鬼IN恋姫†無双 呉で行われている対工作員訓練。 すなわちVS明命のゲリラ戦であるのだが、前回仕事の都合では参加していなかった。 しかし、今回はも参加する事になり、ここに師弟対決の幕が開けたのだった。 鬼VS周泰 前回敗北した祭、穏、一刀は20の精兵を率いて森の中を進軍中。 その中にはの姿もあった。 「前回はお前たちの惨敗だったわけだが」 「・・・いうでない」 「そうですよー・・・」 そうとしかいいようが無い状況だったのだから仕方が無いのだが、二人は反論したがる。 あの時の屈辱は忘れられないのだろう。 「このあたりですねー」 「うむ、全員索敵を開始する。絶対に気を―ドサッ―早速来たか!」 祭の命令の途中で最後尾にいた兵が倒れた。 顔にはやはり落書きがあるが、それはいつもと同じではなかった。 「―今回も全力で行きます。お覚悟を―か、あの馬鹿弟子は本気でかかってくるようだな」 「さんが居ますからねー」 「やはり師匠には良い所を見せたいものなのだろうな」 は隙だらけ、いやむしろ誘っているのだがそこには反応なし。穏と祭と一刀、そして兵たちは誰一人気を抜かずに 周りを索敵しているが、軽口の一つも叩かないとやってられないのである。 密集陣形で移動を開始すると、左右両方でがさがさと木が揺れた。その両方に気をとられ、それぞれ振り向いた瞬間、真ん 中にいた兵士が倒れる。 「なっ!」 「密集陣形の真ん中をっ!?」 全員が混乱し、回りを見る中、は一人上を見ている。それに気付いた兵の一人が同じように上を見ると、明命の長い黒 髪をかすかに捕らえた。 「な、なんと・・・」 「一瞬気を逸らしただけでこれか・・・」 祭が恐怖に顔を引きつらせて言うが、は無言。そもそも明命の動きをすべて把握しているのだし。 「、何をされたか分かるか?」 「降ってきて、気絶させて、顔に悪戯書きして、また上に」 一瞬でそれをやりきった明命にむしろ感心する。他の面々は顔面蒼白だが。 「俺は一人で明命を探しにいこう。最低でも俺が戻るまでは保っておけよ」 「ふん。以前の二の舞にはならんわ」 「対策も考えてきましたからー」 「俺もあの頃より成長してるんだ。前みたいに行くか」 そういう三人を、は一切信用していない顔で眺めてから集団を離れた。 「よし、索敵を続けて・・・ぬおっ! すでに三人いない!」 「ええっ!?」 「うそおっ!?」 隊を見回して異変に気付いた祭が思わず驚き、穏と一刀も驚きを隠せない。 その後、戦々恐々としながら索敵を続け、人知れず次々減っていく仲間たちに、明命の恐ろしさを感じるのだった。 「・・・これで後は祭様、穏様、一刀様、そして師父だけですね」 明命は更に気合を入れる。呉の精兵たちも明命にとっては相手ではない。特にここは明命のフィールドだ。 雪蓮が相手でも勝てる自信がある。というか、この訓練はほぼ全員がやっているのだ。当然勝った事がある。 「三人には勝った事があるので問題は師父だけですが・・・」 普段は剣の鍛錬と各種暗器の扱い、後は対人戦闘が主なのである。 こういうゲリラ戦はとはやった事が無いので正直読めないのである。 「・・・うう。あの方だけは読めないですぅ」 そういいつつひょいと手元にあったロープを引っ張ると、 「ひゃあああああっ!!」 穏の悲鳴が聞こえた。明命が確認すると、穏が逆さ吊りになって気絶している。そして懐から墨と筆を取り出して 悪戯書き。明命基準で見て、その憎たらしい【巨乳】に筆を走らせる。非常にすっきりした顔で満足そうに頷いた。 今度は祭の気配を感じた明命はふっ、と姿を消して、一瞬後、満足そうな顔で地に伏せた祭に悪戯書きしていた。 そして何の苦労も無く一刀を撃破。とりあえずその辺に転がしておく。 後はだけなのだが、と一対一だと気付いたその瞬間に背筋に冷たいものが走る。 「いけない、これは!?」 見られている。明らかに見られている。だが、それが何処からか分からない。 『ふむ、祭も穏も意外にだらしないな。一刀は論外だが』 唐突に響くその声に、明命はビクッと肩を震わせる。普通なら声の発信源で居場所を察知できる。だが、 「こ、声がこだましていて何処で話しているのかが分からない・・・」 まるで物の怪を相手にしているような感覚に陥っている明命は、自覚した。 自分は狩る側から狩られる側になってしまったと・・・ 警戒する明命の視界に手が映る。見慣れたの手だ。その手の平が明命にははっきり見えていて・・・ 「はうあっ!?」 は真後ろに居た。丁度これから抱擁しようとしているような格好で。 真後ろにいる事すら明命は気付けなかった。が、その反応速度は尋常ではない。 一瞬で姿を消して、ちょっとした茶目っ気で後ろから抱擁しつつ捕まえようとしたから逃げ出す。 「くっ!」 まずはその場を離れる事を優先した明命は全力走り始めて、足に紐が引っかかったのを認識した。 その瞬間に明命の左方から即席で作られた矢が幾つも飛んでくる。 「っ!?」 突然のそれに驚いて大きくかわして距離をとる。が、とった先で腰に何かが引っかかる感触。すると、 「ひあああああああっ!!」 先端に棘のついた棒、俗に言うスパイクボールが迫ってくる! そのまま腰を落としてスパイクボールをギリギリでやり過ごす。 罠の存在に、近くにあった木に上る。流石に木の上には罠は無いだろうとあたりをつけて木に登り結構上まで上っ て太目の枝に乗ったところで、 ―バキイッ!― 「ばき?」 不吉な音と共に体が崩れるのを感じて愕然とする。 「そんな! 太った覚えは!?」 自分が乗っても問題ないと判断した枝が根元から折れたのだ。年頃の乙女としては信じたくないことである。 だが落下していく中、折れた枝の根元の断面が半分妙にきれいになっている事に気付く。 「き、切れ込みが入ってる!?」 そうして気付いた。罠だ。木の上にも罠があった。 慌てて周囲の枝を掴むとそれも折れた。今度は単純に細い枝だったから。 明命は潜入工作にとに貰ったフック付きロープを適当に目のついた大きな枝に投擲、しっかり引っかかったそれを 使って体を大きく振り子運動させてからいい感じの枝を見つけて着地。 「はうあっ!」 また枝が折れた。しかも先程と同じく切れ込みが入っている。 思い切って飛んで地面に着地することにした明命は覚悟を決めて飛ぶ。 そして落下中、着地地点を見てみると・・・ 「なんでっ!?」 が着地点のすぐ傍で弁当(オニギリ)を食べていた。まるでそこに来るのが分かっているかのように。 着地して即行で逃げる事にした明命は着地の瞬間に足を屈伸させて衝撃を和らげようとした瞬間、地面が陥没。 「はうあーーー!!!」 落とし穴だ。内部にはご丁寧に木の葉を大量に敷いて緩衝材にしてある。 まともに突っ込んだ明命は、 「きゅうぅぅ・・・」 目を回して気絶していた。 訓練を終えて帰還してきた街の中。 クスクスという笑い声に誰もが屈辱に耐えている中、だけは平然としていた。 というかむしろ笑っている方である。 「くそう・・・」 「一刀よ、この屈辱は次回こそ・・・」 「わかってますよー・・・」 祭たちはみんなに笑われている事に対してプルプルと肩を震わせている。 そして明命は・・・ 「はうぅぅ〜〜〜〜・・・・・」 の手の平で踊らされた事にかなりショックを受けていた。その顔には未熟者ですみませんと書いてあったり・・・ 「しかしまあ見事に嵌まったものだ」 「あうあうあうあうあう・・・・」 は明命の行動パターンを解析しており、それにあわせて罠を大量に敷いていたのだ。 「師父〜・・・。何であんなに私の行くところにことごとく罠を仕掛けられたんですか〜・・・?」 明命は不思議で仕方が無かった。いくらなんでもあんなにも綺麗に罠に嵌めるのは難しいはず。 だが答えは単純だった。 「お前が逃げ込んだあたりはあいつらの傍を離れた後に罠を設置しまくってたんだよ。お前はその中の幾つかにかかっただけだ」 実は最初に明命を捕まえようとしたとき、後ろから襲われれば前に逃げるだろうという予測の元にわざとトラップゾーンの 方を向いたときに仕掛けたのである。そして後は大量に仕掛けた罠に次々と嵌まったわけである。 「あうう・・・」 実力の差がありすぎて相手になってなかったことを今更実感した明命。 そもそもはこの手の技能にも精通している。暗殺者としての側面も持っているため、この手のゲリラ戦はむしろ大得 意である。 「まあ、まだまだ修行が足りん。これからはそっち系の技も教えてやろう」 「はいぃぃぃ・・・」 の修行の厳しさを誰よりも知る明命はがっくりと項垂れるのだった・・・ ちなみに、トラップゾーンはそのまま放置されている。 なので・・・ 「ぎゃあーーー!!」 「ひぃいいぃぃっ!!!」 「お助けええええっ!!!」 訓練にやってきた他の部隊が大打撃を被ったりしていたりするのだが・・・ 「・・・」 「冥琳、訓練には丁度よかろう」 「・・・そういうことにしておいてやる」 気絶した者はいたものの死傷者は特になし。 対トラップ用訓練が調練に追加されたのだった。 あとがき 明命の本気VER破壊の鬼でした。 うちの設定では、実はは一刀がこの世界に現れる前、孫堅が生きてた頃に来ていたりします。 なので蓮華たちにはの事は年上の兄か親に近かったりします。 祭は古い友人、雪蓮にとってはある意味対等の友人なのです。 で、冥琳は仕官以前からの知り合い(雪蓮と断金の契りをかわしたあたり)でかなり付き合い長かったり。 明命は仕官直後あたりからが面倒を見てました。 天の御使い云々は一刀が来てからのこと。 プロットを立ててた長編の設定を使って書いてるから 短編にすると色々無理が出るなあ・・・ |