ジェイルとはゆりかごを改造している。 いつかその玉座に座る幼い王に負担を与えないために。 アナザーIF 第十一話 邂逅、二人のエリオ ルーテシアとアグニはペガサスに乗って移動中だった。 「えーっと・・・おつかいはこれで終わりかな?」 「うん。お姉ちゃん達の生活必需品も大体買い揃えたし、クアットロに頼まれた雑誌も買ったから」 「マメだよねクア姉さんも。ペット系の情報誌買って何を食べさせると悪いのかとか調べてるし」 「過保護だもんね。お兄ちゃんだったら適当に放してるけど」 「野生を忘れさせないためだっていってたっけ。この間テレビでやってたデブ猫になりかけてたからねブランシュは」 白い毛並みもあいまって雪だるまのようだった。無駄に可愛がりすぎた事を反省したクアットロがブランシュの ダイエットに勤しんでおり、必要な情報をペット雑誌で集めていたのだ。買い物に出る二人についでに買ってきてもらっ ていた。ちなみに荷物は魔力圧縮しているので手ぶらである。 二人が近道にと入り組んだ山間部に入り込んだところ、走っていた貨物列車の中からやたら爆音が聞こえてきていた。 少し時間を巻き戻す。 機動六課ではとうとうぶっ壊れたティアナとスバルのデバイスを破棄する事が決定したところだった。 「・・・訓練・・・きつかったからね・・・」 「結構長い間使ってたからねえ・・・」 二人とも自作の簡易デバイスを使っていたが、厳しい訓練に耐え切れず昨日の訓練中に寿命を全うしたのだった。 しかしというかやはりというか訓練を中止してくれないなのはによって、スバルは地道に走ってガジェットを追い、 ティアナはデバイスなしでヴァリアブルショットを撃っていた。その負担は普段の数倍だったとか。 あらかじめ自分達用のデバイスが支給される予定だという事は初日のミーティングで聞いていたが、使い慣れた デバイスが壊れたというのは二人にとって結構ショックだった。 新型のデバイスはまだ9割の完成だという事で今は急ピッチで最終調整が行われているらしかったのだが・・・ 「もう駄目・・・デバイスが無いと訓練がマジにきつい」 「朝練は散々だったわね。でもまあおかげで射撃魔法の術式を変えて威力を保持したまま高速化出来たのは僥倖だったけど」 訓練後のお風呂でなのはに相談したところ、それぞれが使う術式を見比べて改良したのだ。ちなみになのはは教官 という職業柄最新の魔法理論に目を通しており人に教えられる程度には詳しかった。 「ところでティア。最近無駄に弾をばら撒くようになってない?」 「無駄じゃないわよ。当てるために逃げ道塞いで誘導してるんだから。なのはさんも砲撃当てるために誘導弾使ってるし」 最近のティアナは何が何でも弾をあてるという考えを捨て、命中率の低さを逆手にとって必要な一撃を確実に当てる 事を考え始めていた。ちなみになのはは誘導弾で逃げ道を塞いで確実に当たるところに追い込んで極太の砲撃を撃つとい う最凶コンボを得意としている。シュートイベーションにおいてティアナは何度もそれで撃墜されたのだ。どれだけ 有効なのかは身をもって知っている。 二人が書類仕事(主に訓練日誌)をするためにデスクに向かっていると、前方からリインがへろへろと飛んできた。 「ふ、ふたりとも〜・・・デバイスルームに来てほしいです〜・・・」 「だ、大丈夫ですかリイン曹長」 「ふ、二人のデバイスを仕上げるのにシャーリーと二人で徹夜してましたー・・・」 「「ご苦労様です」」 目の下に隈があるリインに二人は敬礼する。そして伝言通りにデバイスルームに顔を出した。 そこには物珍しげにキョロキョロとしている子供が二人。 「あ、ティアさん」 「エリオ。それにキャロも。あんた達も呼ばれてたの?」 「はい。僕達のデバイスも本来のものにするって」 「本来?」 「二人のデバイスは外見だけそっくりで中身は簡易デバイスだったんだよ。デバイス初体験の二人に慣れて貰う為にね」 「なのはさん」 二人の話を聞いて首をかしげるスバルの後ろにはいつの間にかなのはがいた。 「これがキミ達の相棒になる子達だよ」 なのはは新人達にそれぞれのデバイスを手渡していく。 他の面々は元から持っていたものと大した違いは無いのだが・・・ティアナは大幅な仕様変更があった。 「ティアナのデバイスはクロスミラージュ。銃型のデバイスで両利きのティアナに合わせてシャーリーが2丁拳銃出来 るようにしたけど、ティアナできる? できなきゃ訓練あるのみなんだけど」 「真似事なら。二つ別々に照準つけなきゃいけないですから難しいんですよ。・・・後何かあるんですか?」 「執務官を目指すティアナに合わせて近接戦闘用のダガーモード。オールラウンダーになる必要があるから近接戦が 出来る様にしてくれって言ったんだけど、よりによって刃物なんだ。ナイフでの戦闘経験は?」 「ありません。斬るのって難しいんですよね・・・殴るだけなら大した訓練いらないのに」 「最後にフルドライブのサードモード。対戦車ライフルっぽい形状で砲撃戦用なんだけど・・・」 「一応使えないことも無いですけど自信ないです・・・特に火力」 ティアナは自分というものをよくわかっていた。そしてなのはも現在のティアナのスキルやスペックをよく理解していた。 結論。 「これ本当にあたし用なんですか?」 「ごめん。注文した私もまさかこうなるとは思わなかった」 どう考えてもデバイスが高性能すぎてティアナでは役者不足な感じが否めなかった。ゲームでいうと、武器の要求する パラメーターを満たしていない状態である。 二人は揃って深い溜め息を吐き、すぐそばにいた開発者と手伝っていた空曹長は冷や汗が止まらなかった。 「ま、まあ今のところデバイスにリミッターかけてて成長に合わせて段階を踏みながら解放していく予定だから」 「それが無難ですよね。いきなりフルスペックを使いこなせとか言われたらどうしようかと思ってました」 言い訳がましいシャーリーの言葉にティアナは一応の安心を覚えた、というか無理やり納得する事にした。 「リミッターといえばなのはさんたちにも付いてましたよね」 「そうだね。本当はS+ランクなんだけど今はAランクまで落としてあるから」 「ああ、魔導師の保有制限ですか」 一つの部隊には魔導師のランクの合計での制限が付いている。なのは達の本来のランクでは制限を三人目くらいであっ さり越えるためリミッターをつけて無理矢理制限内に抑えているのだという。 「ねえなのはさん・・・」 「わかってる。わかってるからいわないで・・・」 宝の持ち腐れというか片手落ちというか・・・ティアナの脳裏には日本から伝わった言葉【もったいない】が浮かんでいた。 「しかも制限解除に回数制限が付いてるんだよ・・・」 「隊長たちって本当に切り札扱いですね・・・」 しかも最悪の状況の時ぐらいしか許可されないらしい。よってなのはたちはもし格上が相手であってもこれまで培った 経験と技術だけで相手しないといけないらしい。非常識な状況にティアナは頭を抱えた。他のメンバーはなのは達が いればどうにでもなると思ってるような感じで特に気にしていない。それを察したティアナは余計に頭が痛くなった。 「ティアナ。わかってるのがティアナだけみたいだから言っておくけど、もしもの時はよろしくね?」 「自信ないですけどなんとかしてみせます」 なのは達が戦えない、もしくは倒されたときの事を任されたティアナは沈み行く気分を何とか持たせてそう応えた。 デバイスの支給も終わったので仕事に戻ろうとした時、六課全体にアラームが響いた。 機動六課フォワードの初出動の始まりだった。 ヘリの中で、ティアナたち新人フォワードは緊張しながら到着するのを待っていた。 そんな彼女達を苦笑気味で見守るなのはと元気付けようとするリインだったが、妙に沈んだキャロに目が行った。 「キャロ。大丈夫?」 「は、はい! 大丈夫です!」 明らかに力が入っている。なのははキャロが故郷を追い出された理由を思い出して、キャロの頭に手を置いた。 「なのはさん?」 「キャロ。自分の力が怖い?」 「!! は、はい・・・」 自分の心の内が見抜かれていた事に驚きつつも何とか答えを返す。なのはは真剣な顔で諭し始めた。 「ねえキャロ。力っていうのはね影と同じなの。何処まで逃げたって自分について回る影みたいなもの」 「影・・・ですか?」 「そう。私もね、自分の持ってる力が恐いんだ。使いようによってはたやすく人を殺してしまうこの力が」 なのはの告白に新人達もリインも驚く。まさかあのエースオブエースが、という顔だ。 「私は一度人を殺しかけたの。ある災害現場で脱出用の道を作ろうとして、砲撃が報道用のヘリに掠った事がある」 スバルは災害現場で砲撃と聞いて4年前のあの時かと察するが、まさかそんな事になっているとは知らなかったので 驚いている。 「不用意に魔法を使った。もっとちゃんと状況を調べていればそうならずに済んだ。そして、私自身が高ランク魔導師と いう名の兵器であると悟ったの。それからの私はそれを戒めに最大限の注意を払って魔法を使ってる」 なのはの告白にキャロだけでなくスバルやティアナ、エリオもリインも、操縦席のヴァイスも何も言わず聞き入っている。 「非殺傷設定という言葉に騙されないで。たとえ非殺傷でも使い方を間違えれば人は死んでしまう。強大な力は とても危険なもの。それは確かなの」 キャロはぐっと唇をつぐむ。過去、自分が故郷を追放されたのは仕方の無い事なのかと思って。 「でもね、自分の力ならば、他ならない自分が、自分こそが制御できる」 「・・・え?」 その言葉にキャロはなのはの顔を見る。 「キャロの事情は知っているけど、長老は一つ間違ってた。本当に恐ろしいのは強大な力じゃない。例え小さくても 制御されない力こそがもっとも恐いものなの。どんな力でも、完全に制御されていれば恐れるものじゃない。 自分の方に向いていない刃物は怖く無いでしょう?」 なのははキャロの事情を聞いたとき真っ先に思った。何故力の使い方を教えなかったのだと。振るわれない力は無いも同じ。 ちゃんと使い方を教え、きちんと制御できてさえいれば恐れる事など何も無いのだ。 「自分を御しなさいキャロ。自分を恐れず受け入れなさい。そうすることで貴女は一つ上の領域にいける」 厳しいなのはの言葉にリインは厳しすぎると言おうとするが、キャロの目を見て沈黙する。 キャロの目は今まで見た事が無い程の決意と覚悟が浮かんでいた。キャロはこれが欲しかったのだ。優しくされる事は もちろん嬉しい。だが、なのはのように厳しく導いてくれる人は今までいなかった。フェイトはただ甘いだけだったし、 周りもなんだかんだいってキャロの持つ真の力、竜を使役するその力を恐れていた。だから、 「なのはさん。わたし、やってみます!」 「ん。良い返事だよ。みんなも忘れないで。私たち魔導師は一般人から見れば十二分に危険物だという事を」 「「「「はい!!」」」」 なのはは新人達の返事に機嫌よく頷いた。ただ技術を教えるだけが教師、教官ではない。自分が経験した良い事も悪い事も 伝え間違った道に行かないように教え導く事こそが教えるものの仕事であると彼女は認識しているのだ。 今まで魔法の行使の事を深く考えていなかったものたちはなのはの言葉を教訓に考えるようになったようだった。 「なのはさん! 航空戦用の2型が群れを成して飛んできてますぜ!」 「! わかった! 今こっちに向かってるフェイト隊長と協力して航空戦力を潰すから、君達はレリックが輸送されている リニアに飛び乗ってレリックを確保! リインは現場の管制を担当しつつ暴走するリニアを止めて!」 「「「「「了解っ!!」」」」」 なのはは大まかな指示を出しその場でバリアジャケットを装着してすぐに外へと飛び出す。 そしてリインたちもその場でバリアジャケットに身を包み、到着した降下ポイントでリニアに飛び移ったのだった。 アグニとルーテシアは戦いが繰り広げられているリニアを眺めながらそのまま通り過ぎようとしたが、アグニと良く似 た少年が丸い形のガジェット3型につかまれて外に出てきたのを目撃し、アグニはすぐに上着のフードを目深に被った。 「アグニ? あの子ってまさか」 「エリオだよ。管理局に回収された一番目」 「やっぱり・・・」 アグニが嫌そうに話し、ルーテシアも溜息をつく。まさかこんなところで会うとは思わなかったのだ。 そしてエリオが3型に放り投げられ、キャロが助ける為にエリオの方に飛び出した。 「飛行魔法を使ってない! なに馬鹿やってるのあの子!」 「空を飛べないのに飛び出すなんて! 自殺する気か!」 二人にとってはエリオはどうでも良かったのだが、見知らぬ女の子が死ぬなんて光景は見たくない。ルーテシアはペガサス を二人の下へと飛ばした。 キャロは空中で気絶したエリオを捕まえてフリードを真の姿に戻そうとしたが・・・ 「う、うまくいかない!? 初めてのデバイスだから調子が・・・!!」 支給されたばかり、初めて使う簡易ではない真のケリュケイオンにてこずっていた。 そして・・・ 「きゃあっ!!」 「おっと。大丈夫かい?」 キャロはフードを目深に被った少年に受け止められた。エリオもペガサスの上で気絶している。 「あ、あなたたちは・・・?」 「ただの通りすがり。危なかったね。私たちがいなかったら今頃死んでいたよ?」 ペガサスの手綱を握る少女が無感動な声でそう返すが、実際は大丈夫だった。ガジェットを潰し終わったなのはが 最悪の事態に備えていつでも助けられるように注意していたのだから。 「あなたは召喚師?」 「う、うん・・・うまくいかなかったけど」 落ち込むキャロにその少女はなんとなく手を貸してやろうかと思い、話す。 「強い意志を持って、名前を呼んであげるの。その子があなたに心を開いているのなら、その子は力を貸してくれる」 「でも・・・」 「デバイスなんて無くても良い。デバイスはあくまで補助。全てはあなたの力だから」 「あ・・・うん!」 キャロはその少女の言葉に頷き再び試した。今度はデバイスを使わずに。 「行くよフリード。・・・竜魂召喚!!」 ペガサスの下に魔法陣が現れ、そこから巨大な白竜が姿を現す。暴走も無い完璧な召喚だった。 「上手く行ったね。速く飛び乗って。この子の上に4人は狭いの」 「あ、う、うん! ありがとう!」 「どういたしまして」 「ほら。お前も起きろ」 「いたっ! え、な、なに? どういう状況?」 「君らは管理局員なんだろ? さっさと仕事しなよ」 「う、うん・・・」 エリオは状況が分からず混乱していたが、キャロに言われて大きくなったフリードに飛び乗る。 「エリオ君。まずは仕事を終わらせるよ!」 「わ、わかったよキャロ!」 わからない事だらけだったエリオだが、まずは自分を投げ飛ばしてくれたガジェットを倒す事に決めたようだった。 「さ。いこうか」 「そうだね」 さっさと帰ろうとした二人だったが、 「ちょっと待ってくれるかな。少し話を聞きたいし」 「そうだねなのは。何故こんなところにいるのか管理局員として聞いておきたいしね」 二人の女性―なのはとフェイト―が二人を止め、二人は思わず舌打ちした。 高速で逃げるペガサスを追う隊長二人。彼女らの予想を超える高機動を見せるペガサスに、というかなのはは漫画や アニメでしか見た事が無い存在が目の前にいる事に驚きを隠せなかった。 「くっ、ちょろちょろと!」 「絶妙なところで魔力弾を撃って来るし、どうも普通の子供じゃないみたいだね」 全力を出せない事もあってなかなか追いつけないからかフェイトは舌打ちする。なのはは方向転換の隙を突いて捕らえ ようとするのだが、その隙を埋めるかのように散発的に撃ってくる魔力弾に阻まれていた。 なのはとしてはお礼が言いたいというのがあったのだが、ここまで管理局を嫌がる相手にもしかしたらという思いがあった。 なのはは管理局が絶対正義であるなど考えてもいない。自分がされていた事、仲間に掛けられていた催眠術、自分が見た 不正、その全てが管理局がきな臭い組織であると示していた。両親や友人に話したところ、早く辞めろと躊躇いもなく 言われたのだ。だが、なのはにはフェイトやはやてが心配だった。なにより幼馴染の存在がある。この子達はに 繋がっているんじゃないかと思い接触を図りたかったのだが・・・ フェイトが魔力弾を撃ち始めた。一度打ち倒して話を聞こうという気だ。それがかつての自分のやり方でもあったが、 子供相手にはやりすぎだと思った。そして魔力弾の一つがフードを被った少年のフードをめくりあげた。 「「「「「「え?」」」」」」 既にレリックの回収を終えてフェイトたちを見ていた彼女らは見た。そのフードのしたの素顔は・・・ 「エリ・・・オ・・・?」 「同じ顔・・・?」 「ま、まさか!」 少女達は動揺し、フェイトとエリオは予想が付いた。 「あなたはエリオの!」 「そうだよ。僕はそこの間抜け面の兄弟さ」 その少年の言葉に彼女らは動揺を隠せなかった。一人っ子だと聞いていたから。 「プロジェクトF・A・T・Eの産物。エリオ・モンディアルのクローンさ。なあEM001」 「それは・・・僕の製造コードなの?」 「そうだよ。ちなみに僕はEM067。他の兄弟はみんな人体実験の果てに破棄されてるよ」 エリオはショックを受けて放心する。番号からどれだけの兄弟が生み出され死んでいったのかわかってしまったのだ。 そして勘の良いティアナも、多少鈍くはあるスバルもわかってしまった。 エリオが極めて人工的な手段を持って生まれたきた命である事を。 そしてフェイトは・・・ 「なのは。あの子を保護するから力を貸して」 「フェイトちゃん?」 「あの子は、私が引き取って育てるから」 フェイトはエリオの兄弟である少年を引き取ろうとしていた。だがなのはにはそれが了承できない。 なぜならわかってしまったのだ。あの少年は自分と同じ、もしくはそれ以上に管理局の裏を見ているのだと。 「なのは?」 「ごめん。私はそれに力を貸せない」 「・・・なん、で?」 呆然とするフェイトになのはは応えず、少年に声をかける。 「君のお兄さんは元気?」 「・・・ああ、あなたは兄さんの。元気だよ。いやまあ最近仕事しすぎで派手にぶっ倒れたけど」 なのはは確信した。この子は幼馴染に、に繋がっていると。 「・・・私には無理するなって言っておいてそれなの?」 「仕方ないよ。兄さんにとっては命を削ってでも成し遂げなきゃいけない大事な事だったんだ。兄さんにとって大切な人の為 だからね。あんなふうに誰かを想えるのは凄いと思う」 「そっか。少し羨ましいかな。誰かが彼にそう想われてる事が」 なのはの言葉にフェイトやスバルが驚く。なぜならそれはこの少年の後ろにいる誰かの事をなのはが知っており、あまつ さえ好意を抱いているという事なのだから。 「多分彼は私たちの事も何もかも把握してるんだろうけど、伝えて「それには及ばんよ」え?」 なのはの言葉を遮り声が聞こえた。場所は・・・リニアの上、ティアナたちの後ろ! 「久しいな。少しはましになったと見える」 そこには鬼の仮面を被った青年がいた。その手にはガジェットの基盤と思わしき物を持っている。 「お前は、あの時の!!」 「なんだ、まだいたのか無能。人を率いる才能も導く才能も無いお前が隊長など笑わせる」 青年はフェイトの事を鼻で笑いながら基盤を掲げて転送陣を起動する。そしてフェイトは見た。その基盤に取り付けられた 青い宝石―――ジュエルシードを! 「それは! 何でガジェットに!?」 「なんだ知らないのか? 管理局が回収したはずのロストロギアは時々裏のマーケットに出回ったり直接高値で取引される んだぞ? この間もレリックがうちに流れてきたしな。いやいや回収ご苦労さん」 フェイトだけではない。その場の管理局員全員が愕然とする。青年の言葉が真実なら、自分たちの仕事はなんなのだと。 青年は新人フォワードたちを、なにより自分の出現に気付きすぐさまデバイスを構えたティアナを見た。 「なかなか良い人材を見つけたな。魔力量は少々少ないがこの嬢ちゃんは特に伸びる。カッティングを間違えるなよ」 「カッティング?」 「そうだ。才能を宝石で現すなら、お前はエメラルドかサファイアだ。決してなのはのようなダイヤではないが 研磨しだいでいくらでも化ける。それとそっちのちびっ子二人は幼すぎる。戦場に出すべきじゃない」 ティアナは喜んで良いのかわからなかった。この男を見たときから冷や汗が止まらない。わかるのだ。 この目の前の男の恐るべき実力をティアナは一目で察してしまっていた。そしてそれはキャロも。 そしてそれほどの実力者に才能があると認められた事を喜びたいが素直に喜べなかった。 青年は基盤をどこかに転送したところで改めてペガサスに乗る二人に声をかけた。 「早いとこ帰りな。俺が時間を稼いでおく」 「うん。任せたよおにいちゃん」 「兄さん。後はお願いします」 少女の命令を受け、ペガサスは白い彗星となりあっという間に遠ざかっていった。 「相も変わらず直線でのスピードは化け物だな。さて、適当に時間を稼ぐとするかな」 これから戦うとは思えないほどに気の抜けた言葉を出す青年になのはは眉をひそめる。意図が読めないのだ。 「・・・時間稼ぎだけ? レリックはいいの?」 「ちゃんと暴走しないように封印して馬鹿の手の届かないところに保管してくれればいいさ。4年前の二の舞には なりたくないだろう?」 「・・・そうだね」 4年前という言葉にスバルが少し反応するが、その前にフェイトが斬りかかった! 「やああああああああっ!」 裂帛の気合と共にいつの間にかザンバーモードに変形していたバルディッシュを振り上げ、 「奇襲は静かにやろうな」 振り下ろす直前に青年が凄まじく速いジャブを顔とみぞおちに叩き込んだ。芯に響く衝撃に悶絶しリニアの上を 転がるフェイトをキャロが助けに走り、エリオが最大戦速で突っ込んできた。 「よくもフェイトさんを!」 「軽くカウンターを入れただけだろう?」 突き出してくるストラーダの側面を軽く蹴って横にいなすと、真後ろから魔力弾が飛んでくる。体を捩って回避した 所に今度はスバルが突撃してきた。 「でやああああああああっ!」 「咆えりゃあいいってもんじゃない」 青年はスバルの拳を正面から受け止め、そのまま横にある岩肌に叩きつける。 「かはっ!」 「スバルっ!!」 叩きつけられたスバルを心配してリインが声を上げ、ティアナが何も言わずに魔力弾を連射し青年の動きを止め ようとするが、青年は散歩するように弾幕の中を平然と歩いてくる。攻撃全てが避けられる事を悟ったティアナは カートリッジをロードして、明らかに青年に当たらないように自分達が立つリニアや岩肌に向けて弾を放つ。リインが 何をやっているんだと叫ぼうとした時、それぞれの場所に着弾したはずの弾が一斉に青年に向かって飛び出した! 「跳弾か! これはなかなか―――ぬぐっ!」 襲い掛かる魔力弾を避け切ったその時、青年の胸に穴が開いた。 「これは・・・そうか。幻術を使って誘導操作弾を隠していたわけか・・・!」 「そんな・・・あ、あたし・・・殺す気なんてなかったのに・・・」 左胸に穴の開いた青年を見て呆然とへたり込むティアナ。なのはやフェイトたちも目を見開いて驚いている。 青年は膝をつきながらティアナに嬉しそうに語りかける。 「見事だ嬢ちゃん。本体ではないとはいえ一撃入れられたことに敬意を表しよう」 「えっ?」 本体ではない。その言葉に誰もが驚く中、青年は――― 「スバル・ナカジマ。お前の母クイントは生きているよ。鉄槌の騎士かお前の父親に確認を取るといい」 「・・・え?」 一つの情報を残し、呆然とする彼女らを見やり薄く笑って、小さな人型に切られた紙になった。 自分達の理解を超える現象にティアナは、ただ呆然と呟いた。 「なん・・・だった、の?」 無事に研究所に帰ってきたアグニとルーテシアだが、帰って早々ディードに捕まっていた。 「二人とも怪我はしてない? いきなり襲い掛かられたんでしょう?」 「ディ、ディード姉さん! 大丈夫だから! 怪我とかしてないから!」 「パーカーのフードが破れてるじゃないですか! 本当に怪我はしてないの!?」 「本当にしてないからっ! だからむりやり脱がそうとしないでええええっ!」 ナンバーズの中で末っ子といえるディードはこの子供二人をそれはもう可愛がっていた。溺愛しているといっていい。 特に自分が助け、今は一緒に訓練したりするアグニのことをことさら可愛がっていた。今みたいに時々暴走するぐらいに。 「おかえりルーテシア。荷物は?」 「ノーヴェおねえちゃん。はいこれ」 「ん。とりあえずあっちはほって置いておやつにしようか」 「うん」 「お願いだから助けてええええっ!」 アグニ(既に上半身は裸)の懇願する泣き声を無視して二人は仲良く手をつないで奥に入っていった。 怪我をしていないか隅々まで確認されたアグニはさめざめと涙を流しながらみんなが集まっているリビングにやってきた。 彼自身ディードのことは嫌いではない。むしろ大好きだ。だが、心配のあまり暴走するのだけはやめてほしいなあと 切実に思っていたりする。 リビングではおそらくオットーの手作りであろう団子やどら焼きが振舞われていた。彼女は時々地球に行っては土産に 和菓子を買ってくる兄に影響を受け、大の和食好きになっていた。普通に煮魚とか肉じゃがとかが晩御飯に出てくる事が あるくらいに。餡子だって手作りである。今も着物姿で行儀良く緑茶を啜っている所だ。隣では同じく着物姿のディエチが みたらし団子を頬張っている。ナンバーズの中でも日本の文化が大好きなこの二人は仕事以外では大抵この格好である。 一度真剣に旅館の女将を目指そうとしたこともある。やる事やってからなら良いと言われた為か時々そっちの修行もしてい るようだ。ちなみにマナー等の教師役は美影である。 アグニは周りの姉達を眺めて思う。仕事中はそれぞれの能力を考慮した上で最適なデザインのバトルスーツを着ているが、 オフの時のみんなの服装は全く違うと。ウーノは落ち着いた感じのセーターを着たりロングスカートを穿いたりするので 優しいお姉さん的な感じだし、トーレは飾り気の無い白いTシャツにジーンズ。クアットロは寒色系の色の服装を種類を問 わず好んで着ている。セインはミニスカートが多くて年頃の女の子っぽい服装が多く、セッテはいつも男物の服装が多い。 やはり背が高いからだろうか。ノーヴェはあまり露出が無く体型がわからないようなゆったりめの服装が多い。ウェンディは 暖色系の色のTシャツにジャケットを羽織ってダメージジーンズだ。そしてディードは、何処のお嬢様かと間違いたくなるよ うな清楚な格好を好んでいる。ちなみにアグニはドゥーエとの面識が無いので名前しか知らない。 ところで先ほど紹介されなかったチンクはというと・・・特に決まっていない。Tシャツとスパッツだったり子供服だっ たり、時々ゴシックロリータな衣装を着ていることがある。アグニは知らないが姉妹のうちの一人が服飾に凝っており チンクが標的にされているらしく、その迸るパッションのままに作られたドレスを強制的に着せられるんだそうだ。本人 は既に諦めているらしく大人しくドレスを着せられており、その度にに愛でられている。 ふと気付く。兄と五番目の姉がいない。 「ウーノ姉さん。兄さん達は?」 「君なら少し前までドクターと一緒にゆりかごの改造に勤しんでて、さっき遠隔で式神の操作したから疲れたって いってチンクを抱えて部屋に戻ったわ。チンクも着せ替え人形にされて疲れ切ってたし」 「そ、そうですか・・・ところで改造って?」 「聖王の器が幼い少女だと聞いて負担が掛からないように改造してるのよ。とりあえず本当に鍵にするだけみたいね。 グラムサイトを使って詳細に分析しながら起動方法を変更していたわよ」 とりあえず聖王の血統が玉座に座るだけで、後は全て別に作った制御盤で制御するようにしたらしい。聖王を最終安全装 置にする計画は白紙撤回したそうだった。 「とりあえずその子は私たち全員で構い倒して可愛がってあげようという話になってるわ」 「それに関しては全く問題ないですね」 はベッドの中でチンクを抱き枕にしてまどろんでいた。部屋の洋服ダンスの中にはチンク用のドレスがもう限界寸前 迄入っていることをなんとなく思い出しながら腕の中のチンクを見る。実に幸せそうだ。先ほどまで精神的に疲労困憊だっ たのだが、いい夢でも見ているのだろうか。二人は一応着替えたものの、チンクは先ほどのゴシックドレス+猫耳尻尾の 耳だけつけた状態で眠っている。馴染みすぎて取るのを忘れたらしい。も可愛いからいいかと取るのをやめた。 式神ごしとはいえ久しぶりにフェイトを見た。捜査官としては優秀なのだろうが、部隊指揮経験が無いのに隊長・・・ なのはもだが。適正ではなく実力で選んだと丸わかりだった。実際の小隊指揮はあの少女だろうと予測する。 冷静に周りを判断していたし、何より自分に一撃をくれた。跳弾(魔力弾なので操作自体は可能だろうが)で周りを防ぎ 逃げ切ったところに不可視の誘導弾が待ち構えている。実に凶悪だ。初見ではまず見切れない。そもそも直射弾は速い。 それがたった一回でも方向転換されると回避は非常に困難である。おそらく切り札か奥の手だったのだろう。 (いいのが育ってるじゃないかヴィータ) 後は魔力量をカバーできる技術や本人の魔力を大して必要としない集束砲を覚えれば・・・ そこまで考えては眠りに落ちる。そもそも今日は頭を使い過ぎなのだ。 (そういえばクイントの生存を暴露したが・・・まあいいか) ほとんど意識の無い状態でそんな事を思ったが、別に大した事は無いと考えたところで意識が完全に沈む。 クイントとメガーヌが様子を見に来たとき、二人が互いに固く抱き合っているのを見て苦笑いしつつそのまま寝かせ るのだった。 後書き アグニたちが六課と接触しました。そしてエリオがアグニの存在を知りました。 彼はこれから何を思い、どう行動するのだろうか。 それとヴィヴィオの聖王化はありません。彼女はあくまでゆりかごの鍵であり、政治的に管理局への切り札になります。 それ以外のときはスカリエッティ側の末っ子として皆にかわいがられるでしょう。 聖王教会の信者達は自分たちが神と崇めるものが管理局の手で兵器として再生されたと知ったらどうなるんでしょうね。 ではヴィータサイドに。 ヴィータサイド 六課のブリーフィングルームでは会議が行われていた。議題は先の仕事に現れた鬼仮面の青年の話。 「鬼仮面は倒したんか?」 「ううん。本体じゃないって言ってた。何らかの形で作った分身だと思う」 はやての質問になのはが答える。なのは自身何が起こったのかわからなかった。 「ティアナ。幻術で同じ事は?」 「出来ません。作るにしても恐ろしいくらいの魔力と精密極まる術式が必要です。幻術がほぼ廃れてしまった現在で それだけの技術は無いと思います」 シグナムの問いにティアナは自分の知る限りの事を答える。あんな事はティアナには出来ない。そもそも幻術であるか どうかすら彼女にはわからないのだ。 「そうか・・・。で、回収したという紙切れは?」 「これです。人間をかたどった様な紙の人形で、シャーリーさんに解析してもらったんですが・・・」 「普通の紙です。組成は少し違いますけどこれといって特別ではないただの紙でした」 解析結果に一人を除いて怪訝な顔をする。だとしたらなぜ、と表情が語っていた。 そしてただ一人その正体を知る者が発言した。 「なのは。それにはやても。これの事知らないのか?」 「ヴィータ? いや知ってるんなら悩まんのやけど・・・」 「・・・ねえヴィータちゃん。もしかしてこれって日本と関係ある?」 なのはの発言に全員がなのはを向く。 「なんだ。やっとわかったのか」 「やっとって言うか・・・実在するの?」 「してんだよ」 なのはが信じられないという顔をしているのを見てフェイトはヴィータに聞く。 その答えは、 「今のミッドチルダなんかが完全否定してるオカルトの世界の代物だよ。あたしは実際にこの眼で見てるから信じてるけどな」 「やっぱり・・・これってヒトカタだよね。日本の陰陽師が使うやつ」 「ちょおまってなのはちゃん。あれってやらせやないの?」 「大多数はやらせだよ。もしくは自称霊能者」 はやての質問にヴィータが答える。 「霊障と呼ばれる幽霊に取り憑かれて起こる症状があるんだけど」 「待ってください。幽霊なんているわけ無いじゃないで・・・すか・・・」 ヴィータの言葉を遮ってシャリオが否定するが、ヴィータの温度の無い視線に怯む。 「話は最後まで聞けよ。そもそもあたしだって最初は信じてなかったんだ。おおまかに分けて二つ。思い込みと本物だ」 「思い込み?」 「そうだ。そしてそれを治療するのが自称霊能者。もしくは霊感商法だ」 「それって詐欺じゃないんですか?」 「プラシーボって知ってるだろ。偽薬の事だ。あれと同じで幽霊に取り憑かれていると思い込んでいる患者をありがたい お経や儀式、もしくは悪霊退散グッズを持たせたりする事で悪霊は取り憑かないもしくは祓ったと思い込ませて治療する んだ。あれもある意味人を救ってる」 「なるほど・・・」 シャリオたちも納得する。が、問題はここからだ。 「そしてその中にまれに本物がある。死んだ人間が残した念、恨みつらみの集合。そういったものが本当に人を祟る。 そしてそれを退治出来るのが極一握りの本物の霊能者だ。あの世界には表に知られていないだけで本物は確かに存在する」 「何で知られて無いんですか?」 「簡単だろ。周りに迫害されるからだ」 迫害されるというヴィータの言葉にティアナたちは首を傾げる。理由が分からないようだ。 「あの・・・なんで迫害されるんですか?」 「馬鹿かお前ら。表向き魔法の類が無い事になっている世界でそれらを使う連中はこの上ない異端者なんだよ。まわりから 化物扱いされてそれまでの生活を送れなくなるから誰にも知られないようにひっそりと一般にまぎれて生きていくしかねえ。 あの世界はそこそこ裏の連中か一部の警察上層部、もしくは一部医療関系の人間以外は魔法なんてありはしないと思ってる んだ。魔法という文化が普通に存在してるミッドと同じように考えんな」 「す、すみません・・・」 ようやく理解できた彼女らは恥じるように俯く。そんな彼女らを一瞥してヴィータは話を続けた。 「鬼仮面は陰陽術である式神を使った。簡易の使い魔みたいなもんだ。おそらくあたし達が、魔導師が理解できないような 特殊な術を使ってくるだろう」 「ヴィータ。何故そこまで詳しいのだ? 主やなのはすら知らない事を・・・」 「だよ。あいつは本物だった」 の名にフェイトが少し反応する。それを知りながらヴィータは話を続ける。 「なのはの幼馴染だったは本物の霊能者だった。あるきっかけでそれを知ったあたしは誰にも言わない代わりに 地球の社会の裏側の話を聞いたんだ。人ならざるものの存在、あたしらの魔法とは違う術理の存在、時には信じないあたしに 本物の幽霊だの悪霊だのに引き合わせて攻撃しても当てる事すら出来ずに逃げ惑うあたしを見て笑ってたりしたからな」 「なんかその人性格悪くないですか?」 「最終的には守ってくれたさ。そもそもそれだってお仕置きだったりあたしが迷惑掛けたりした所為だし」 「でももう・・・はいないんだよね」 思い出話をするヴィータにフェイトは暗い声で話し始める。 「十年前、は事故で死んだ。が生きていたら・・・鬼仮面の対策をとってくれたかもしれないのにね・・・」 フェイトに同調するようにはやてやシグナムは表情を曇らせる。 ヴィータとなのはは何も言わず目を逸らした。 <ヴィータちゃん。今言うの?> <言うわけねーだろ。今良く分かった。フェイトの中じゃあはもう思い出の人で、それ以上でもそれ以下でもねえ。 それに・・・がここにいないからこそ鬼仮面がいるんじゃねーか> <そうなんだよね・・・> 鬼仮面の正体を知る二人はフェイトの言った事の真逆の状況なのだという事を知っている。だからこそ内心溜息を吐いた。 「シャマル。作戦としては奴のリンカーコアを抜くというのはどうだ?」 「それいいわねシグナム。次に出てきたときリンカーコアを抜いて魔法を使えなくすればもう戦力にはならないわ」 「そやな。鬼仮面の対策はそれでいこか。じゃあ次の議題は・・・なのはちゃんの事やね」 シグナムの案に誰もが頷き、鬼仮面の対策会議が終わり次の議題に移る。なのはの鬼仮面への言動や行動についてだ。 なのはは知らないが、ヴィータは無意味な作戦だと心の内で嘲笑う。 リンカーコアを失えば確かに魔法は使えないだろう。だが彼にとっては大した意味も無い。もし失っても彼には 霊力がある。リンカーコアを必要とせず術を使えるのだから。 ミッドの常識が通用しない相手にミッドの常識を持って挑んで、果たして何処まで戦えるのか。大した感想も感じないまま ヴィータは新人達のこれからの個別訓練のスケジュールを見直すのだった。 |