はドゥーエのところにケーキを配達した後、少し離れた所の喫茶店で コーヒーを飲んでいた。久しぶりの一人の時間を満喫しつつのんびりとコーヒーを啜っていると、 「こいつの命が惜しかったら金をよこしやがれぇっ!!!!」 店のウェイトレスが強盗にナイフを突きつけられ、店長が脅されていた。 アナザーIF 第九話 意外な再会 「本当にありがとうございます!」 「なに。鬱陶しかったしな。礼はいらんよ」 「そ、そんなわけにはまいりません! ぜひお礼を!」 「あー・・・なら管理局には俺の事黙っといて。俺あの連中嫌いなんで」 は喫茶店の店長にお礼を言われていた。強盗は魔法を使えない一般人だったのでが適当に 殴って意識を刈り取られ今はロープで縛られている。 丁度客の居ない時間帯だったので店内の客は一人だった。それもあってが直々に動いたのだ。 なお人質にされていたウェイトレスは他の女の子に付き添われ控え室で休憩している。かなりショックだった様だ。 は店長に自分のことを口止めして店を出ようとすると、背後で得物を突きつけられた。 「お、お客様!?」 「管理局だ。話を聞かせてもらえるか?」 恩人が狙われたと思い店長が慌てるが、その得物を、ハンマーを突きつけた少女は懐から管理局員証を取り出し 店長を抑える。は懐かしい声にゆっくりと振り向いた。 「数年ぶりにしては物騒な再会だな。ヴィータ」 「あたしもこういう事はしたくないんだけどよ。そうでないと帰っちまうだろ? なあ」 振り向いた先に居たのは赤い髪の少女騎士。ヴィータだった。 「そーか。やっぱり大変だったんだな」 「ああ。連絡なんぞ取れんし、取ったら取ったでクロノ辺りから上層部に話がいって指名手配されるだろうしな。 そう考えるとうかつに連絡できなかったんだよ。」 ヴィータはたまたまオフの日に買い物に来て喫茶店でを発見、入って声をかけようとしたところで強盗が出て がそれをあっさりと殴り倒して今に至る。 御礼の代わりに代金をまけてもらい一番高いパフェを頼んで、ヴィータがそれの攻略にとり掛かっている。 とヴィータは互いの状況を話し合っていた。 「やっぱり管理局がお前を誘拐したのか。そんでもって改造された」 「元々そういう存在だったというのもあるがな。誰から聞いたんだ?」 はヴィータが自分の体の事を知っている事に驚いていた。管理局ではどう足掻いても入手できない情報なのだから。 「沙耶。それとドゥーエ」 「!! ドゥーエは兎も角・・・会ったのか」 「・・・あたしが看取ったよ」 「・・・そうか。正気に戻っていたか?」 「ああ。伝言を預かってる」 「・・・伝言?」 「【しあわせにおなりなさい】」 ヴィータが預かった母からの伝言を聞いて、は天を見上げる。は母の想いを正確に汲み取っていた。 「あの人ならそういうだろう。あらゆる想いを込めてな。突然殺意をもったあの時まで、それまでのあの人は確かに俺 に対して愛情を抱いていた。なら、何かが仕掛けられていたと考える方が自然なんだけど・・・その辺は?」 「ああ、考えられる限り最悪のものがな」 愛が何のきっかけも無く憎しみに変わるなど最悪以外の何者でもない。 「なあ。あたし三日ほど休み取ってるんだ。い、いっしょしないか?」 「・・・お前はいいのか?」 「良いに決まってんだろ。あたしが誘ってんだ」 二人はヴィータが仮宿にしている社宅に行くのだった。 その頃チンクは研究所にいた。 「・・・分かった。彼女によろしく」 「チンク姉。兄から連絡?」 「ああ。ヴィータに会ったらしい。彼女が休みのあいだ一緒にいるそうだ」 チンクの言葉にセインは眉をひそめる。 「ねえチンク姉・・・その、いいの?」 「ん・・・ああ。彼女の寂寥は私の比じゃなかっただろうからな。それに彼女は奴らの中でたった一人だけ を探し続けていた。だから、良いんじゃないかと思ってな」 「チンク姉・・・」 セインは何もいえなくなる。ヴィータの事は彼女も聞いているのだ。 「そもそもとて浮気では無いしな」 「へ?」 「そもそも浮気とは気持ちが移り変わったりする事だが、は変わらず私を愛してくれている。だが、何年も 自分の無事を信じて探し続けてくれたヴィータの事も愛しく想っているのも確かだ」 「それって十分浮気じゃあ・・・」 「私が納得している。それに・・・」 「それに?」 「・・・私だけではもたん」 何がどうもたないのか、セインはあえて考えないようにしようとするが、もしかしたらチャンスなのかなあとか 思うのだった。セインだって何かと面倒を見てくれるあの兄のことが大好きなのだ。 ヴィータは幸福感で一杯だった。 数年ぶりに再会した想い人と一緒にいる。その想い人の手料理を数年ぶりに堪能し、数年ぶりに一緒に風呂に入り、 そして今、ヴィータはベッドの上でに抱きしめられていた。 「んー・・・落ち着く。もしかしたらはやてより落ち着くかも・・・」 「おいおい。はやての騎士がそれでいいのか?」 の言葉に応えずヴィータはの腕の中でその温もりを堪能していた。だが、ヴィータにはある思いがあった。 「・・・なあ。こっちには来れないんだよな」 ヴィータは昔のようにみんなと共に暮らしたいという願望があった。今は自分の家族とすら満足に過ごせていないのだ。 しかし、もそうはいかない。 「ああ。今は家族も居るし、大事な相手もいる」 「そっか・・・あたし邪魔かな」 「そうでもないよ。お前さえよければ俺は・・・」 「浮気者」 「申し訳ないね。男は複数の女性を同時に愛せるんだよ」 にもしがらみはある。この数年共に暮らした大事な家族たち、そして愛する女性がいる。 だが、恋人であるチンクはヴィータの事を認めている。彼女なら自分と共にの隣にいても良いとチンク自身が 口にしているのだ。 「お前がこっちに来る事は出来ないか?」 「あたしは、はやての騎士だ。そういうプログラムなんだ。はやてを主とし、守る守護騎士。あたしの中には 自分の主ははやてで、ずっと守らなきゃいけないんだって。そういうコードがあるんだ・・・」 ヴィータには枷があった。本来ならはやてとの絆であるはずのそれは今はもはや枷でしかなかった。 それがなければヴィータはの元へ走っているだろう。 「ヴィータ。俺ならそれを何とかできるかも知れん」 「え?」 の言葉に驚いたヴィータがの顔を見て、息を呑む。の左目は薄い金色に染まっていた。 「お前、その目は・・・」 「グラムサイト。ありていに言えばどんなものでも解析する目だ。先天的にこういう能力を持っていたらしい」 はヴィータのプログラムを解析し、データを少しいじるつもりなのだが・・・ 「どうだ? 出来るのか?」 「すまん。今は無理だ。プログラムが複雑すぎる。さすが古代ベルカの至宝だな」 あまりに複雑すぎるプログラムに今は無理と判断した。 ヴィータは盛大に落胆する。彼女としてはもう管理局なんて正直どうでも良くなっているのでの下へいけるなら 今すぐにでも行きたかったのだ。 だが、今出来ないからと言って諦めるではない。 「ヴィータ。何年か掛かるかも知れんが待っててくれるか?」 「え?」 ヴィータはが何を言っているのか咄嗟に理解できず聞き返すが、彼女の視線の先には真剣な顔をした。 「今すぐには出来ないが、いつかお前を八神はやてから―――略奪してやる」 「―――――――――――――――!!!」 ヴィータの鼓動が跳ねた。嫌悪感など無い。ヴィータの心に渦巻くのは自身に制御できない程の狂おしい―――歓喜。 言葉も出ないほどの歓喜に突き動かされ、ヴィータはまるで貪るようにの唇を奪う。はそんなヴィータを強く抱 きしめ、二人は熱い夜を過ごすのだった。 ヴィータが今までの人生で最高の幸せを噛み締めている丁度その頃、ある空港の地下貨物室では数名の影が蠢いていた。 「これだな」 「ああ。レリックだ。連中に回収される前に手に入ったな」 数人の管理局員が回収したレリックケースの周りにいた。 「しかし・・・こいつの使い道はなんなんだろうな?」 「さあな。ちょっと弄ってみるか?」 「そうだな。まあどうせ評議会に回すんだ。データでも集めてみるか」 彼らはケースを開けその中にあった赤い結晶にコードを取り付けてデータを解析し始める。 「ん? なんだこのデータ・・・」 「お、おい! レリックが!?」 「う、うわああああああああああっ!!!!!」 赤い光が地下貨物室を埋め尽くした。 この日、一つの空港を丸々焼き尽くす最悪の空港火災が発生した。 「あらあら。一足遅かったみたいですわねえ」 「・・・まさかろくな設備も無いところでレリックをいじるとは」 「馬鹿の極み。適切な扱いをしなければ暴走するのは分かっていたはず」 レリックが密輸されているという情報を得て空港に駆けつけたトーレ・クアットロ・ディエチは燃え盛る空港を 遠目に眺めていた。 「これはもう回収は無理ですわね。引き返します?」 「そうだな。もう帰り・・・む?」 「あれは・・・!」 彼女達の視線の先、一条の桜色の光が空港を貫き天を焦がしてゆく。 「凄いですわねえ・・・あの魔力光と威力からしてちゃんの幼馴染かしら」 「道を作るためとはいえあんな威力の砲撃必要か?」 「あそこまで強いのはいらない。下手に射程を広げすぎると外にとんでもないダメージを与える事になる」 「・・・今、マスコミのヘリを掠めましたわよね」 「計算してるか運が良いか。たぶん後者」 ディエチの辛らつな言葉にクアットロは冷笑をうかべる。 「ちゃんの幼馴染ならもっと考えて魔法を使うと思ったけど、所詮そんなものなのかしら」 「生命反応の確認ぐらいはしただろうさ。もう特に得るものも無い。帰るぞ」 クアットロは空戦用のガジェットU型を改造した飛行ユニットにディエチと二人乗りし、トーレはそのまま 自力で飛んで研究所へと帰っていった。 なのはは一晩中働き続け、今は親友二人と融合騎一騎とともにベッドの上にいた。 フェイトと二人で休暇をとってはやての研修先に旅行に来たのだが、空港火災に巻き込まれてそのまま救助活動に 参加しつい今しがたまで働いていたのだ。4人とも疲労困憊で指一本動かしたくない心境だった。 はやてはなのは達に自分の考えを話した。自分の部隊を持ちたいと、そのために力を貸してほしいと。 二人は親友の頼みに当然のように力を貸すと約束し、少し休憩して食事をしようとしたところ、はやての研修先の 上司であるゲンヤ・ナカジマから通信が入ったのだった。 『すまねえな二人とも。うちの娘達を助けてもらって』 「いえ。大した怪我も無くてよかったです」 「それでナカジマ三佐。火元は分かりましたか?」 『ああ。地下の貨物室だ。そこが一番被害が酷い。それとこんなものが見つかった』 ゲンヤが映し出したのは焼け爛れたケース。それを見たなのはが声を上げる。 「レリックのケース! まさかあの火災は!」 『おそらくレリックとか言うロストロギアの暴走によるものだ。その近くにはレリックをいじったであろう 機材の残骸が確認されている』 「いじった連中は異常に気付いて逃げ出したんですか・・・」 フェイトはレリックを狙った何者かがその場でいじり、異常に気付いて逃げたと考えたがゲンヤが否定する。 『実はなハラオウン執務官。この映像を見てくれ』 「これは・・・?」 映像の中では壁に影が映っているだけだった。 「これがどうかしたんですか?」 『良く見ろ。これは普通の映像じゃねえ』 三人がその映像を注視していると、なのはとはやてが驚きの声を上げる。同じようなモノを見た事があるのだ。 「まるで・・・原爆の被害写真や・・・」 「影が壁に焼きついてる・・・」 二人の呆然とした呟きにゲンヤは軽く驚く。 『見た事あんのかい』 「私らの国は昔の戦争で核爆弾落とされて敗戦したんや。その被害者の中には壁に影を残して蒸発した人も・・・」 「強力な熱線を浴びるとこうなるんだよ。影も残らないんじゃなく、影しか残らない・・・」 『こっちの鑑識でもそういう答えが出ている。犯人は逃げたんじゃねえ、逃げられずに文字通り蒸発したんだ』 フェイトは改めて質量兵器の恐ろしさを認識するが、彼女はまだ分かってはいない。魔法で同じ事を再現する事は 十分に可能だという事を。 「犯人の身元は分からないんですよね」 『・・・この機材の照合をするとな、管理局の備品だって事が分かった』 「「「え?」」」 三人は間抜けな声を上げて硬直する。それの意味するところはつまり・・・ 『今回の事件は管理局がレリックを発見し、見つけた局員がその場でいじって暴走させたという事だ』 「・・・公表するんですか?」 『・・・いや。上層部は適当に誤魔化す気だ。おそらくレリックを集めている連中に罪を被せる気でいる』 「そんな・・・」 はやてやフェイトはやってもいないものに罪を被せるという事に難色を示すが、なのははそこに疑問を持つ。 (なんで、管理局の所為だと言う事に何も言わないの? それを揉み消そうとしている事になんで疑問を抱かないの?) 暗示に掛かっているにしてもまったく気付かない親友達を複雑そうに一瞥し、当たり前に不祥事を隠そうとする上層部 にさすがに不信感を感じる。 『高町の嬢ちゃん。後で話しがあるんだが良いか?』 「え? あ、はい・・・」 「すまねえな嬢ちゃん。休暇中だろうに」 「いえ、いいんです。火災に巻き込まれた時点で台無しでしたから」 「そうかい。まあ災難だったな」 なのははゲンヤのいる部隊の部隊長室にきていた。呼び出された理由が分からず戸惑うなのはに茶を出して、話を切り 出した。ちなみになのはは私服である。 「嬢ちゃんは気付いてるみたいだな。今の管理局ははっきりいって異常だと」 「・・・はい。不祥事とかが起こっても誰も辞めたり処分を受けたりしてないんです。受けても凄く軽かったり・・・」 なのはは暗示が解かれてから管理局の歪さをいやというほど見せ付けられていた。腐敗しきった警察組織。それが偽ら ざる感想だった。一応は組織の体制は整っているのだが、だからこそたまに見えるそんなところが際立って見えていた。 「管理局には裏の連中がいる。奴らはたぶん上層部の一部の命令で動いている。ヴィータ嬢ちゃんが三提督の命で 調査しているが、不祥事の数々が起こってはことごとく隠蔽されているらしい」 「ヴィータちゃんが・・・」 ヴィータが管理局内部の調査をしているという事になのはは納得する。ようやくヴィータの行動の意味を理解したのだ。 ヴィータもなのはも忙しかったためまともに話す事が出来ておらず、まったく進展していなかった。 「私には催眠術のようなものが掛けられてましたけど、それについては?」 「ヴィータ嬢ちゃんが報告してくれたが、高ランクの魔導師や騎士を裏切らせない為の鎖にしているらしい。 まあ理由は簡単だな」 「はい。戦力を失いたくなかったからかと」 「俺みたいに力の無い奴からすると高ランク魔導師は兵器そのものだ。それを制御するためとも取れなくは無いが・・・ なんにせよ人権を無視しているのは確かだな」 「・・・はい」 自身が兵器。なのはにはその認識は無かったが、周りはそう認識しているのかといまさらながらに気付く。 実際教導していて自分達並の実力や魔力を持つものはそうはいなかった。むしろ皆無といっていい。 「あの、ヴィータちゃんは暗示が掛かってなかったんでしょうか」 「掛かってねえな。そもそもあの嬢ちゃん管理局にはかけらも信頼おいてねえみたいでよ。疑って掛かってたら 周りがおかしくなってたらしい」 「そうなんですか・・・」 自分達が管理局に入って数ヵ月後には死んだ、となのはは思っている。そしてヴィータはが生きていると 頑なに主張し、取り合わない自分達と袂を分かったように疎遠になったが・・・ 「君は生きてて、誘拐したのは管理局・・・なのかな」 「ああ。その坊主か。生存は確認したらしいぞ。何でも昔お前さんを叩き落した相手らしい」 「・・・はい?」 独り言のつもりだった呟きに返ってきた返事に思わず呆けてしまう。しかもかつてのあの鬼仮面がだといわれて、 「あー・・・なんか凄く納得・・・」 納得する。こう胸にすとんと言葉が入って、あの時の彼の行動の意味が明確に理解できた。 (私は簡単な言葉じゃ止まらないから力ずくで且つ最低限のダメージで叩き落して起こりうる最悪の状況から 私を助けてくれたんだ・・・私相手には最適この上ないやり方だね。君とアリサちゃんが昔やったなあ・・・) 時折意固地になって何かの作業に没頭する自分を力ずくで休ませていた幼馴染二人を思い出す。 (休まずに徹夜したりする私をそれぞれのやり方で眠りに着かせてたからなあ・・・) は当身を食らわせ、アリサはから習ったらしい首筋を叩いて気絶させる技で無理矢理休ませた事があるのだ。 没頭すると自分を顧みないなのはを休ませるというにはいささか過激だが、そうしないと休まないなのはにはこの上なく 有効な手段だった。あの時やられたのは思いっきりレベルアップしているだけでかつてやられた事と大差ない事に気付き なのはは苦笑する事しか出来ない。 「お前さんはこれからどうするんだ?」 「私は・・・教導を続けます。ある人に催眠の治療法を習ったんですが難しくて、今度は習得して解いて回ろうかと」 「そうかい。俺は今後も管理局の裏を地道に暴くつもりだ。まあお互い頑張ろうや」 「はい! では失礼します」 なのはは今後やるべき事を改めて考え直す事が出来、それに向かって歩みだそうとしていた。 「ああそうだ。マスコミから苦情があったぞ。なんでも極太の魔力砲がヘリに掠ったそうだ。色は桜色」 「・・・あ、あははは・・・今後気を付けますぅ・・・」 まずは自分の意識改革から始めよう。なのははそう固く己に誓ったのだった。 数日後、は研究所に帰ってきて早々に自分のラボに引き篭もっていた。 「アニキ何してんだろ・・・」 「守護騎士プログラムの解析作業だそうだ。今は失われた技術のプログラムなんで苦戦している」 「それってヴィータって騎士の?」 「そうだ。データは得られたがその場でいじるにはあまりにも危険だったそうでな。帰ってきてから作業に没頭している。 私は門外漢なんでウーノが手伝っているところだ」 「あれ? こういうのってクア姉の方が得意なんじゃねえの?」 「・・・こういってはなんだが、も不安だったらしい。だからウーノに頼んだそうだ。ちなみにクアットロは ウーノの代わりに研究所の事務を請け負っているが、阿鼻叫喚だ」 「あー・・・時々アニキが手伝ってたからウーノ姉仕事して無いように見えるくらい余裕だったけど」 「クアットロだけでは正直きついだろう。巻き込まれたくなければ部屋に近づくな。先ほどディエチとセインが 拉致されて書類地獄に堕ちている」 「わかった。近づかねえ。むしろあたしには向かねえ」 「賢明だな。ではノーヴェ。とウーノに差し入れを作りに行こう」 「あいよ。サンドイッチで良いかなあ」 「仕事しているし軽く摘める物が良いだろう。姉と二人で作るか」 「おう! アニキに負けねえぐらい美味いのを作ろうチンク姉!」 二人が厨房に去った後、ある部屋からは啜り泣きと呻き声が響く部屋があったが、誰も気に留めなかったらしい。 後書き 再会したとヴィータ。 真実を知ったなのは。 相変わらず踊らされるフェイト達。 進展が無いようである話でした。 ではいつもの如くヴィータサイドに。 ヴィータサイド 休暇を終え、謹製のスイーツを堪能して上機嫌で職場に現れたドゥーエは、今まで見た事が無いくらいに 幸せそうなヴィータを見て面食らっていた。 「どうしたのいったい・・・?」 「おう! ちょっと嬉しい事があってな♪」 明らかにいつものテンションではない。 「美味しいアイスのお店でも見つけたの?」 「へへ。に会えたんだよ」 「そう。ようやく会えたのね」 ヴィータの様子に、ドゥーエは何故か嬉しくなった。少しとはいえそれなりに親しくしている相手が幸せそうなのが 伝播したのだろうか。もしかしたらドゥーエはヴィータの事を妹的存在としてみているのかもしれなかった。 「実はな、から略奪宣言されたんだ♪」 「・・・・・・はい? 何でそれが嬉しいの?」 あまりに予想外の台詞に呆けてしまう。それに略奪って・・・ 「貴女から何を奪うのよ」 「違う。あたしをはやてから奪うっていってくれたんだよ♪」 ドゥーエは考える。それはまさか・・・遠まわしな結婚宣言では? 「それって同時に貴女から色々と奪うって事じゃないの?」 「それはねーよ。第一あたしはもうに身も心も捧げたから♪」 ドゥーエは出勤早々にコーヒーを入れて飲んでいたのだが、思いっきり噴出した。 「なんだよ汚ねーなぁ」 「げほっ! それってとしちゃったって事?」 「おう!」 それはもう幸せに蕩けた顔で言うヴィータを、ドゥーエは思いっきりほっぺをひっぱった。 「いだだだだだだ! あにすんだよ!?」 「ずるいわよヴィータ! と! とおおおおお!!!」 ドゥーエはを愛している。いささか性欲側に傾いた不健全な愛ではあるが。 「あたしはと同意の上だ! てめーの事だから無理やり体狙いで迫ったんだろう! はそういうの嫌いなんだよ!」 「うう! なぜそんなピンポイントに! ってそんなの関係ないわ!」 二人は始業時間を過ぎてもしばらくのあいだ言い争う。どちらがよりを愛しているかを怒鳴り合うのだった。 その後二人は有無を言わせぬ笑顔のミゼットに正座させられ数時間に及ぶ説教を受けたらしい。 |