鬼IN恋姫無双 魏での風景 重鎮たちの悲劇 ある日、200キロの牙門旗を片手で持てるという怪力を持つ少女、典韋、真名は流琉、がを取り押さえていた。 「流琉・・・何のつもりだ?」 「ごめんなさい兄さま! 後で幾らでもお叱りを受けますから!」 「・・・とりあえず後で味覚破壊料理でも食べてもらおう」 「はううううう・・・・・・・」 の言葉に涙する流琉。グルメな彼女からすれば最悪の刑罰だ。そしては自分を取り囲む少女たちに視線を向ける。 「さて・・・お嬢さん方。その手に持つモノは何なのかな?」 「あら。貴方ほどの知性の持ち主が何を情けないことを。言うまでもなく化粧道具でしょう?」 「それにこちらは女性モノの服だな。そしてこっちは特別に用意させたカツラだ」 嫌らしい笑みを浮かべる女性陣(主に桂花と春蘭)に、ひたすら乾いた笑みを見せる。 言われるまでもなく理解していただが、そのことから目を反らしていたらしい。 「目的は何だ?」 「男が女の姿をすれば高確率で見るに耐えない姿になる。そして華琳様はブスは嫌いだ」 「華琳直々に俺を始末させる気か」 は忌々しそうに言葉を発し、桂花と春蘭を睨みつける。男でありながら華琳に気に入られたがお気に召さない らしい。この二人は事あるごとにに喧嘩を売ってくるのだ。他の面々は女装したらどうなるのかと言う好奇心のためだ。 流琉はこの事を聞いていなかったらしいが、ここまで来て離す事は出来ない。それに彼女自身も好奇心が勝っていた。 「さすがの貴様も流琉に取り押さえられてはどうにもできないらしいな?」 「元譲・・・!」 は彼女の妹とは仲がいいのだが、彼女とは仲が悪かった。 の目が据わる。すると、流琉が焦り出す。 「春蘭様! あんまり挑発しないで!」 「どうした?」 「と、とんでもない力で拘束が外されかけてます!!」 焦る流琉に、女性陣は戦慄する。魏の武官の中でも最強クラスの怪力を持つ彼女を持ってして不安定な体制で拮抗してい るのだ。もはや恐怖しか覚えない。 「やるぞ!」 「ええ!!」 今度は季衣まで参加してを羽交い締めにし、は化粧を施されるのだった・・・ 「・・・あの子たち。揃ってどこに行ったのかしら」 華琳は退屈だった。普段なら仕事が無い限り桂花が側から離れないし、春蘭や秋蘭が護衛についているから一人にはならない のだが、今は誰も側にいないのである。なお仕事はとっくに終わらせてある。華琳は暇に任せて城内を歩きながら信頼してい る部下たちを探しているのだった。 「抜け出したわけでもなくこういう風に一人になるのは本当に久しぶりね・・・」 いつぶりだろうかと考える。相当昔になりそうだと考えたとき、とある部屋の隙間から見覚えのある人物が映った。 「どうかしたの稟・・・って」 華琳は己の目を疑った。自分の部下である美女美少女たちが悲痛な表情で自棄酒を敢行しているのだ。 ちなみに、流琉と季衣と風はぽけーっとした表情で頬を赤らめて何かに見惚れている。 「あなたたち。何があったの?」 「か、華琳様!?」 「い、いかん! 奴を隔離しなければ!」 途端に慌て始める部下たちに怪訝な顔をする華琳。彼女らのみている方向を目で追ってみると・・・ 「―――っ!!」 華琳の全身に電気が走った。その視線の向こうには、絶世の美女がいた。 艶やかな長い黒髪。意志の強い黒曜石を思わせる瞳。白磁の頬。ゆったりとした服を着ているのでスタイルまでは分からな いが、顔は間違いなく華琳の好みど真ん中ストレート100マイルの超剛速球だった。 その様子を見た部下たち、と言うより桂花と春蘭は崩れ落ちる。それはそうだろう。より気に入られるなど考慮の外だっ たのだから。 「あなた・・・よね?」 「良く分かったな。ちなみにこれは俺の趣味じゃない」 「周りを見れば理解できるわ」 華琳はわずかに頬を上気させ、潤んだ瞳でを見上げる。その表情に、桂花と春蘭は更に肩を落としていく。 「今日一日その格好で私に仕えなさい。あと、なるべく女性を演じなさい」 「・・・これで構いませんか?」 「「「――――っ!!」」」 華琳のリクエストに答えたが女性用に声を調整。その艶かしさすら感じる声音に驚愕する女性陣。 華琳は普段見ることも無いほどの満面の笑みを浮かべ、しずしずとそこいらの貴人の女性よりも気品を持った所作を見せる に熱い視線を送っている。 「ふふふ・・・今日一日がとても楽しみだわ」 「政務はわたくしもお手伝いいたしましょう。流琉」 「は、はい! 何でしょうか、に・・・姉さま!」 姉さまと呼ぶ流琉に一瞬だけの表情が歪んだが、たおやかな微笑を浮かべて手招きする。完璧に女性の仕草だ。 「お手伝いをお願いね。あとでお菓子を作ってあげるわ」 「は、はい!」 めちゃめちゃ気合の入っている流琉の頭を優しく撫でると、流琉は顔を真っ赤に染める。それを若干羨ましそうな目で見る 華琳だったが、すぐにそれを消して悠然と歩き出す。は華琳の三歩後ろを歩き、流琉はその半歩後ろに続いた。 そして受け入れられない現実にひれ伏した女性陣は・・・ 「・・・反則よあんなの」 「・・・私たちも容姿には自信があったが、それを木っ端微塵に打ち砕かれるとは・・・!」 「それも男に・・・っ!」 やっていられないとばかりに酒を呷る。どうでもいいが親父くさい。 だがそんな中、ポツリと呟く声が。 「隊長・・・お美しい・・・」 「「「凪っ!!?」」」 ・・・何かもう一波乱起きそうな、そんな一日だった。 その後、流琉だけ雅(みやび・華琳がつけた女装時の名。奇しくも女として産まれた場合にと母親が考えていた)に 可愛がられているのに嫉妬した季衣がを姉と呼びながら執務室に吶喊。に頭を撫でられてかなりご満悦だったり、 華琳が二人だけのときにまんま姉に甘える妹になってたり、そんな華琳たちに引きつりかける顔の筋肉を必死にこらえる の姿に酷く同情的な視線をむけながらあからさまにからかう風に本気でキレかけたりとか、と華琳たちの関係に 何かを妄想した稟が盛大に鼻血を吹いて倒れていつもどおりに介抱されたりとか、凪がに女としての修行を申し込んで きたりとか、の精神的に多大に負担をかける事になったりするのだが・・・あの二人的にはある意味目的は達したので はないのだろうか。 この日から一ヶ月間、は魏から姿を消して姿を見せることはなかったらしい。 あとがき の女装IN魏でした。 この話の華琳にとって、は気兼ねなく甘えられる兄的存在でもあるので若干甘えっ子になってます。 |