八神家のリビングにて、ある女性が非常に判断に困る
事態に直面していた。
「んぅ・・・・」
「あ、主はやて。いつまで続けるのですか・・・?」
君が起きるまでや♪」
少年を膝枕するという、そっちの趣味の人ならば垂涎物の状況だった。


     ひざまくら


 ことは2時間前にさかのぼる。
 ヴィータに連れられ、八神家に遊びに来ていただが、
前日に徹夜していた事により活動限界を迎え、眠り込んでしまった。
 ちなみに徹夜の理由は学校で出された大量の宿題であり、日頃スケジュールに余裕がない
は睡眠時間を削ることで何とか時間を作っていた。
 なのは達クラスメイトも四苦八苦している。
 リビングで白熱した格闘ゲームをしていたのだが、突然の使用するキャラクターが
無防備になったことに気付いたヴィータが隣を見ると、すっかり眠りこけたがいた。
 無理に起こすことも無いと考えたヴィータは、部屋を見渡し、新たな玩具を見つけた。
 仕事で二日間徹夜したシグナムがソファに座ってうたた寝をしていたのだ。
 ヴィータはシグナムがどんな反応を示すか試そうと、を引きずりシグナムに
膝枕をさせたのだった。

「ん・・・何だ?膝に何か乗って・・・・っ!」
 違和感を感じ、目を覚ましたシグナムが見たものは、安らかに眠るの寝顔。
 シグナムは驚きのあまり硬直し、5分にわたって固まっていた。
 ちなみに犯人は、観察を始めて1時間が経過しても目を覚まさなかったので、
飽きて散歩に行ってしまった。
 硬直が解けたシグナムは、を起こそうとしたが、安心しきった表情で眠る
起こすことができず、そのままの状態で起きるまで待つことにした。
「なぜこんな状態になっているのかはさておき、まあ犯人はヴィータあたりだろうが、
 今はいないようだな。しかし、なぜ私の膝枕などでこんなに安心しきった顔で眠れるのだ?」
「あら、いいじゃないの。それだけ信用してくれてるってことでしょう?」
 突然、シャマルが声をかけてきた。
「シャ、シャマル!お前いつの間に!」
「ついさっきよ。それにしても羨ましいわ」
「な、何がだ?」
「ふふ・・・ロマンじゃない。かわいい男の子を膝枕するなんて」
 若干ショタのけがある女、シャマル。ちなみにユーノがお気に入りである。
 本気で羨ましそうだ。
「わ、私にそんな趣味は無い!」
「はいはい。お夕飯の買い物にいってくるから君をよろしくね〜」
 シグナムは否定するが、シャマルは取り合ってくれなかった。

「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・ザフィーラ。見ない振りをするのはどうかと思うぞ・・・」
「・・・何かつっこんで欲しかったのか?」
 ザフィーラはに膝枕をするシグナムを見ない振りして通り過ぎようとしたが、
 逆に何も言われないことに若干の不安を感じたシグナムに止められてしまった。
「というか、主はやてに見つかった時にどう言い訳するつもりだ?」
「・・・・何を言い訳すればいいのだ・・・」
 はやてにこの現場を見られても、特に困ることは無いはずだ。
 ・・・・・彼女自身がからかわれる以外は・・・・

「はあ、。お前は何故あんな事をした私にこんなに当たり前に接する事ができるんだ?」
 シグナムは眠り続けるに疑問を投げかけるが、当然眠っているは答えない。
 安心しきった顔で眠り続けるを見て、まんざら嫌でもなさそうな顔をするシグナム。
「そういえば主やヴォルケンリッターの中では私が一番付き合いが長かったな」
 意外な事実を思い出し苦笑する。
 何処となく優しく微笑みながら、の顔を観察する。
 あどけない子供の寝顔。
 普段年不相応に大人な人格を持つも、眠ってしまえばやはり年相応な子供だった。
「このような小さな体で、細い腕で、この私と魔法なしで互角に戦い、敗北一歩手前まで追い込むなど
誰も想像もしないし、信じもしないだろうな・・・」
 この少年との死闘を思い出し、思わず苦笑してしまう。
 そう、この烈火の将はかつてこの少年と魔力を賭けて戦っているのだ。
 どちらも大きな傷を負い、死力を尽くして互いに牙をむき、最終的にシグナムが勝利した。
 リンカーコアを取り出し、魔力を奪い、闇の書に食わせた。
 その際ある忠告を受けたのだが、それを無視した結果、闇の書の暴走を招いた。
「お前の言う事を、もっとちゃんと考えるべきだったな・・・・」
 そうであれば、もっと違う未来になっていただろう。
 が、今のままでも十分幸せだ。
 愛する主の命の心配が無くなった。
 一人欠けてしまったが、守護騎士たちも健在だ。
 信頼できる仲間もできた。
 仕事は忙しいが追われる事も無く、誰かを傷つけ続ける事も無く、今の平穏を謳歌している。
 彼女たちにとって、此処は楽園ともいえる場所で、絶対に失いたくないものだ。
「守らなければな。今の、この幸せを・・・」
 シグナムは優しく微笑みながら、の髪を梳いていた。

 カシャカシャカシャ!
 突然のシャッター音にシグナムはそのままの表情と姿勢で固まる。
 ギギギギと錆付いた機械が動くような動作で、リビングのドアの方に向き直る。
 そこには・・・・カメラを構えたはやての姿が。
「まさか、こっち方面でもフェイトちゃんのライバルになるとはおもわへんかったなぁ・・・」
「あ、ああああああるじはやて?い、いまなにをなさりしましたか?」
「見ての通りや。写真とっとる」
 はやては更に写真を撮り続ける。
「な、なぜしゃしんをおとりになるのでしょうか?」
 驚愕と羞恥の余り先ほどから全てひらがなで喋るシグナム。
「いや〜あまりにええ感じの絵やったからつい・・・」
 シグナムはカメラを奪おうとし、起き上がろうとするがが膝の上にいることを思い出し
動けなくなった。
「なんやかや言うて君の事大事にしとるなぁ。やっぱ好きなんか?」
「この子は・・・・・・・」
 自分にとってこの少年はどういう存在なのか、それを考えるとすぐに答えは出た。
「この子は、テスタロッサ以上の、私のライバルです」
 はやてはその意味が解らず、目をぱちくりさせる事しかできなかった。


 後日、はやての撮った写真を見たフェイトは、ザンバーを振り回しながらシグナムを追い掛け回し、
結局返り討ちにされた。
「その程度ではにも勝てんぞテスタロッサ」
「・・・・・な、なんでそこでの名前が・・・・?」


 なお犯人(ヴィータ)は、シグナムがから教わったわさび入りシュークリームで撃墜したという。


後書き
シグナム夢?で良いのだろうか・・・・
出会いと激闘の話も書いてみたいなぁ。
構想もあるし・・・・・
シグナムは主人公の事を強敵と書いて友(以上)と呼ぶ、な感じに思っています。
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