少年が復活して一ヶ月。
 当初はナンバーズたちには只の実験体程度の認識しか持たれていなかったのだが、今では
誰からも必要とされる存在になっていた。



 アナザーIF  01
 少年の地位とそこに至るまでの出来事


 ケース1 ウーノの場合

「ふう、これだけがんばっているのに仕事が終わらない・・・処理が遅くなっているのかしら」
 ウーノは大量の仕事に自身の処理が追いつかず途方に暮れていた。しかもここでメンテナンスに入ってしまうと
数日間は動けずに仕事が倍以上に膨れ上がってしまう。いくら自分のISが事務処理向きとはいえ膨大な量の
仕事に辟易していた。
『ウーノさん。入りますよ』
「・・・どうぞ」
 仕事をする気にもならずに机に突っ伏していたウーノの姿には若干引いたものの勇気を出して声を掛けた。
 某女子寮に生息する漫画家の、締め切り前なのにネタが出ない時の姿がダブって見えた気がしたが、
気にしないことにした。
「少し一息入れませんか? これ差し入れのケーキとコーヒーです」
「・・・ありがとう。いただくわ」
 ウーノは目の前に置かれたケーキをのろのろと口に運び、目が冴えたように突然起き上がった。
「どうかしました? 口に合いませんでしたか?」
「ち、違うわ。あまりに美味しかったから・・・。これ、貴方が作ったの?」
「ええ。母代わりだった人が一流のパティシエだったのである程度教わってますよ」
「このコーヒーも・・・すごく美味しい」
「母代わりだった人の旦那が喫茶店のマスターだったんでその人から学びました。客に出すんだから
美味しくないと失礼ですからね」
 彼女はの持つ意外なスキルに驚いていた。
 というかこの面々にとっては食事は大して重要なものではなく燃料の補給程度の認識しか持っていなかったので
ある意味カルチャーショックを受けていた。
「食事って言うのは大事なものですよ。旨い料理を食べればそれだけでテンションが上がりますし精神的にも
満足できます。食事は体だけでなく精神にも栄養を与えるものなんですよ」
「今思い知ったわ。ああ、なんだかささくれ立った心が癒されていく・・・」
 ウーノはあっという間にケーキを平らげてしまっていた。しかし、どことなく物足りなさそうだ。
君。お代わりはあるの?」
「申し訳ない。ワンホール作ったんですけどカット中に半分ほど2番と4番に持っていかれまして・・・」
「・・・・・・後の半分は?」
「他のみんなの分が1個ずつですね。本当は2個ずつにしたかったんですけど・・・」
「そう・・・あの二人が・・・」
 ウーノの目に剣呑な光が灯る。はあの二人に警告でも出そうかと思ったが、自業自得だと思って見捨てておいた。
「残りの仕事も手伝いましょうか? 出来る範囲でですけど」
「お願い。助かるわ。・・・普通の食事も作れるのよね?」
「ええもちろん。といっても手元にある食材が底をつきかけているんであまりいいものは作れないですけど」
「それでもお願いするわ。・・・・・・仕事の先にご褒美があるとやる気が違ってくるわね」
 ウーノは先ほどまでの不調が嘘のように素早く効率的に仕事をこなしていく。
 も所々教わりながらウーノに追随する速度で仕事を終わらせ、気が付いたら一週間分の仕事が終わっていた。
「さて、じゃあそろそろ食事の準備でもしてきます」
「お願いね。私はあの愚妹共に鉄拳制裁でもしてくるわ」
 その後、某姉妹の悲鳴と共に派手な打撃音が聞こえ、満面の笑みでの手料理に舌鼓を打つ長女がいたとか。


 ケース2 チンクの場合

 チンクは元々温厚な性格もありに好意的だった。だから結構同じ空間内ですごす事が多いのだが・・・
「むう。なかなか上手くいかないな」
 チンクはの部屋で何処からか手に入れてきたダーツに興じていた。
 彼女の武装である投げナイフ・スティンガーはある程度操作が可能なので当てるのは苦労しないのだが、
ダーツを投げても上手い場所に飛ばず、なかなかに苦労していた。
。こういうのにはコツがあるのか?」
「・・・・・・・・・集中力が大事なんだよ」
「・・・さっきから何をやっているんだ? 見たところりんごの皮をむいているだけだが」
「見ての通りだが、以前やってる時に某永遠の幼女(赤毛)に邪魔されて失敗したんで現在記録更新挑戦中だ」
 包丁を使う練習代わりにやっていたのだが、フェイトと勝負している時に驚かされてりんごごと指を切って
流血沙汰に発展したりんごの皮むき。はかなり真剣だった。
「・・・凄いな。皮にほとんど実が付いていない。最早匠の域か」
「・・・・・・・・俺の料理の師匠は幅を小さくして長さを稼ぎこの競技における世界記録を持っていた」
 記録を持ってどうするのだろう? と思ったチンクだが言わないでおいた。何かのこだわりがあるのだろうと
勝手に納得しての作業を見る。
「・・・・・・器用だな。私には出来そうも無い」
「だから集中力が必要なんだって。一つの事に集中してその作業に対するリソースを増やすんだ。そうしたら
チンクにも出来るようになる。りんごの皮むきもダーツもな」
「そうなのか。私も練習してみよう」
 彼女に分かりやすいようコンピューターの用語を使っての解説に、チンクは納得したように頷いている。
 一方は一定だったりんごの皮が所々歪になっているのは話しかけられて集中できていない所為だったりする。
 が再び集中して皮をむき始め、最初の方のような綺麗な剥き方になっていくのを見て、チンクは集中力というも
のの大事さを学習していっていた。
 その時、
「わっ!!!!」
「うおっ!!」
 ISで姿を消していたらしいクアットロがを後ろから勢いよく叩き驚かせた。
「クアットロ・・・そういうのはよくな・・・い・・・」
「いいじゃないのよチンクちゃん。ちょっとしたお遊びじゃない。ところで何で固まって・・・?」
 クアットロを非難するチンクの言葉が小さくなっていくのをいぶかしげに思い
クアットロがチンクの視線の先を追うと、驚いた拍子にナイフが深々と手に突き刺さり血を流すの姿が。
「あ・・・えっと・・・そのぅ・・・・・・・ちゃん?」
「クアットロ・・・」
「は、はいっ!!」
 の、低い低いその声に言い知れない恐怖を感じたクアットロは思わず背筋を伸ばす。
「覚悟は出来ているだろうな・・・?」
 は何処からともなく出した数本のナイフを手に構えクアットロを睨みつける。
「ちょっと! いまそれどこからああああっ!!?」
「それ私のスティンガー!!? ああっ! いつの間にかホルダーの中身が空に!!!」
 全力で逃げ出したクアットロを本当に人間かと疑いたくなる速さで追いかけるに呆然としながら、
一人になった部屋をなんとなく見渡す。
「集中力・・・か」
 そう呟いたチンクは手であそんでいたダーツを構え―――――

「ちっ、逃がしたか・・・」
 怪我が治ってからまだ本調子ではなく魔法を学ぶよりも体を何とかする方を選んでいるは、空を飛んだ上で
姿を消したクアットロに撒かれてしまい苛立ちと共に言葉を吐き捨てつつ部屋の前まで帰ってきていた。
「ん? 、クアットロは逃がしたのか?」
「ああ、逃げ切られた」
 丁度部屋から出てきたチンクにナイフを返しつつ会話をする。
「そうそう、の助言のおかげでダーツが上手くなった。ありがとうな」
「なに、役に立てたならいいさ。後、手当てがしたいんだけど傷薬の類はあるか?」
「・・・・・・無かったな。私が買ってこよう」
「すまん。止血はしているから多少遅くなっても問題は無いぞ。後でまたケーキでも作ろう」
「ふふっ、楽しみにしている」
 少し急ぎ目に出かけていくチンクを見送ってから部屋に入っただが、部屋のある一点を見て目を丸くした。
「おやまあ・・・」
 ダーツの的の中心にダーツが6本連結して突き刺さっていた。


 ケース3 トーレの場合

 トーレは日課であるトレーニングをするため研究所内のトレーニングルームに向かっていた。
 この部屋は本来ジェイルの運動不足解消用にとウーノとが作ったものだが、本人は忙しすぎて全く使用していない。
 その為、現在の使用者はトーレとチンク、そしてリハビリだといって体を動かしに来るだけだった。
「む? 奴がいるのか・・・」
 部屋に入ろうとしたトーレだが、中でが体を動かしているのに気付き嫌そうに眉をひそめる。
 彼女はが苦手だった。うまい料理を作ってくれるのは正直なところ助かっているが、彼女は実力主義だった。
 魔法を使えないは役に立たない足手まといだと思っているのだ。
「・・・これは」
 普段はトレーニング用の機材で体を慣らしているなのだが、今日は違った。広いスペースの中で
は踊っていた。いや、戦っているのだ。イメージしている誰かと・・・
 トーレは思わず目を見張る。の動きは鋭かった。牽制と思われる攻撃を除いて他は全て喰らえば一撃必殺だと
理解できるそれを流れるように繰り出している。体をひねり無理な体勢で攻撃を避けながらも無駄なぐらいに力を
込めて蹴りを放ち、その勢いで距離を取りすぐに体勢を整えて再び攻撃。それを幾度も繰り返していた。
 トーレはトレーニングルームから足早に立ち去った。自分は強いと思っていた彼女は、自身以上の動きをする少年に
戦いもせずに敗北を認めていた。ISを使えばほぼ確実に勝てるだろう。だが、と同じ土俵で戦えばどうなるか。
トーレは想像が付いてしまった。あらゆる攻撃を防がれて、あらゆる攻撃を喰らわされ、地にひれ伏すだろうと・・・
自身の動きはに比べてなんと無駄の多い事か、彼女は錬度の違いに絶望的なまでに開きがあることを悟り、
自分の部屋のベッドの上で膝を抱えてうずくまった。
今だけは打ち砕かれたプライドに涙して、明日からとトレーニングをして動きを、技を盗んでやろうと決めたのだった。

 翌日 トレーニングルームにチンクとドゥーエが戦闘訓練のために顔を出したのだが、思いっきり固まった。
 トーレが倒れている。しかも腕と足がひしゃげて使い物ならなくなっている上、彼女の武装も破壊されていた。
「ど、どうしたのトーレ!」
「何があったのだ! この有様は酷すぎるぞ!」
 二人は大慌てでトーレを抱き起こし話を聞こうとするが、チンクが部屋に漂う血のにおいに気付く。
「血の臭い・・・どこから・・・っ!!! っっ!!」
 室内を見回したチンクは壁に寄りかかるを発見した。左目を切り裂かれだくだくと血を流し続けている。
「・・・ああ、チンクか。すまんが治療を・・・頼む・・・・・・・・・」
っっっ!!!」
 血を流しすぎて意識が朦朧としていたはチンクの姿を認めて安心したのか意識を失ってしまった。
「ドゥーエ! ドクターに連絡を!!」
「もうしたわチンク! 急いで二人を、と言うかの方が重症だから早く連れて行くわよ!!」
 ドゥーエとチンクはを優先して治療の為のポッドに運び込んだのだった。

「つまり・・・」
ちゃんの訓練中に・・・」
「トーレが勝負を挑み・・・」
「途中からマジの潰しあいに発展して・・・」
「ライドインパルスで突撃しつつブレードで目を切り裂いて・・・」
「お返しとばかりに両手足を破壊されたと・・・」
 トーレは自分がやってやられた事をほぼ棒読みで繰り返す家族達に本気でビビっていた。
 何より今の彼女は両手足が全く使えない。完膚なきまでに破壊されていた。それが恐怖に輪をかけている。
「あの・・・皆さん?」
「「「「「何かなトーレ?」」」」」
 思わず敬語のトーレにこれまた淡々とした口調の家族達。
「あの・・・私の修復は・・・?」
「「「「「後だ」」」」」
 家族達の冷たい断言に思わず涙しそうになる。まあ、自分が悪いと理解していたが・・・
「全く〜。トーレ姉様少しは加減と言うものをですね〜・・・」
「無茶言うな! 素の戦闘能力はの方が上なんだぞ!!」
「だからと言ってISまで使うのはどうかと思うわよ」
「そうでなきゃ勝てなかったんだ!」
「負けたみたいだったが」
「それを言うなあああああっっ!!!」
 彼女としては非常にショックだったのだが、忘れてはいけない事がある。それは――――
「トーレ。君の稼働時間はまだ2年弱だ。10年生き、その内6年間をほぼ実戦の鍛錬に費やしてきた彼とは
まだまだ経験に開きがあるのだよ。しかも君達はまだまだ未完成と言って良い」
 ジェイルの言葉に沈黙する。言ってみれば2歳の子供と10歳の子供の喧嘩なのだ。
 が勝つのはある意味当然と言える。まあ、今は失血死寸前で非常に拙い状態ではあるが。
「とりあえず目の修復は完了したよ。視力が戻るかどうかは賭けになるが・・・」
「ドクター、私がについていようと思います。普段色々と世話になっていますから」
「ああ、任せたよチンク」
 チンクの申し出を嬉しく思いながら、ジェイルはポッドの中で漂うに視線を向ける。
「まったく・・・あまり無茶をしないでくれたまえ愛しい弟よ」
 ジェイルは心配そうにに声をかけ、自分の研究に戻っていった。

 その後、トーレは治療が終わり治ったばかりなので一応眼帯をしているに懲りずに勝負を挑んでおり、
IS・固有武装の使用禁止を言い渡された素の戦闘訓練で敗北を続けているらしい。
「28戦28勝0敗0分けか。いい加減あきらめてくれ。さっきからチンクの視線が怖い」
「うるさいっ! いつかお前に勝ってやる!!」
「トーレ。あまり怪我をさせるような事をしないでくれ・・・」
 心配性になったチンクがハラハラとしながら見守る中、トーレはあきらめることなく勝負を挑み続ける事になった。
 そんなトーレの眼にはに対する憧れているかのような光があったと、本人の目の前でクアットロが口走り
全力で追い回されたそうな。


 ケース4 ジェイル・ドゥーエ・クアットロの場合


 3人は研究室のモニターの前で相好を崩していた。
「ふふふ・・・いいねえ・・・癒されるよ」
「ええ、まったくです・・・」
「ふふ〜、本当にかわいいですね〜」
 3人が見ているのはカメラを密かに仕掛けていたの部屋の映像。
 ベッドの中には眠っていると・・・チンク。
 チンクはの怪我等が治りきってないのが心配でたまらないらしく添い寝までしているのだ。
「ドクター、はなぢはなぢ」
「む・・・すまないね」
「いえいえ、そうなるのも分かりますよ」
「かわいいですもんねぇ。子供の寝顔は本当に天使の様・・・」
 3人は思いっきり鼻の下を伸ばしていた。ジェイルは分かるのだが、何故彼女たちまでというと、
「しかし君たちまであの子を気に入っているとはね」
「当然です。弟みたいに思ってますから」
「怒ると怖いですがぁ、普段は良い子ですから〜」
 ドゥーエとクアットロはの事が気に入ってた。特に特製のスイーツは今や二人の大好物である。
「ですから静止映像とかもくださいね?」
「ドクター、独り占めはずるいですわ」
「ふふふ。同志が居るというのはいいものだね。もちろん譲ろうじゃないか!」
 ジェイルはいそいそとアルバムを取り出し二人に見せ始める。
 巧くケーキが出来たときの満足げな笑顔や訓練中の真剣な顔、チンクやウーノと笑いあっている風景や
誕生したばかりのセインに優しく語り掛ける写真を見て、3人はだらしなく鼻の下を伸ばしていた。
っ! どうしたんだ一体!!』
 3人は突然聞こえてきたチンクの焦った声に凄い勢いでモニターに顔を向けた。
『ぐ・・・ぁああう・・は・・・!』
 そこには苦悶の表情で胸を押さえ苦痛に喘ぐの姿が!!
「チンク! 今すぐに君を研究室に連れてきなさい!」
『ドクター!? まさか覗いて・・・いやそれよりもを!!』
 チンクの言葉に内心ビクッとした3人だが何事も無かったかのように大急ぎでポッドの準備をする。
 ジェイルは心当たりがあるのか悔しげに顔をしかめていた・・・

「レリックの適合不可?」
「いや・・・レリックの強大なエネルギーが内側から君を蝕んでいるのだ。こればっかりは本人の問題になる」
 は調整用のポッドの中でも苦しんでいた。レリックはのリンカーコアと融合しているのだが、
君のリンカーコアは多少の損傷があるらしく巨大といって良い魔力容量に対して非常に放出量が少ない。
それだけなら問題は無いのだがレリックと融合した事により更に内包するエネルギーが増えすぎて限界なのだよ」
「そんな・・・!」
 打つ手はほとんど無いといっても良い状態だった。
<ジェイル・・・聞こえ・・・ている・・・か?>
「っ!! 念話!? 君か!!」
 突然聞こえてきた念話に全員がを見る。
<なんとか、魔力を調整するから・・・データを取るんだ>
「し、しかし!」
<なんとかする、してみせる! 今後の事にも役に立つなら・・・俺が礎になってやる! だから、やれ! 兄貴!!>
 の決意と叫びにジェイルは顔を伏せて、
「・・・ウーノ、クアットロ。データ収集の準備を」
「ド、ドクター・・・」
君の覚悟と決意を無駄にする気かねっ! 速く準備を!!」
「は、はいっ!!!」
 ウーノとクアットロ、それだけでなく他の姉妹たちも準備に協力している。
「絶対に死なせはしない。今の体にしてしまったのは僕だ。必ず君の体を安定させて見せる。
だからそれまで頑張ってくれたまえ!」
 ジェイルのその決意の言葉には淡く微笑んで、魔力を調整する為に極度の集中状態に入っていった。


 は調整に成功した。今は穏やかな顔で眠っている。
「・・・どうですかドクター?」
「貴重なデータが取れた。今後の人造魔導師計画にも非常に役に立つだろう・・・」
 ジェイルはが実験台となって得たデータを検証しなおしており、そのデータが今後大きく役立つものだと
確信していた。本人はもうをモルモットにしたくないようだが・・・
「リンカーコアの破損はどうなったんですか?」
「恐るべき事にレリックを利用して完全修復したよ。本人も何をどうやったかはいまいち覚えていないようだがね」
 極限状態にあったは色々と限界を超えたらしく奇跡というべき事を起こしていた。
「なんにせよ、これでもう君は大丈夫だ。まだまだ心配ではあるがね・・・」
 はレリックウェポンのプロトタイプといえるものだ。ゆえにどんな不具合が出るか分からず油断が出来ない。
「大丈夫だ。僕が何とかしてみせる。彼を、家族を失うなど真っ平ごめんだ」
 いまだ未完成の娘と弟に、彼は必ず完成させ命の心配をしなくてもいい様に、家族達と幸せに暮らせるようにすると
心に決めたのだった。



後書き

スカリエッティ側における主人公と彼女達の生活と変化。
主人公は不具合等があるため家族達にかなり過保護にされていたりします。
この話は最後に海鳴でのヴィータの行動を載せてみたいかと思います。


おまけ――その頃海鳴では――――

「貴女の言うとおり、アレは君ではないようですねヴィータちゃん」
「そーか。やっぱりそうだったんですね。フィリス先生」
「ええ、以前君が事故にあったときのカルテに記された傷が、見つかった死体にはありませんでした」
「それはボクが持ってきた死亡証明書にはその傷が無かったって言う事かい?」
「ええ、カルテと死亡証明書を照合してみたけどあったはずの傷が見つからないのよ。アレだけ酷く残っていた傷が・・・」
「どれどれ・・・うわ。あいつ良く生きてたね。胸部の開放骨折なんて・・・」
「何時間にも及ぶ大手術だったわ。お父さんが執刀したけど本当に危なかったって・・・」
「それが無いって事は・・・クローンか」
「リスティさん。そういう事をする連中に覚えはありますか?」
「・・・・・・・・無いとは言わないけど、あの子を狙う理由が無いね」
「そーですか・・・」
「ヴィータ、君の方はどうなんだい? 心当たりは?」
の体を調べた事のある連中なら無いわけじゃないけど・・・あいつらがそれをするとは思えねーです」
「そうか・・・ボクも色々と調べるけど君はそいつらを疑ってみるのも良いかもしれないね」
「リスティ・・・あんまり人を疑うのは・・・」
「フィリス。ボクらがそういう連中にどんな目に合わされたか忘れたとは言わせないよ」
「う・・・分かりました。ヴィータちゃんそっちは頼める?」
「分かりました。出来る限りやって見ます」
「・・・・・・・・何処のどいつか知らないけど、僕らの弟分を誘拐してくれたんだ。絶対に見つけ出してやる」

 ヴィータはと親交のあったリスティとフィリスに協力を仰ぎ死亡したはずのの調査を行い、
その真実に辿り着いていた。フィリスやリスティは可愛がっていた弟分の不審な死に疑問を抱いていたため
快く協力し、その真実にかつての自分たちを重ねていた。
 そして、彼女達は心に決めた。を誘拐した何者かを絶対に倒し、を救い出す事を・・・




inserted by FC2 system