六課に届いたのは訃報だった。
 公開意見陳述会の襲撃から始まった一連の戦闘は、地上本部の地下で起こったレリックと思わしき
物の爆発により収束。それを元に襲撃犯たちも退散した事により彼らの仕業だと判断された。
 そしてその爆発は凄まじく、数十人の局員が爆発に飲まれて死亡。そしてそのリストには、爆心地にいたであろう
スターズ3名とギンガの名も連ねられていた。


 アナザーIF 第17話
 決戦前の一時

 
 あの事件から二日後、六課では仲間の死を悼んでいるかのように静かだった。
 何よりも、エースオブエースの死は彼らには大きくのしかかっていた。無敵と呼ばれた彼女が、高町なのはが
死ぬなど彼らには考えられなかったのだからなおさらに。
 そして、その怒りと憎しみの矛先は・・・
「スカリエッティ・・・!」
「はやて・・・」
 はやては低い声でその名前を呼んだ。
 あの戦いの最後に、彼は宣戦布告をしたのだ。
 自分達と言う存在を作り出した時空管理局に戦いを挑むと。これはその狼煙であり前哨戦なのだと。
 互いの存在を賭けた殺し合いを始めよう。それが彼の残した言葉だった。
 現在管理局では戦力を再編中。本局の戦力も続々と地上に集まってきている。幾つか衝突も起こっているらしい。
「大変なのはこれからなんだよ。私たちはクロノの部隊と共同戦線を張るように言われてるし」
「・・・分かってる。それでも・・・!」
「・・・なのは達は、生きていると思うよ」
「っ! ・・・フェイトちゃん?」
 フェイトの言葉にはやては弾かれるように彼女を見た。
 フェイトはどこか確信している表情で窓の外を見ていた。
が助けたと思う。ナンバーズを回収しに行くついでになのはたちを拾っててもおかしくない。・・・だからと言って
が間に合ったかどうかはわからないけど・・・」
 そこまで言ってフェイトは訓練場の方を見る。そこには訓練中のライトニングと、再び銃を手に取ったヴァイスの姿。
「なんにせよ。希望は捨てないで置こう?」
「・・・うん。せやな・・・」
 二人はこれからクロノの部隊との打ち合わせのための準備に嫌々取り掛かった。


「う、ううん・・・はっ!」
 一人の少女がベッドから飛び起きた。彼女が覚えている最後の記憶を思い出して、なんとなく両手を見る。
 包帯を巻いており、そこかしこにガーゼを張ってある。治療されているようだ。
「生き・・・てる・・・?」
 呆然と呟き、ついで自分の仲間のことを思い出す。その部屋には彼女一人しかいなかった。
「ここ・・・どこ・・・?」
 窓のない無機質な、だが清潔感のある部屋。簡素と言うか、ベッドしかない。
「つっ!! ・・・みんなを、探さないと・・・」
 痛む体を押さえて起き上がった少女は部屋を出る。鍵は掛かっていなかったらしくあっさりと開いた。
 壁に手を着きながらヨタヨタと歩いているが、病み上がりだからか体力が続かない。足に踏ん張りが利かなくなって
倒れそうになったそのとき、逞しい腕に抱きとめられた。
「・・・え?」
「まったく・・・そんな体で出歩かんでくれ。ティアナ」
「あなたは・・・!」
 そこにいたのはだった。無理をするティアナに呆れたような表情をしている。
「まさかここは・・・」
「そのまさか。俺たちのアジトだよ。あまりに危なかったんでここに運び込んだんだ」
 は間一髪でティアナたちを救出する事に成功していた。シールドをはって耐えるなのはたちをシールドごと
影の中に引きずり込み、そのままこの研究所まで運び込んだのである。
 説明を聞いたティアナは呆然とする。影に取り込むなど聞いた事もない。
「影を操る術なんてミッドには無いだろう?」
「・・・初めて聞いたわ」
 操影術と言うのだがその名の通りだ。
「なのはたちが気になるか?」
「当たり前でしょ。それにあの子も・・・」
 ティアナはなのはと一緒に自分達を守ってくれた少女を気にしていた。
「お前は比較的軽傷だった。なのはとチンクが盾になった上にスバルもお前を守るように覆い被さっていたからな」
「そんな・・・!」
「そしてなのはは重傷。デバイスもやばいレベルで損壊していた。何とかコアを取り出せたが外装はそのまま向こうに捨
ててきた。なのはは今特製のメディカルポッドで治療中。見た目は大分治ったがまだ目を覚ます気配は無い」
 全身に重度の火傷を負っており今にも死にそうだったが、今は何とか持ち直している。レイジングハートも修復と言うか
コアをそのままに新しい機体を設計中だ。
「スバルは二人が盾になっていたから見た目大した破損は無い。それでも万全を期すために戦闘機人用のメンテナンスポッドで
調整中だ。もうしばらくしたら意識を取り戻すだろう。あの子のデバイスはAIが改造を求めてきてな。本人が目を覚まし
たら強化改造する予定になっている」
 あくまで比較的軽傷だった。結構なダメージだったがもうほぼ全快している。マッハキャリバーも多少の損傷(高熱で外
装が溶解)があったが改造と同時に修復するらしい。
「そしてチンクだが・・・」
「かなり酷かったの?」
「大破寸前だった。内部の機械部分は全部換装したほどだ。生身の肉体部分は鍛えていたおかげか意外に無事でな。それでも
意識は戻っていない。とりあえず焼け落ちた皮膚はクローン培養して張り変えてはある。これはなのはも同じだ」
 は内心でチンクに愚痴る。いくらなんでも無茶をしすぎだ。
 ティアナはうつむき唇をかみ締めていた。自分だけが守られていた事に本気で悔しい思いをしていた。
「見舞いに行くか?」
「・・・ええ。お願い」
「では」
 はティアナを横抱きに抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこ。
「・・・へ?」
「その体じゃあまともに歩けんだろう。連れて行ってやる」
「ま、まままままま待って! せめておんぶ!」
「男としてそれはそれで役得なんだが?」
「・・・・・・これでいいですぅ」
 今のティアナは病院で着るような薄着一枚だ。下の方は穿いているようだが、上はぶっちゃけノーブラ。
 どうなるかを想像したティアナは顔を真っ赤にして黙り込んだ。そんな彼女の胸中は・・・
(自分自身この人に好意的だというのはあるけど、何で嫌じゃないかな自分は!?)
 まんざら嫌ではなさそうだった。

 ドアがスライドして、ティアナを抱えたは中に入る。大きなポッドの中には全裸のなのはが浮いており、その前には
若干体が透けた女性が見守っていた。
「美影。具合はどうだ?」
か。火傷はほとんど癒えたがダメージそのものはまだ残っている。もう少し様子見が必要だな』
「そうか」
「なのはさん・・・」
 ティアナは液体の中で浮かぶなのはを心配そうに見ていた。
「ねえ。あの液体の中で呼吸できるの?」
「酸素を多量に含んでいるんで肺から直接取り込める。飲んでも人体に影響が無いしな」
 まるで某L○Lだが気にしてはいけない。
 美影はティアナの格好を見て、意地悪げにに声をかけた。
『なんだ。また女でも作ったか?』
「ち、ちちちちちち違いますよ!」
「そんなに慌てるなティアナ。この体で出歩かせるのはちとあれでな」
 大慌てで否定するティアナだが、は何処吹く風。大した反応を見せないにティアナの方が若干落ち込む。女心は
複雑である。
 は部屋の中でパネルを操作する。するとガジェットの一型が入ってきた。
「な、何するんです?」
「これに乗っているといい。セインが良くやってるからな」
 ガジェットは楕円の体を横向きにしてティアナに近づき、はティアナをそこに乗せた。
 お姫様抱っこから解放されてほっとしたが、同時に何か残念な気がして、自分は何を考えているのかと懊悩し始めた。
「美影。なのはを頼む」
『任せておけ』
 はガジェットに乗ったティアナを引き連れながら、戦闘機人のメンテナンスルームに向かった。
 なお、ティアナは色々といっぱいいっぱいで目の前の幽霊には気付かなかった模様・・・

 その部屋には何基ものポッドが並び、そのうちの3つに少女が入っていた。
「チンクとスバルもそうだが、ディードのダメージもでかかったか」
「スバル・・・他の二人に比べて全く無傷に見えるんですけど?」
「後は意識だけだ」
「それとあの子・・・NO.5?」
「十二人姉妹の五女でな。姉妹の中でも上の方だ」
「ちっちゃいお姉ちゃんって、なんてマニアック・・・」
 本人が聞いたら怒りそうなことを思わずつぶやく。
「あれ?アニキ?」
「ノーヴェ。治療の進捗具合は?」
「特に問題なし。やる事は全部やったから後は待つだけだ」
 ノーヴェはそこまで言って、ガジェットに乗って浮いているティアナを見る。
「目ぇ覚ましたんだな」
「え、ええ。ありがと、助けてくれて」
「礼ならアニキに言えよ。アニキはあくまでついでに助けたに過ぎねーんだけどよ」
「そ、そうなんだ・・・」
 ティアナは複雑そうにを見るが、は―――苦しそうな顔で胸を押さえて荒い息をついていた。
「アニキ!?」
「・・・部屋に戻る。ティアナはお前に任せる」
「あ、ああ・・・」
 は呼び出したガジェットに乗って部屋を出て行った。
「・・・あの人、どうかしたの?」
「・・・まあ、色々あってな。自分用の霊薬もお前に使っちまったもんだから、しばらく安静にしてないと」
「あたしに?」
 不思議そうな顔をするティアナに、ノーヴェは説明した。
 はチンクたちを救出したが、それぞれ虫の息と言っていい状態だった。戦闘機人であるチンクとスバルはすぐさま
メンテナンスポッドに放り込み、中でも一番の重傷だったなのはをメディカルポッドに放り込んだ。だがティアナも重傷
を負っている。しかしメディカルポッドは一つしかなかった。そこでは霊薬や治癒符を大盤振る舞いしてティアナを治
療したのだ。ちなみに、ティアナは全身の骨にひびが入り、内蔵もいくつか損傷。火傷こそ少ないもののしっかりと死に掛
けていた。今も包帯の下には何枚も札を張っており治療中だったりするのだ。
「今のアニキは神降ろしの反動で結構拙い状態なんだ。降ろした神からなんか貰ったらしいけど使うかどうか迷ってるって
言ってたし」
「・・・何を貰ったの?」
「アムリタだったかな。あたしは名前しか知らないんだけど。アニキはどうせならソーマが欲しかったとか」
 アムリタというのは不死の霊薬である。ガルーダの母親がナーガ族のペテンにかけられて奴隷にされていた時、盗って来た
ら母を解放すると言う約束でインドラが治める神々の城から盗み出したものである。その際にインドラと戦ったりとか
ヴィシュヌの乗り物になったりとかあるのだが、その辺は神話を調べてみると面白いだろう。
 これを使えばは今の体の不調から解放されるのは間違いないのだが、本人には不死になりたいなどと露も思わず
何とかして効果を抑えられないか考えているところなのである。
「・・・アニキにとっては心労もあったんだろうな」
「心労? 彼女たちのこと?」
「ああ。チンク姉はアニキの恋人だ。そのチンク姉がこんな姿になってたら心配でたまんねえだろ」
 ティアナはちょっとに対する視線がきつくなる。もうすでにこの場にはいないが、出て行ったドアに向けて睨んでいる。
「どうしたよ」
「・・・ヴィータ・・・副隊長は?」
 ノーヴェは納得した。彼女はヴィータを尊敬しているんだろうと。だからこそ既に恋人がいるのにヴィータに手を出したと
思っているのだが・・・
「気にする必要なんかねーぞ」
「なんで?」
「ヴィータは恋人じゃねえ。それ以上の絆を持った主従だ。まあ愛し合っているのも肉体関係持ってるのも知ってるけど」
「不義理だとか思わないの?」
「・・・お互い認め合って許しあってるからな。チンク姉もヴィータもアニキのことを心底から愛してる。そしてアニキも」
「・・・・・・わかったわよ」
 3人の持つ絆をなんとなくだが理解する。凡人には理解できないんだろうかとか思うが、恋愛経験皆無であるのを思い出し
て盛大に溜め息。
「いまさらながら思うけど、寂しい青春送ってるわねあたし・・・」
 六課も女性比率が非常に高い職場だったなあといまさらながら思う。というか幹部の男はグリフィス一人だった。


「ハックション!!」
「・・・風邪でも引いたの?」
「誰かが噂してるんだと思う」
 グリフィスはシャリオと二人で部隊編成の手続きの処理をしていた。クロノの部隊との合流もあるが、そっちはそっちでやっ
てくれるらしい。
「それにしても凄い大部隊だな」
「そうだよね。管理局の部隊だけでなく、管理世界の軍隊もミッドや本局に集結してる」
 管理局だけでなく、スカリエッティは各世界にも犯行声明を出していた。それぞれの世界は管理局への協力、というわけでも
なく、自分たちの世界にも累が及ぶことを恐れてミッドで彼を潰そうとしている、ということで局と連携して戦力を送り込ん
できていた。
「この大戦力ならスカリエッティを潰せるよね。・・・ヴィータさんごと」
「・・・そうだね。でも僕らは討たなければならない。この次元世界の平和を守るために」
「・・・管理局も散々引っ掻き回してる気がしないでもないけどね」
「ちがいない」
 一応管理局が裏で散々やってきた非合法活動を知ってしまった身だ。二人は自分たちが正しいのかどうかわからなかった。


 ―――十日後。
 は痛む体を休めようと自室のベッドに横になっていた。その傍らではヴィータとざからが心配そうに見守り、ウーノが
お粥を作ってきていた。
君。食べられる?」
「なんとか・・・」
 ウーノは甲斐甲斐しくの世話をしている。ヴィータはに頼まれた分の情報収集をしており、ざからもそれを見物し
ている。の口にお粥を運ぶウーノを羨ましそうに見る二人をウーノは敢えて無視して、何処となく嬉しそうに世話をする。
「なあウーノ。あたしに代わってくれる?」
「昨日まであなたがしてたじゃない。こういうときぐらい何かしてやりたいと思うのはいけないことかしら?」
「・・・そうはいわねーけどさ」
「まだもうしばらく安静にしないといけないわ。私もこれから忙しくなるからその時はお願いね?」
「・・・おう」
 ヴィータは口ではウーノに勝てない。簡単に言いくるめられて渋々作業に戻る。
 食事を終えて、ベッドで休みながらも気脈の調整に終始しているの下にジェイルがやってきた。
 ウーノは片付けのために部屋を出ているのでここにはいない。
君。彼女たちの治療は完了したよ。今はリハビリがてらに訓練室にいるよ」
「そうか・・・。悪いな。あいつらを助けたのは俺のわがままなのに」
「それぐらいお安い御用さ。君にはいつも苦労をかけているからね。そうそう、ギンガ君が君にお礼を言っていたよ」
「ギンガが?」
「ああ、スバル君を助けてくれてありがとうとね。クイント君からもだ」
「直接くればいいものを」
「娘達が止めたのさ。君のその状態ではクアットロにだって殺されてしまう」
「違いないな。で、彼等は?」
「順調だよ。続々とミッドや本局に集結している。局は疑ってすらいないようだね」
「まあ自分達の想像を超える戦力が現れたんだ。人手はぜひとも欲しいだろうな」
「局の上層部の人間はこの際に各世界の軍も掌握するつもりでいるようだが」
「無駄なことだな」
「そうだね。何の為に集結しているのかもわかっていないのだし」
 二人は溢れ出てくる嘆息の息を止める事もしない。
「君のレシピ通りに霊薬を作ったよ。試してくれるかい?」
「ん。この出来は俺が作ったのと遜色ないな。助かったよジェイル」
「なあに。お安い御用さ」
 ようやくまともに動けるようになったは、ヴィータを誘って体を動かしに行くのだった。

 トレーニングルームではスバルとギンガがクイントに向かって拳や蹴りを放ち、その全てを防がれ返され吹っ飛ばされ
ていた。その隣ではウェンディとディエチとティアナが射撃について語り合っており、少し離れたところでなのはが
彼女らを見ていた。
「よう、なのは」
「ヴィータちゃん。それに君も」
「案外元気そうだな」
「おかげさまでね。・・・レイジングハートは壊れちゃったけど」
 目の前でボロボロになっていく十年来の相棒の姿を思い出して落ち込むなのはに、は赤い宝石を差し出した。
「・・・こ、これって!」
「レイジングハートだ。奇跡的に無傷だったコアを抜き出して改修した」
「苦労したんだぞ。コアに残ってたデータを引き出そうにも自閉モードに入ってて無理やりこじ開けたりとか」
 なのはは受け取ってすぐに起動させる。だがその姿は・・・
「・・・ねえ。見たことないパーツがついてるんだけど。それにカートリッジのところとか」
「改修といってもほとんど一から造るようなものだったんでな。最初からカートリッジ搭載機として作り直したし、
強度をブラスターに対応させた。早々壊れない頑丈設計にしてある」
 レイジングハートは元々それ単体で完成していたデバイスに無理矢理カートリッジシステムを組み込んであった。
 そのため色々無理があったし、脆い部分もあったのだ。
「あのー。デバイスは無事でも、その場合私がもたなくなるんじゃあ・・・」
「ジャケットの方もブラスター対応の新型を作ったんだよ。まあもっとも、機動力は無いに等しくひたすら頑強、とにかく
反動を軽減するためのあらゆる手を尽くしたからな。まったく、ピーキーにも程がある」
「あ、あははははは・・・・」
 なのはのブラスターモードは強力な自己ブーストだ。その分反動が大きく諸刃の剣だったのだが、は使用する
状況を制限した上で耐えうるだけの環境を作り出し、その結果ブラスターモードをほぼリスクなしで使用可能にしたのだ。
「新しい名前とかってあるの?」
「レイジングハート・オラトリオ。ブラスターの時のジャケットがセラフィムモードだ」
「熾天使?」
「背部に12枚の翼を展開して可能な限り反動を軽減させてる。本来余剰魔力を蓄積するものだが、その部分の魔力を
常時展開型の回復魔法に回すことでダメージを片っ端から回復させて可能な限りダメージを緩和している」
「・・・そう言えばそんな技術もあったっけ」
 なのはは高い魔力運用技術を持つが、その全てを扱えているわけではない。当然ロスが出る。はそのロス分を
回復に当てて反動を軽減している。
 しかし、なのははの行動に納得がいかなかった。
「ねえ君。敵である私を、何でそんなに助けてくれているの?」
「敵ね・・・。お前も気付いているだろう? 管理局は必ずしもお前の味方ではなかった。証拠に、部下ともども
消されかけたところだろう?」
「・・・うん。でも」
「もうお前は死んだことになっている。公式発表もされているしな。なら、わざわざ戻る必要も無いだろう?」
「それはそうなんだけど・・・」
「いーじゃねーかよ。どうせ近々辞める気だったんだろ?」
「ヴィータちゃん・・・。そりゃあこの件が終わったら魔法封印して海鳴で翠屋を手伝おうと思ってたけど」
「どうせ辞めようとしてもフェイトだのはやてだのクロノだのから引き止められるだろ。この方が楽じゃねーか」
「この件が終わったら管理局は崩壊する。そうなったらああいった強制干渉も無く自由に海鳴に住めるだろ」
「まあ確かに、管理局は高ランク魔導師の管理外世界への移住を認めないからね。せめて手元にいろってことだろうけど」
「ならそれで良いだろう? 出身世界が管理外だからって蛮族呼ばわりな組織、さっさと辞めた方が身のためだ」
「やっぱり、あれって私の暗殺も兼ねてたんだね・・・」
 なのははがっくりと項垂れる。管理外世界出身でありながら管理局の武装隊でトップエースをやっていたのを疎む幹部が
山ほどいたのである。ゲンヤとかは例外中の例外だ。
「あえて協力しろとは言わんよ。元からお前たちのことは戦力として数えていない。どうするかは好きにしな」
「・・・うん」
 なのははなにか考えたようだが、すぐに返事をした。

 そんな3人を見ていたティアナたちは・・・
「なのはさん。あれは間違いなく管理局を潰しに行くでしょうね」
「なら仲間だね。ティアナはどうするの?」
「あたしは元々兄さんの名誉を挽回するために局に入ったのよ。でもそのことを兄さんは望んでないんじゃないかって
思って、なら兄さんは私が自分のために生きることの方が喜んでくれるんじゃないかって思ってね。局への義理なんて
始めっからないし、ならあんたたちに協力するわ。奴らには殺されかけたし」
「じゃあ仲間っすね! これからもよろしくっす!」
「よろしくディエチ。ウェンディ」
 この数日の間に仲良くなっていたらしいティアナたちはあっさりと共に戦うことを決めていた。

 そして、丁度休憩中でたちを見ていたナカジマ親子は・・・
「どうする? 局を相手に戦う?」
「・・・父さんはどうするの?」
「戦闘中に掻っ攫うわ。そのほうが色々安全でしょ?」
「・・・そうかもしれないけど・・・」
「なんと言ってもそうするって本人に宣言済みだし♪」
「「・・・・・・はい?」」
「あー・・・気にすんな姉共。この人こういう人だから」
 まるでゲンヤは囚われのお姫様ポジションである。
 ノーヴェは呆れながら、ギンガとスバルは戸惑いながらもクイントについていくことに決めたのだった。


 何とか生き残ったなのはたちはについた。そして続々と集まる各管理世界の軍隊。
 最終決戦はもう間近。だが・・・
「むー・・・」
「・・・なぜ睨む?」
「・・・素直になれよなのは」
「・・・私は歓迎したくないんだが」
「良いではないか。いまさら一人増えても」
 だいぶ治ったとはいえそれでも心配らしいチンク・ヴィータ・ざからを侍らすを睨むなのはがいたのだった。
 そしてそれを見て楽しそうに邪笑を浮かべる年配の女性方がいた。何か一波乱ありそうである。



あとがき
なのはたちは生きてました。
みんな瀕死でしたが何とか復活。
そして管理局の足元に集まる反管理局同盟。
もはや手も足も出ないかも。



???サイド


 管理局の施設のどこか。
 その通路を中身の分からないポッドを抱えた局員が3人歩いていた。
「あー・・・かったるい」
「そういうな。評議会からの命令なんだ」
「しかしこの中身って何なんだろうな?」
 その男たちはある部屋にたどり着き、指定された場所にポッドを取りつけた。
「さてお仕事終わりっと」
「今日はもう終わりだな。飲みに行くかい?」
「おお、いいね。俺この間良い店見つけてさ」
 その男たちはそんな話をしながら部屋を出て行く。
 静かになったその部屋で、突如明かりがついた。
『・・・準備は整った』
『うむ。あとは全てを知るものを消しておかねばな』
『彼女には既に刺客を差し向けた。子飼いのあの子には悪いがもう必要はないのでな』
『今まで世話をしてもらったが、あの子はいらぬことまで知っているからな』
『『『これも正義のため。必要な犠牲として消えてもらおう』』』

「・・・やられたわね。まさかここまで腐ってるとは」
 彼女は盛大に顔をしかめ、この上なく嫌そうな顔で自分を襲ってきた男たちの血で汚れた自身の武器を拭った。
 彼女の足元にはひれ伏した、いや息絶えた男たちが転がっている。
「しかも殺す前においしくいただこうですって? ふざけんじゃないわよ。私にそういう事をして良いのはだけよ」
 彼女は客観的に見ても美人である。その彼女の抹殺指令を受けたものたちが強姦しようとしたのだが、まあ結果はこの通り。
「さて、見つかる前に脱出しましょうか」
 評議会の秘書の姿から一般の女性局員の姿に変化した彼女は呼び出された部屋を出る。
 通路を歩いている途中で悲鳴が聞こえた。死体が見つかったのだろう。彼女はさらに姿を変えて施設から出る。
「よし。アインへリアルの発射コードに細工したし、あれには手を出せてないけどこれ以上は無理と判断して任務終了っと」
 軽い調子でそういって、隠してあったバイク(高度なステルス機能つき。W型の技術の流用)を出してきて、ステルスを
使いながら発進する。
 彼女―ドゥーエ―は誰にも見つかることなくラボに帰り着くのだった。

ーー!! ハーレムに私も加えてー!」
「ハーレム言うな! そして顔見せた途端に押し倒すなああああ!!!」
「ドゥーエ! あんたって子はああああ!!!!」
「ウーノ姉落ち着いてええええ!!!」
 いきなりカオスな状態になったたちを、なのはは羨ましそうな複雑そうな顔で睨み、どこかの女性関係を
受け入れてしまっているティアナが自分もアタックしてみようか等とちょっとだけ思い、既にその一員なチンクやヴィータは
色々と(主に今後誰が追加されるのかを)悟りつつ生温い視線をに向け、淑女協定の案を練り始めるのだった。


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