フェイト・テスタロッサはある一家に世話になっていた。
 当てもなく旅をしていた彼女とその使い魔に出会ったその一家は彼女を自分たちの家に招き、しばしの間共に暮らしていた。
 それは、彼女が失踪してから実に二年の月日がたった頃だった。



 平穏を望みし破壊の鬼 アナザーIF2nd


 海鳴市の駅前商店街にある喫茶翠屋。
 そこには4人の少女が集まり、沈んだ顔で話をしていた。
「フェイトちゃん・・・」
「もう二年かあ・・・」
 それは失踪した親友のことだった。
 彼女はこの二年、海鳴に近寄ることはなかった。
「一応さ・・・死亡届は出してないんでしょ?」
「うん・・・どんな理由があったのかは知らないけど、せめて一言くらい連絡が欲しいかな・・・」
 そう言って落ち込むなのはとはやて。彼女らも探してはいるのだが、見つかることはなかった。
 幼なじみ4人はここにいない親友を思って無事であるように願うのだった。


 時空管理局地上本部・特別資料整理課。
 その部屋ではがスーツの報告を受けていた。
「Gスーツ第一部隊、違法研究所の制圧任務完了しました」
「ご苦労。損傷は?」
「新人が一名腕部を破損しました。攻撃を捌ききれなかったようです」
「ふむ・・・訓練に励むように伝えてくれ」
「はっ!」
 Gスーツ。Gとはジークフリートの頭文字である。彼の竜殺しの英雄の名前をつけたスーツであり、ぶっちゃけ男性用である。
 女性用にBスーツ、ブリュンヒルデがある。基本性能は同じだが、無骨なジークフリートと違い、女性らしいスーツになっている。
「しかしお兄様」
「どうした? ミスティ」
「なぜ評議会はお兄様のプロジェクトを支持したのです? 人造魔導師や戦闘機人のプロジェクトを切り捨ててまで」
 ミスティの疑問は当然のものだった。評議会は非人道的な違法研究を長い間続けてきているにも関わらず、それらの研究を切り捨てたのだ。
 そこには彼らの為政者としての思考と決断があった。
「人造魔導師研究は驚くほど効率が悪い上に、利益率も悪い。体をいくら作ってもそのスペックはばらつきが激しすぎるし、一定の戦力を
揃えることに関しては、実は全くもって向いていない」
「まあ、基本的に魔導師のスペックなんてランダム要素が強いですし」
「誰がどの能力を持つかわからんしな。それと違い俺のプロジェクトは装着者の練度次第ではあるが、ある程度以上の戦力を容易に揃えられるのが強みだ」
「魔導師であってもなくともある程度の戦力になる・・・と」
「その上、この研究で開発された数々の新技術を管理局名義で特許をとったから、むしろ利益のほうが大きい」
「それならスーツをある程度量産しても赤字にはならないですね。・・・ところで、あっちのプロジェクトの方は?」
「大赤字」
「納得しましたです」
「更に言うならこの特許料のおかげで地上部隊の給料が増えている」
「「「「あざーッス!!!!」」」
 だからこそ、評議会は生命操作関係の研究を切り捨て、たちにその始末を頼んだのである。
 その後も部下たちの事件の報告を聞いているところで、一人の部下がある情報を持ってきた。
「課長。以前から追っていたF計画関連の違法研究者が動きました」
「そうか。目的は?」
「そこまでは。ですが、モンディアルと言う上流階級の家に武装した数人の男を従えて向かっているらしいです」
「・・・Gスーツの第三班が待機中だったな。ドゥーエ。チームを率いてモンディアル邸に急行。俺も残りの報告を聞いて決済したらすぐに向かう」
「了解! 行ってきます!」
「頑張ってねドゥーエ」
「あなたもフォロー頼むわよ、オーリス」
 席を立つドゥーエにオーリスが声を掛ける。
 この二人、この数年共に仕事をしてきたことで友情が芽生えているらしい。ときおり妙なことをするスパーダを一緒になって押さえ込んでいる。
 主に拳で。


 フェイトとアルフはお世話になっている夫婦に恩返しをしようと頑張っていた。
 どこの馬の骨ともしれない、自分のことを詳しく話さないフェイトに対し、その夫婦、モンディアル夫妻は温かく迎え入れてくれた。
 今は夫妻の息子であるエリオの家庭教師のようなことをしているが、簡単に言えば子守だ。
 遊び相手になったり勉強を教えたりしている。
 そんな平和な日々の、その延長の筈のその日。
 平穏は―――壊れた。

 突然屋敷に踏み込んできた招かれざる客。
 ミッド式らしき杖型のデバイスを構えた数人と、白衣を着た眼鏡の男が一人。
「クククククク・・・ハハハハハハッ!!」
 心底から嬉しそうに笑うその男は、取り押さえられた幼い少年と少女を見ながら湧き上がる歓喜を抑えられなかった。
 フェイトはエリオを人質にとられて取り押さえられ、モンディアル夫妻にデバイスが突きつけられている。アルフは買い物に行って留守だ。
「資金不足で検体を作れないためすでにある検体を採取にくれば、まさかこんな極上のお宝が手に入るとは、実に運がいい!」
「検体・・・?」
「そうだ。この夫婦の子供は既に亡く、死んだ息子を取り戻すためにプロジェクトFに手を出したのだよ」
「そんな・・・!」
 フェイトは目を見張った。自分が弟のように思っていた子供がまさか自分と同じプロジェクトの産物だとは思っても見なかったのだ。
 だからこそ分かる。お宝とはフェイト自身であることが。
 フェイトが夫妻に目を向けると沈痛な面持ちで俯いていた。とうとう知られてしまった、そんなことを思っているような顔だった。
 エリオはそんな両親を見てショックを受けたように辛そうな顔をして二人をみていた。
「さて、そろそろ撤収と行こうか。だが、その前に・・・」
 白衣の男が夫妻に向かって手を振る。
「消せ」
「はっ!」
 証拠を残さないつもりなのだろう。夫妻を殺し、自分たちがここにいた証拠を残さないつもりでの命令だったが、それはこの上ない悪手だった。
 魔導師の一人が魔力弾を発射しようとした瞬間、窓を突き破って何者かが乱入、咄嗟にそちらに魔力弾を放つ。
 だが、乱入者は左手を一閃、他愛もなく魔力弾を打ち払う。そのまま魔導師の顔面に拳を叩き込む。
 グシャ、と言う音と共に魔導師の顔面がひしゃげる。一瞬それにたじろいだ他の魔導師が、その隙を見逃さない乱入者の攻撃によって
あっという間に血に沈んで行く。
 白衣の男とフェイト達は状況が分からず棒立ちになり、気づけば白衣の男とその一党は男を除いて完全に無力化されている。
「な、なんだ、なんなんだ!?」
「違法研究者スレイン・ハルヴァード。罪状がありすぎていちいち言うのが面倒なのでそこは省略して、逮捕します」
 その乱入者、青い女性的な鎧を着たその女性は管理局員証を見せて宣告する。
「管理局だと!? 屋敷の周りには結構な数の魔導師を配置していたはず!」
「私の部下が既に無力化しているわ。神妙にしなさい」
「く、くそっ!」
 男は逃げようとして後ずさり、壁に背中をつく。その瞬間、壁の向こうから衝撃だけが突き抜けて、男の体を吹き飛ばした。
「な・・・」
「課長・・・通背拳ですか?」
「まあ、そんな所だ」
 壁の向こうから声がする。どうやら壁の向こうから男をぶっ飛ばしたらしい。
 呆然とするフェイト達に構わず気絶した男を見下ろし、電子手錠をかける。
「シグマ。ブリュンヒルデ・リリース」
『オーライ・バディ!』
「・・・スパーダの奴、また私のスーツのAIを弄ったわね・・・っ!」
 青い鎧の装着を解除する女性、ドゥーエだが、彼女のサポートAIはどうやら本来はもっと大人しいようだ。
 鎧が小さなパーツになって消えて行くのを呆然と見ていたフェイトだが、部屋に入ってきたを見て辛そうに視線を床に落とした。
「さて、事情聴取と行きましょうか」
 その場にいる全員にむけて、はそう宣言した。

 モンディアル邸の応接室。そこにはフェイトとモンディアル一家、そしてフェイトからの念話で事態を知って大急ぎで帰ってきたアルフが、
とドゥーエの二人と相対していた。
「つまり、ご子息が亡くなったことに耐えられずプロジェクトFに手を出した、と」
「はい。長年の不妊治療が実を結び漸く生まれたあの子が、こんなにも早く逝ってしまうなど、私どもには耐えられませんでした・・・」
「・・・もう一人作ればよかったんじゃないの? ねえ、母さん」
「・・・ごめんなさい。あの子を産んだ時も相当な無理をしていたの。それにその時の後遺症で、もう、子供を産むことが出来ない体になってしまったの」
「そんな・・・」
 エリオは納得の行かない顔で俯いた。思うところはあるが、こんな違法行為に手を染めた両親が信じられなかった。
「そして、プロジェクトFの成功体であるエリオを狙った、か」
「ある意味我々の所為でもありますが、どの道回収に動いていたでしょうね」
「モンディアル家のことは分かった。で、ハラオウン。消息不明の筈のお前がなぜここに居る?」
 がフェイトに視線を向けると、フェイトはビクっと体を震わせる。そして、とフェイトの間にアルフが割り込んだ。
「そう責めないでやっておくれよ。こっちにも理由はあるんだ」
「ふん。大方あの親子がボロでも零したんだろう。たとえば、俺の勧誘が出来なかったことに対して使えないとか」
 の推測にアルフもフェイトも黙り込んだ。それだけでもドゥーエも何があったかを大方悟った。
「それ以上突っ込むのも無粋か。なら、テスタロッサ」
「・・・え?」
「あっちの名で呼ばれるのはゴメンだろう。こう呼ぶが?」
「う、うん・・・」
「なあ、何で名前で呼ばないんだい?」
「高町理論では、名前を呼び合ったら友達になるんだろう? だから名前で呼ばないことにしたんだ」
「・・・そっか。もう、友達じゃないんだね」
 一度も名前で呼ばないに漸く合点がいったアルフはそれ以上喋らなくなった。

「あの、なぜここに? 彼らの襲撃を予測していたのですか?」
「俺たちは今違法研究者狩りをやっていてな。その一環で連中を監視していた。こういうのは現行犯で捕まえて後々余罪を吐かせた方が楽なのでね」
「そうですか。あの、我々はこれからどうすればよいのでしょうか。もしかしたら逮捕されてしまうのでしょうか」
 モンディアル氏の言葉にその妻と子の表情が曇る。だが、はこの一家をどうこうするつもりはなかった。
「司法取引と行きましょう」
「司法取引、ですか?」
「ええ。あなた方がプロジェクトFを知ったその切っ掛け、おそらくは彼らのスポンサーと何らかのつながりがあるのでしょう。あなた方にそれを
教えた者についての情報が欲しいのです。ご協力いただけますか? 協力いただければあなた方の身柄は保証いたします」
「・・・わかりました」
 首を縦に振ったモンディアル氏を見て、はドゥーエに目配せする。
 ドゥーエは軽く頷いてモンディアル氏にこれからのことを説明していく。
「テスタロッサ。帰れとも言わんしこっちにこいとも言わん。ただ、アリサたちには連絡しておけ」
「・・・うん。あれ?なのはたちは?」
「教える必要があるか? ハラオウンの子飼いだぞ?」
「・・・そうだね。アリサたちにも口止めしておくよ」
 フェイトはもうあの一族と関わりたくないらしく、クロノたちに自分たちのことが知られないようにしていたらしかった。
 こうして、海鳴にいるフェイトの個人的な知人や友人には連絡することにしたフェイトだが、なのはたちからクロノたちに自分のことがバレるのは
どうしても避けたいようだった。失踪して以来連絡は一切とっていないらしい。も調書からフェイト達のことは削除するよう命令を出している。

「フェイトさん・・・」
「エリオ・・・」
「僕たち、人間じゃなかったんですね」
「そんなこと・・・!」
「だってそうじゃないですかっ! ちゃんと、母さんのお腹から生まれたわけじゃないんですよ・・・」
 エリオの言葉にフェイトは何も言えなくなる。だが、が独り言を言うように言葉をかけた。
「俺は調整された上で母親の腹から生まれた生体兵器だ。なら、俺も人間か?」
「え?」
 エリオがはっとしたようにを見る。は視線を合わせずに呟くように言う。
「人間の定義なんて曖昧だ。母親の腹から生まれなければならないのか? 遺伝子上ヒト科ヒト目でなければならないのか? それとも、姿形が似て
いればそれで良いのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「これは俺の持論だが、ヒトかヒトでないかなど大した問題じゃないんだ。同じような言葉をしゃべって、同じようなものを食って、同じような
生活ができるなら、たとえヒトじゃなかろう共存は可能だ」
「そんなことあるわけが・・・」
「俺の恋人ははなから人間じゃない。妖怪、どっちかというと精霊に近いが・・・」
・・・恋人って・・・」
「居て悪いか?」
「・・・ううん。ごめん」
 に睨まれてフェイトは身を縮こませてすぐに謝る。の人間関係に対してどうこう言う権利などフェイトにはない。
 の恋人こと久遠だが、久遠は年経た狐の変化ではない。もしそうであるならばあれほど無垢な存在にはならないだろう。
 妖怪の発生要因は複数存在する。ひとつは有名な、長い年月を生きた動物や器物が化けるタイプ。一般的な妖怪や付喪神である。
 もう一つはよく分からない事象に人が畏れを抱き、それが具象化したタイプ。ぬりかべや鎌鼬など現象がベースの妖怪だ。
 そして最後の一つが、大地や月の精気が集まりそれ自体が意思や姿を持ったものだ。有名なものでは、花果山の岩から生まれた岩猿、孫悟空だろうか。
 久遠は最後の一つに該当するため妖怪と言うカテゴリーには入るものの、同時に世界から生まれた精霊でもある。
 要するに、久遠は狐の姿をベースにした精霊なのである。
「俺は昔から人ならざる者と付き合いがあるのでその辺どうでも良いんだ。些細な違いがあっても分かり合えることを知っているし、そうでないならば
住み分けするか、人に害なすものならば排除する」
「それで、いいんですか?」
「動物にもやっていることだろう? 犬などの共存できるものは共存し、猛獣のそばには近づかない」
「・・・たしかに」
 エリオはの言葉に納得したように頷く。
 先程から彼は両親に近づこうとせずやフェイトのそばにいる。
 それに気づいたが苦い顔をする。
「エリオ」
「はい?」
「お前は親のことをどう思う?」
「・・・血は繋がってても、僕を産んだわけでは・・・」
「生まれに意味なんかないぞ。お前がその人達を親だと思い、その人達が己の子だと思っていればそれで親子関係は成立する」
「でもっ!」
「俺は亡くなった隣人の娘を引き取って養子にしている」
「え?」
「可愛らしい子だ。俺のことをパパと呼んでくれていてな。【親子仲】は極めて良好だ」
「・・・・っ!!」
 血の繋がらない親子でも仲良くやっていると、実体験を話すにエリオは混乱する。
 だが、エリオは思い出す。ほんの昨日のこと、疑いを抱くまでもなく愛情を注いでくれていると確信していた両親の笑顔を。
「・・・あ、あの」
 エリオは同時に気づいたことがある。モンディアル夫妻はオリジナルのエリオを名前で呼んでいないことを。
「なんで、オリジナルを名前で呼ばないんですか?」
「・・・私たちの息子は死んだわ。でも、その代わりであったとしても、あなたに向ける愛情は本物なの」
「・・・・・・・・」
「私たちは決めたのよ。あの子とあなたは違うって、あの子の面影は追わず、今いるエリオに親として愛情を注ぐことを」
「かあ・・・さん・・・・っ!」
 エリオは感極まり母親にしがみつく。モンディアル夫人は何も言わずにエリオを抱きしめる。
 フェイトはそれをまぶしそうに眺めていた。


 モンディアル一家から情報を聞き出したは、警備を担当する部署に事情を話してモンディアル邸に警備を派遣させた。
 そして、とドゥーエはフェイトとアルフを連れて資料課に戻ってきていた。
 フェイトにある事態を話すために。
「性風俗?」
「ああ。最近そっち方面にも腕を伸ばしているんだ」
「そういうのは犯罪が多そうなのはわかるけど、何でが直々に?」
「クローン技術の悪用の一つだ」
 は資料をフェイトに投げ渡す。受け取った書類をペラペラと捲り眺めるフェイトとアルフは、そこに書かれている事実に愕然とした。
「見目の良い女の子をクローニングして、性風俗業界に出荷・・・?」
「同じ顔の少女が商品として取引されている人身売買現場を捜査官の一人が発見した。ソッチ系の研究者が金に困って始めた商売なんだろう」
「そんなっ!」
 それは、フェイトにとっては到底許せるようなものではなかった。
 他の局員達もそうなのだろう。一人を除いて苦虫を噛み潰したような表情だ。
 で、その除かれた一人だが・・・激怒していた。
「スパーダ。落ち着け」
「・・・大将。オレッちはな、自分が鬼畜で変態だと自覚してる」
「結構なことだ」
「でもな、ガキには手をつけねえよ。俺の守備範囲は二十歳以上の成熟した女性から40代の熟女までだ」
「その辺は評価しなおすが、お前の趣味はあまりほめられたもんじゃないぞ」
 フェイトはワケが分からず目をぱちくりさせているが、オーリスとドゥーエは全身に鳥肌が立っている。
 この二人は、この変態の守備範囲にばっちり適用している。その事実に改めて総毛立った。
「スパーダ。このリストの会社をハッキング。ティーダ、礼状とって逮捕にむかえ」
「了解」
「あいよ大将」
 二人はそれぞれ仕事に戻る。
 は改めてフェイトに向き直る。
「テスタロッサ。こういうのは許せんだろう?」
「当たり前だよ」
「ならミスティと一緒にいくつか判明している違法研究施設を制圧してこい。報酬も出してやる。あと、扱いは匿名の民間協力者で」
「・・・いいの?」
「バレなきゃいい。利用させてもらうぞ」
 利用する。その言葉にアルフが気色ばむが、フェイトは特に悪い気はしなかった。
 むしろ、そういう形であろうと必要としてくれた事に喜びすら感じていた。
「お兄様・・・」
「気に入らんだろうが頼む」
「・・・分かりました」
 ミスティはの真意をある程度だが理解していた。
 監視を兼ねたパートナーとなってある程度洗脳・・・教育をすると言うことだ。
「くれぐれもよろしく頼む」
「はい」
 ミスティは資料を見て怒りで肩を震わせるフェイトを引っ張って開いているデスクに向かう。打ち合わせだ。
 ミスティが意外に世話を焼いているのを不思議そうに見ながら、はフェイトの情報が漏れないように裏工作を開始するのだった。

 こうして、今後数年にわたって違法研究者に恐れられるコンビが誕生したのだが・・・
「きゃあっ!」
「・・・何をそんな何も無いところでつまずいているんですか」
「うう・・・冷たいよう・・・」
「失敬な。相応しい対応をしているだけなのです」
「あううううう・・・・」
「さあ、とっとと撤退するのです。もう後20秒でこの施設自爆しますから。あ、ボクは先に行くです」
「何で私より速いのっ!! そ、ソニックムーブウウウゥゥッゥゥッ!!!!!!!!」
 その関係はどうしようもなく冷え切っていたらしい。主にミスティ側が。
 が局に入るきっかけを作った一人だかららしいのだが・・・
「お兄様と出会えたのは感謝しますが、お兄様の願いを砕いたのも彼女らなのです。ボクは決して許しません」
「うう・・・は許してくれてるんじゃぁ・・・?」
「誰がお前を許したと言ったのです? 単純にどうでも良いだけなのです。お前らの栄枯盛衰どうなろうと」
「・・・うう・・・昔の私の馬鹿ああああああああ!!!!!!」
 こんな扱いでも、フェイトは結構満足らしい。傍にいることができるのだから。
 フェイトの命がけの贖罪はこうしてないがしろにされながらも続いていくのであった。
 




あとがき
フェイトが仲間になりました。
ただし扱いは限りなく悪いですが。

久遠のことに関してですが、あくまで自分の解釈です。
原作でアリサが狐の変化と言っていましたしそれ以上のことは覚えていませんが、うちではこういう扱いと言うことで。
性格的にコッチのほうが安定するんですよね。久遠って狐なのに大福と甘酒が好きだったり、まあ弥太にもらって気に入ったんですが、
時々狐っぽくないので。人間にあわせて生活してるせいかもしれませんが。



おまけ

「なにか言い訳はあるのかこの脳ミソ共」
『はははははは・・・・いや正直すまん』
 は最高評議会のいる施設に直接来て尋問していた。
 がドゥーエ経由で聖王のゆりかごの所在を知ったからである。
 そしてと彼らの関係はもはや・・・の方が力関係的に上位であったりする。
『そう凄むなよ。ちょっと戦力として使えないかと思って』
「古代ベルカ最大級の戦船を隠匿しておいてちょっとだ?」
『・・・鍵が、聖王直系の血筋がいなければ使えんのだ。あっても意味をなさん』
「俺の調査と情報網をなめるなよ。聖王のクローンの製造をやっているらしいじゃないか。いくつかの研究所でな」
『・・・そこまで調べていたか』
 それと同時に聖王のクローン体の研究まで知っていた。
 あまりにも使う気満々な彼らに釘を刺しに来たのだ。
 一応施設を制圧させるために戦力を送り込んだのだが・・・
「ミスティとテスタロッサを送り込んでおいた。結果がでれば・・・なんだ? 緊急通信?」
『お兄様! 大変です! 聖王が!』
「ミスティか。クローンがどうした?」
『クローンはクローンでもある意味本物です! 中身が、魂がオリヴィエ・ゼーゲブレヒト聖王女なのです!』
「・・・はあ?」
『しかも生前の記憶まで持ってて・・・強すぎる!!!』
 どうやらいろいろな誤解の上で戦闘が起こったらしい。
 相手は聖王、しかも歴代最強で当時のベルカ最強の武を持つ王の為彼女らだけでは対処出来ないらしい。
「・・・今行く。それまで持ちこたえろ。座標データだけ送れ」
『了解なのです! テスタロッサ! 距離をとって時間稼ぎするです!』
『だ、ダメ! 振りほどけない! 近接戦しかさせてくれない!』
 通信する余裕が無いのだろう。鈍い音と共に通信が途切れた。
 は盛大に溜息を吐いて、脳ミソ三つに向き合う。
「問題が起こった。どうやら聖王は転生体らしい。とりあえず最高評議会の後継者のリストアップをしておけ」
『・・・我らを排する気か』
「おまえらの所為で俺がどれだけ苦労していると? ここの調整槽だってお前たちの完全な維持は無理なんだぞ」
『すまん。いつでも代替わりできるように状況を整えておく』
 評議会議員の言葉に満足したように頷いて、転移魔法で一気に救援に行く
 それを見送った評議会の三人は・・・
『いい加減後継者を決めんとな』
『うむ。我らのこの身ももう持たなくなってきておる』
『どの道数年後にはどうあがいても滅ぶだろう。とりあえず第一後継者候補はなわけだが』
『拒むだろうな。あやつは局を作り替えたらランスターあたりに押し付けて隠居する気満々だ』
『あやつにはそれ以上どうこうする気もないだろうしな。とりあえず地上のめぼしい幹部をリストアップするか』
 現在異常なまでに命を守ろうとしたり世界を守ろうとしたりと無茶をやらかしている本局のことは、とりあえず無視するらしい。
 どうやらハラオウン親子は精神状態が普通ではないらしい。
 あの親子はかつて摘発された本局の暗部の取調べをしていたことがある。
 その際に彼らの考えを何度も何度も聞いてきたせいで、そういった考えが本人たちの中に無意識に刷り込まれてしまい、かつての彼らの如き
考えに染まってきてしまっているのだ。
 そしてそれを足がかりに本局内に蔓延してきている。まるでインフルエンザのように、感染するごとにその形を変えながら。
 方向性は良いのだ。何かを守ろうとすることは何も悪くはない。だが・・・守るために手段を問わないようになってきてしまっているのだ。
 本局に引き抜かれた地上の人間が顔を真っ青にして帰ってきて、レジアスにその話しをして発覚したのである。
 本局の異常に気付きはしても、現状において地上と本局では本局の権力の方が強いため地上からは一切手出しができなくなっている。
 最高評議会からも三提督に打診したものの、彼らも手綱が取れないほどの暴走状態に陥っているらしい。
 だが、現状まだ問題らしい問題は起こっていない。三提督も動いているがあまり効果はないらしい。
『とりあえず、本局の方は何かしら手を出さんとな』
『うむ、がそれとなく護衛として強力な傀儡兵をおいてくれているが、何度か動いたからな』
『あの特別製の二体がたまに血まみれになっておるしな』
 射撃型の青い機体と、近接型の赤い機体。それが現在この施設を守る番兵となっている。
 そしてその周りに、本局の制服や武装隊の隊服を着たものが血まみれで転がっていることがあるのである。
 どうやら本局も評議会の正体のことをつかんだらしい。
 そして本局の思い通りに管理局を動かすために評議会を乗っとろうとしているらしい。
 本局の暴走に無い頭を痛めながら、評議会議員達は優秀な幹部のリストを作るのだった。





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