確認したので、何も知らないフリをしたのだ。
怒ったはとっても怖いのだ。
特にアリサは怒りに触れたことがあり、2度とあんな目に遭わないようにすると誓っているだけになおさらだった。
「さて二人とも、きりきり吐いて貰えるかな?」
「な、何のこと・・・かな?あははは・・・」
「ふぇ、フェイトちゃん・・・駄目だよ。今の君は・・・」
なのはが警告しようとするが、に目で脅されて沈黙する。
がフェイトにおもむろに近寄り、耳元でささやく。
「フェイト・・・」
・・・」
優しく甘いささやきにフェイトは顔を真っ赤にし・・・
「宿題を見せた借りがあったよな。今此処で返してくれないか?」
優しい恫喝に顔を真っ青にする。
「そういえば・・・フェイトが俺を吹き飛ばしたんだっけ?」
フェイトは更に顔色を悪くする。
「フェイト・・・嫌いになるぞ?」
に恋心を持つフェイトは・・・この一言で陥落した。

「魔法・・・ねぇ・・」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・」
フェイトはあの時―にサンダースマッシャーをぶち込んだ―の事をを思い出させられ、
壊れたように謝罪の言葉を繰り返している。
なのは達三人は苦笑いしている。
「ハラオウン一家になのは、この間翠屋で知り合った八神一家もその関係者・・・と」
フェイトとなのはは最早抵抗する事もできずに洗いざらい話してしまっていた。
「私たちも巻き込まれたのよね」
「あの時は驚いたよね・・・」
アリサとすずかもその時の事―闇の書事件の終焉―を思い出して苦笑している。
君ってオカルト関係は信じる方?」
「や、実を言うと見える方。なのは達の使うのはどっちかと言うと高度な理論によって制御された科学技術のように
思えるんだけどその辺はどうなんだ?」
「う、うん。その、どっちかと言うとパソコンのプログラムっぽいんだけど・・・って見えるって何が!」
デバイスが良い例である。
魔法の杖と言うより、その名の通り出力装置なのだから。
あと何が見えるかは皆様のご想像にお任せします。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・」
教室についてもまだ謝罪を続けるフェイトには、
「もう良いぞフェイト」
「でもでも、その、あの、えっと、き、嫌いにならない?」
「ああ、嫌いにならないよ。嫌われたい?」
「そんな事無いよ!その、私は・・・」
フェイトはいろんな意味でいっぱいいっぱいだった。
フェイトは涙目で、上目遣いをして、
「わ、私のこと、嫌いにならないで・・・」
・・・・・・教室内の時間が止まった・・・・・
フェイトは控えめに見ても美少女である。
もちろんクラスでも、と言うより学校全体を見ても大変人気がある。
そこに遠まわしとはいえ告白とも言える爆弾発言。
それを聞いた女子はフェイトを温かい目で応援し、男子は・・・嫉妬に狂っていた。
「てめえ!よくも俺たちのアイドルを!」
「いつの間におとしやがったぁぁぁぁぁ!」
男子達が暴動を起こす。
なのは達が止めようとするが、火に油を注ぐばかりだ。
なぜなら普段仲の良い3人はフェイトと同じようにアイドル的存在である。
そして・・・先頭に居る男子が思いっきり吹き飛ばされた。
再び教室内の時間が止まる。
そこには・・・拳を突き出し鷹の様な鋭い目で、暴走した男子を睨むが居た。
「お、お前良いのかよ・・・空手やってるらしいけど、そういうのは駄目なんじゃないのか?」
「ウチの道場の館長なら笑って許可をくれるさ」
事実の先輩が不良に絡まれ返り討ちにした時、相手の親が抗議に来たが笑って一蹴している。
結局、吹き飛ばされた生徒の二の舞になりたくない生徒たちは大人しくなった。

その日の晩。ハラオウン家の居間にて
「ほらアルフ。これ焼けてるぞ」
「ああ、こんな良い肉ありがとう!やっぱはいいやつだねぇ!」
「あ、あははは。餌付けだ。絶対これは餌付けしてる・・・」
今日の晩御飯は焼肉である。
しかも・・・
「ザフィーラ。こっちも良い感じのがあるぞ。お手」
「うむ。いただこう」
「ザフィーラ・・・お前にはプライドと言うものは無いのか・・・」
八神一家も参加・・・というよりクロノだけ居ない状態である。
「クロノ君も災難やなァ。こんな日に仕事やなんて・・・」
「この間の始末書が締め切り間近なんですよねえ・・・」
「なんだ?クロノの奴なにかやったのか?」
「フェイトが俺を殺しかけたアレだろう」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・」
「ああもう。事実は事実として受け入れろフェイト。それと俺はもう怒ってない」
「・・・何をやったんだ?エイミイ」
「あははは。その、砲撃魔法をちょっと・・・」
実に賑やかである。

「あ、そうだ君。今度アースラに見学に来たら?」
「・・・いいの?そんな気軽に」
「いいっていいって。アースラの皆は君の事知ってるし」
がフェイトに撃破された時はアースラ中が沈黙に包まれたりしている。
その後大騒動だった。
「そうだなぁ。まあ皆が集まる機会があったら教えて。見学に行くから」
「そうだな。その時はまた合同演習をしようか」
「え〜〜!またかよ〜!」
「きついのか?」
「めちゃめちゃきついっていうか、アタシはバトルマニアじゃねぇ」
その言葉を聞いて、バトルマニア二人が眉をしかめる。
そのままひそひそと何かを話し合っている。
それを横目に見ながらは、
「まあ楽しみにしているよ。」
微笑みながらそういい、デザートに自家製のアイスを出しヴィータを餌付けし始めた。
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