鬼IN恋姫†無双 魏での風景 城から少し離れた高台で、は城を見下ろしていた。 そこに近づく人影が一つ。 「こんなところで何をしているのかしら?」 「そういうお前は仕事じゃないのか? 華琳」 普通ならこの時代にありえないだろう金髪縦ロールの王様、曹猛徳だった。 「自分の分は片付けたわ。今日はもう自由よ。ちょっと膝を貸しなさい」 「俺は魏の三羽烏に訓練つけて、後は自由だ。元々今日は休みだしな。膝くらいいくらでも貸してやるが、硬くないか?」 互いにそういって、華琳はの膝枕で寝始めた。 「女好きで男嫌い、じゃなかったか?」 「自分の周りにいたのが情けない男ばっかりだったのと、女も愛せるようになってしまっただけよ」 「俺はお前のお眼鏡にかなっているわけか」 「光栄に思いなさい。私が誰かに甘えるなんて滅多に無いのだから」 は肩すくめて、華琳の頭を撫でる。華琳は心地良さそうに目を閉じて、そのまま寝息を立て始める。 小さな体で王としての責務という重圧を受ける少女に向けて、はそっと、子守唄を口ずさんだ。 丁度昼時になり自然に目を覚ました華琳と連れ立って城下町を歩く。 昼だからか食べ物の良い匂いが立ち込めている。 「何か食べるか?」 「そこの小龍包が美味しそうね。食べて行きましょう」 二人が良い感じの店に入ると、店の店員に動揺が走る。まさか自国の王が来店するなど思ってもいなかったようだ。 「い、いらっしゃいませぇ・・・」 「普段通りで良い。俺たちは客だ」 「は、はい!」 緊張しまくりの店員を尻目に、と華琳は適当に注文する。 そして二人は食事を開始した。 「なかなかだったわね」 「もう一味欲しいところだったが、この時代で向こうと比べる方がおかしいか」 「行ってみたいわね。未来の国へ」 華琳は結構満足そうだが、未来の、あれから様々な研究をなされた料理を知るとしては物足りなかったらしい。 「やはり学校の建設は必須だと思うな」 「なによやぶから棒に」 「メニュー・・・いや、商品の目録があれば便利だろ?」 「まあそれは確かに。でも庶民で文字の読み書きが出来るのは商人か、役人を目指しているものだけよ?」 「だから学校だろう。識字率を上げるにはそうした方が良い」 「いまも塾があるけど・・・」 「あれは能力とやる気があるものにしか出来ない教育法だ。伸びる奴は伸びるがそうでない奴はまったく伸びない」 「貴方の世界ではどうだったの?」 「勉強の基礎から順番に教えていく方法があってな。まあ俺はそれが当たり前だったが、うちの世界でも比較的近代に 開発された教育法だったしなあ・・・」 華琳は外の世界の進んだ文化や技術に興味深深だった。今も子供のように目を輝かせながら聞き入り、時には質問をする。 そういう問答を続けながら歩いていると、前方から土煙が迫ってきた。 「華琳さまあああああああああ!!!」 「春蘭・・・逃げた方がいいのかしら」 「やめておけ。お前一筋のあの子がマジ泣きする」 「ふっ・・・モテる女は辛いわ・・・」 冗談めかしてそういう華琳に若干白い目を向けて、 「少女の時間は終わりだな。これからは王の時間だ」 「そのようね。では私は行くわ。・・・そうね、今夜はそっちに食べに行くわね」 「お前が来るなら季衣も来るな。大量に用意しておこう」 「お願いね。春蘭! 私はここよ!」 はそばにあった食料品店に食料を買いつけ、華琳は爆走する春蘭を止めに行くのだった。 「一人か?」 「ん? 秋蘭か。お前の姉が華琳の名前を呼びながら爆走していたが、あれはなんだったんだ?」 の屋敷、というか華琳から与えられた独立警備隊の隊舎に帰ってきたは、来賓室を改造したサロンで くつろいでいる秋蘭こと夏候淵を発見した。 「仕事を終わらせた華琳様が忽然と姿を消されたのでな。姉者は外を探しに行って、私はお前と一緒だと踏んで此処に来た のだ。外れたようだが」 「いや、あたりだ。さっきまで一緒にいた。途中であのお馬鹿を見つけたんで華琳だけ呼び止めにいってな」 「そうか」 一言そう言って茶をすする秋蘭をなんとなく見て、 「華琳は今晩こっちで飯を食っていくそうだ。仕事が無いならいていいぞ」 「ご相伴に預かろう。しかし大人数になるな」 「流琉に手伝わせるか。凪も手伝いくらいは出来るようになったし」 「・・・そう言えばだが、あの三人はお前に弟子入りしたのだったか?」 「ああ。上手い感じに教えられるものがばらけていたからな」 楽進、李典、于禁の三人はそれぞれ得意分野があるが、はそのどれもを使えたのだ。楽進は格闘術、李典はからくり・ ・・いや科学技術、于禁は双剣と、それぞれに師事していたりするのだった。当初、得体の知れない男の存在に反発 していた三人だが、華琳にの部下にされ、日々顔をあわせる中で徐々に仲良くなったのだ。 「この世界であんな物を作っている奴がいるとは思いもよらなかった」 「いや、私たちにも理解は出来なかったが・・・」 李典こと真桜は変人扱いを受けていたが、が理解を示したどころか調子に乗って色々教えたことで、更に技術力が上が ったおかげか、便利なものを作って皆に褒められ、受け入れられている。取りあえず今は螺旋槍の改造に勤しんでいるらしい。 「しかし、いつも思うのだが・・・」 「なんだ?」 「この世界の武将達は何であんなに露出面積が広いのか・・・」 「・・・気にするな」 そういえば、と秋蘭もおもう。特に呉の連中は・・・ 何気に魏の中心人物が勢ぞろいしていた夕餉が過ぎ、湯浴みも終えて寝室に行くと・・・ 「何故いる」 「別にいいでしょう?」 寝間着姿の華琳が布団の中に居た。 「命令よ。今晩一晩添い寝しなさい」 「素直に一緒に寝たいと言えばよかろうに・・・」 「恥ずかしいからいやよ」 いって、に背を向けながらそっとスペースを空ける。 「今日はやけに甘えっ子だ」 「そんな気分の日もあるわ。別にいいじゃない」 華琳は少し頬を赤らめて、自分の隣に身を横たえるに少し近づく。 「さて、腕枕と胸枕。どっちがご所望なのかな?」 「・・・・・・私を抱き枕にしなさい」 「欲張りめ」 そう言いながら、は華琳を抱きしめる。華琳は一瞬だけ体を硬くして、すぐにに身を任せた。 「一人寝が寂しいなら誰かしら呼べばいいだろうに」 愚痴るの言葉に華琳は呼べる人物を考える。桂花、春蘭、秋蘭、風、など等、特に前の三者は喜んでくるだろう。 稟はどうだろうか。 「郭嘉なら怒りながら断って、あっさり引くお前の背中を切なげに見つめてから盛大に凹むだろう」 「簡単に想像できるわね」 「更にその後、お前と寝る事を妄想して、鼻血の海に沈む」 「あれは流石にどうかと思うわ」 郭嘉、真名は稟。曹操大好きっ子なのだが求められると反射的に反発してしまう天の邪鬼。後たまに妄想狂。 そんな稟を遠目に眺めて愛でている華琳もどうかとは思う。 「あいつらが今のお前を見たらどう思うかな?」 「さあ? 幻滅するかもしれないわね」 華琳はとろけそうな表情での温もりを堪能している。男に抱きしめられて幸せを感じているなど、彼女の部下たちは どう思うか。想像には難くない。だが・・・ 「貴方を手放す気も、この恋人とも兄弟ともとれない曖昧な関係も、終わらせる気は無いわよ」 唯一本当の自分をさらけ出せ、それでも包み込んで安らぎを与えてくれるに、華琳は溺れていた。 王という重責、臣下からの期待、覇道を歩むが故の苦悩。それを忘れさせてくれるの存在は、華琳にはまるで麻薬 のようで・・・ 「依存はするなよ?」 「ふふっ。それが出来れば幸せでしょうね。でも・・・」 の忠告に、華琳は楽しげに微笑む。だが、 「私は王よ。常に貴方がいなければならない状態になってはいけない。王であるという責と誇りは何があっても失う気は無 いわ。甘く見ないでくれるかしら?」 王の眼差しで、を見据えた。 「なら安心だ。だが、疲れたらいつでもおいで。止まり木くらいにはなってやれるからな」 「ふふ。だから好きなのよ。貴方のそういうところが余計にね」 幼子の様にの胸に頬擦りして、華琳は夢の中へと旅立っていった。 無防備な寝顔を見せる華琳の顔を優しく撫でて、は窓の外に声をかける。 「・・・と言う事だ。心配は要らんよ秋蘭」 「・・・ああ。私も安心した」 秋蘭は知っていた。華琳の苦悩も、との関係も。 「俺は所詮止まり木だ。だから・・・」 「分かっている。華琳様を支えるのは我ら家臣団だ。心配するな」 「わかった。都は俺が守ってやる。思う存分戦うがいい」 「お前と楽進たち。後は防衛戦にめっぽう強い程cか。・・・鉄壁だな」 この都を守るはと魏の三羽烏。そして防衛線に定評のある軍師の程c。国一つ落とせる面子である。 「んう・・・」 が自分に意識を向けないのを眠りながら察知したのか、華琳はにきつくしがみつく。 「秋蘭。もう夜も遅い。そろそろ寝ないと玉のお肌に響くぞ」 「それは怖いな。そろそろお暇しよう」 華琳の様子に苦笑した二人は共犯者の笑みで頷きあい、秋蘭は自分の部屋に帰っていった。 は独占欲の強い華琳の頬に軽く口付けて、華琳を抱き枕にして眠りについた。 翌朝、二人が抱き合って眠っている現場を見た春蘭と桂花がを亡き者にしようとしたが、華麗に撃退されたそうな。 魏でのの立場(暫定設定) 華琳推薦の武官。その実力を見込まれ特別警備部隊を設立して隊長に任命された。他称魏の守護鬼神。同性愛が蔓延している 魏の上層部で日々性的に甘ったるい空気に耐えている苦労の人。家事全般が得意なため顔を出すと高確率で雑用を押し付けられる。ひょんなことから少女としての華琳が王の責に潰されかけているところに気づき、華琳の全てを受け止めた。 以降時々甘えにくる華琳を温かく迎え入れている。 華琳こと曹操とは恋人もどき兼兄もどき。非常に関係が曖昧。彼女自身に向ける感情が異性としての愛情なのか、兄的 存在に向けている兄弟愛的なものなのか判別できていない。何気に精神的支柱。時々理由をつけて甘えに来る。 意外にプラトニックな関係。 秋蘭こと夏候淵とはお互いに気が合うので親友。たまに料理指導という名の花嫁修業をから受けている。愛ゆえにだが、 それが向かう相手は主に華琳と春蘭。 流琉こと典韋は料理の味にうるさく、料理人としても高レベルなのファン。兄さまと呼んで慕っている。 季衣こと許緒は味は気にしないが奢ってくれるを兄ちゃんと呼んで慕っている。 魏の三羽烏こと楽進・李典・于禁はの弟子。丁度いい感じに技能がばらけている。三人ともを尊敬している。 最近楽進が男に奉仕する喜びに目覚めつつある。 風こと程cは共に街の守りにつく事になったのでそれなりにいい友人関係。場をかき回しては楽しんでいる事が多々あり。 ある意味要注意人物。 凛こと郭嘉とは知能方面のライバル。時々軍師全員と華琳、秋蘭を加えてクイズバトルをしている。今のところの全勝。 先天的天邪鬼体質。華琳様ラヴだが素直になれない。最近が気になり二人の間で揺れている。 桂花こと荀ケは彼女の方から一方的に嫌っている。でも知能方面では信用している。華琳様激ラヴ。ドMの人。 男嫌いの上に華琳に気にいられているのが気に食わないが、それが絡まない場合においては以外に仲良し。 察しがよく馬鹿では無い相手なので話し相手として申し分ないためである。 春蘭こと夏候惇は彼女の方から一方的に嫌っている。でも武の実力は認めている。華琳様激ラヴ。あと妹もラヴ。 桂花と違い本当に仲が悪い。勘違いしたり、言葉が足りずに暴走するたびに叩き伏せられているのでよく反発している。 魏における武の象徴だが、最近自信が揺らいでいる。 |