海鳴市の駅前にあるケーキの美味しい喫茶店翠屋。
 現在その店先には本日貸切の札が掛けられていた。


【家族】たちとの再会



 翠屋の中ではパーティーの準備が行われていた。
「しっかし・・・アリサちゃんたちにはしっかり連絡しておきながら
私達には何もないなんてねえ・・・」
 準備をしていた美由希がぼやいている。
「向こうにも事情はあったんだろう。温かく迎えてやろうじゃないか」
 弟分が無事に帰ってくることが嬉しいのかやけににこやかな恭也。
 基本的に周りが女性だらけなので数少ない男の友人が来る事が嬉しいのだろう。
「そういえば母さんは、桃子はどこに行ったんだ?」
 店内の拭き掃除をしていた士郎が姿の見えない桃子を探して、息子たちに声を掛ける。
「お墓参りだって言ってたよ?」
の母親とは親友だったそうだ」
「・・・そうか。君が帰ってくるから無事だといいに行ったんだな」

 その頃、家の墓の前では桃子が手を合わせていた。
「まったく・・・あなたが勝手にあの子をミッドチルダに送っちゃうから私達心配しちゃったのよ?
 せめてもう少しぐらい時間をくれればよかったのに・・・」
 桃子は早くも逝ってしまった友人に愚痴をこぼしていた。
「あの子は私にとってももう一人の息子なんだからね。あなたの代わりとは言わないけど
あの子のお母さんとして振舞うつもりよ。まあもしかしたら義理の息子になるかもしれないけど」
 母親は自分の子供のことには聡いものだ。
 普段の態度やがいなくなったときの反応からなのはの想いに気付いていたらしい。
「あの子は何事も無く無事に過ごしてるみたいよ。だから安心してそっちで一臣さんといちゃついてなさい」
 高町母よ、無事だからといってそれはどうかと思うのだが・・・・・・・
 もう話すことも無くなったのか、桃子はお墓の前から立ち去っていった。
 霊園から出る時、桃子は何気なく振り向いた親友の墓の前に人影があることに気がついた。
 見覚えのある青年と、桃子とは面識の無い美女が墓前に手を合わせていた。
「あら、君・・・よねぇ。あっちの美人さんは誰なのかしら? もしかしたら恋人とか?」
 二人の関係を邪推しつつ、声を掛けるでもなく桃子は足早に立ち去って行った。
 よからぬことを考えたのか、嫌な感じに顔が緩んでいる。
 や恭也といった普段からからかわれたりしている人間がいれば全力を持って逃走しているであろう
それはそれはとってもイイ笑顔でスキップしつつ、桃子は帰っていった。
「ふふふふふ・・・楽しくなりそうね〜♪」

 うろ覚えの母の実家を訪ね、祖父母と再会し、母の墓の場所を聞いたは墓参りに来ていた。
「・・・!! な、何だ今の言い知れない悪寒は・・・!」
「私も・・・なにかこうろくでもないことが起こりそうな予感が・・・」
 母の墓前に手を合わせていたは背中を駆け抜けた悪寒に思わず周りをキョロキョロと見渡した。
 アインも何かを感じたのかしきりに腕をさすっている。
「・・・なんか覚えがあるな。・・・そうか桃子さんが妙な事を考えている時にする嫌な予感と同じだ」
 自分で気付いておきながらテンションが果てしなく下がって行く
 顔を出さずにミッドに帰ってしまおうかとすら思っていた。
「ドクター・・・」
「わかってる。わかってるんだ。だけどな、本気でミッドに帰ってしまいたいなあとか・・・」
「お気持ちはなんとなく理解できますが・・・申し訳ありません。私は皆に会いたいので・・・」
 アインの気持ちも分かるは重い足取りながら皆で集まる予定の喫茶店・翠屋へと向かうことにした。
 はチラッと後ろを振り返り母の墓を見る。
「・・・・・・もう来る事は無いだろうけど、元気でやっていくよ」
 そう呟き、が歩き出した時、の周りで風がふわりと舞った。
 ――――まるで包み込むかのような優しい風だった。


 喫茶翠屋には既に、と関係が深くなおかつの生存を知っているメンバーが集まっていた。
 高町家(美沙斗含む)と八神家、バニングス家、月村家、そしてハラオウン家の面々が談笑していた。
「でも何で君はアリサちゃんとすずかちゃんにだけ連絡したんや?」
「アタラクシアの研究関連よ。意見が聞きたいって連絡貰ったの。なのはたちには秘密で」
「私の方は色々とアイデアが欲しいって言われたの。なのはちゃん達には秘密で」
 はやての疑問に二人が答えるが、なのはたちにしてみれば面白くない話だ。
「まあ、許してやりなさいよ。あいつの方は研究を軌道に乗せるのにかなり苦労したみたいだし」
「そういう方面、特に経営関連ではアリサちゃんに色々教わってたみたいだしね」
 そういう方向では自分達では力になれないことを自覚していながらもやはり複雑な面々。
「でも、少しぐらいは頼って欲しかったかな・・・」
「そうだね・・・」
「まあ、頼るべき相手を間違えへんあたりらしいゆうたららしいんやけどなあ・・・」
「「「はあ・・・・・・」」」
 揃って溜め息を吐く三人。
 周りの人間も苦笑している。
「リンディさん。あなた達でも探し出せなかったのですか?」
「ごめんなさい。私達の方も八方手は尽くしたんですけど・・・」
「あいつの方が一枚も二枚も上手だったんです。に繋がるものには緘口令を敷いていたらしくて」
「ミッドには君の賛同者とかがたくさんいますからねー・・・」
 あの事件の際に作り出したネットワークは未だに機能していた。
 その為は自分の行動を管理局に隠しつつ今の地位を築くことが可能だったのだ。
「と・こ・ろ・で・・・お墓参りに行った時になんだけど」
 桃子がそれはもう楽しげな顔で話題を振り始めた。
 その顔を見た恭也がまだ来ていないに逃げるように念を送る。
 逃げたくても逃げられない現状のためはどうしても来る事になるのだが・・・合掌。
「なんかねぇ・・・沙耶のお墓の前に君がいたのよ。隣に銀髪の綺麗なお姉さんが一緒に居たんだけど、
もしかしたら恋人だったり・・・なぁんちゃって〜♪」
 フェイトが、はやてが、なのはが、ついでにすずかも動きが止まった。
「恋人・・・?」
君に・・・・?」
「ふふふふふ・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
 恭也は4人が持つグラスに皹が入っていることを確認してしまいに来るなと念を送る。
 しかしその念は届かない。
 よく見ると薄く開かれたすずかの目が血の様な深紅に染まっていた。
 ヴィータとザフィーラは心当たりがあるのだが、今言ってはいけないと思い沈黙している。
 アリサたちですらも冷や汗をかいて沈黙していると、来客を告げるカウベルが鳴った。
「・・・・・・あ〜、皆さんお久し「「「「(君)!!!」」」」な、何だ一体!?」
 が登場した瞬間に4人が一斉に詰め寄った。さり気に首を絞められている。
 他の面々は唖然と5人を見る中、桃子だけが楽しげに笑っていた。

 状況を理解したはとりあえず鋼糸で4人を縛り上げ、息を切らしつつ4人に答える。
「ぜぇ・・・はあ・・・いま、付き合っている女は、いない。桃子さんの、邪推と楽しむ為だけの策略だ。
だからいい加減に落ち着いてくれ・・・!」
「だったら証拠を見せてよ!」
「そうや! 具体的に言うと桃子さんが言うた女はどこの誰や!」
・・・・」「君・・・・・」
 なのはとはやてが激昂し、フェイトとすずかは悲しげにを見ているが、
すずかが何気に2tの荷重に耐える9番鋼糸を引きちぎろうと力を込めていたりする。
 切れそうになって悲鳴を上げている鋼糸と引きちぎる寸前のすずかを恐ろしげに見ながら、は考える。
 このタイミングで合わせるのもどうかと思ったが、呼ばなければ話にならない。
 は店の外にいる彼女に手招きし、入ってくるように合図する。
 そして・・・・・・・
「お久しぶりです主はやて」
「・・・リイン・・・フォース・・・・・・?」
 かつての主従が再会した。

「・・・・どういうことだ?」
「そーゆーことなんだよ」
「でもなんであの子が・・・」
「アタラクシアの技術をなめてはいけないということだ」
「あの方がおねーさまですか・・・」
 呆然とするシグナムとシャマルに、ヴィータとザフィーラが事情を説明する。
 リインは話だけでしか知らないはやての先代のパートナーを呆然と眺めていた。
 そしてはやては、
「この・・・阿呆。無事やったら・・・ちゃんと連絡しぃや・・・」
「申し訳ありませんはやて。私もようやく形になったのです。ドクターや他の皆様方のおかげで
やっとあなたの前に姿を出す事が出来るようになったのです」
 はやてはアインに抱きついて泣きながら文句を言っていた。
 アインも静かに涙を流しながらはやてを抱きしめて謝罪している。
君・・・彼女は・・・」
「色々と機密事項があるんで突っ込んだ質問は受け付けませんよ」
 リンディが何か聞きたげにしているが、はばっさりと質問を切捨てる。
「ただ、ロストロギアの類は一切使ってませんから」
「・・・・・・・・正直納得しがたいんだけど」
「無理にでも納得してください。はやての従者が帰ってきた。それでいいじゃないですか」
 は徹底していた。
 長く管理局に籍を置く二人の事をは一欠けらも信用してはいなかったのだ。
 幹部と雑談中に話の種にでもされて自動人形の情報が管理局に流れてしまうのは絶対に避けたかった。
「僕達が信用できないというのか?」
「言ってしまえばそんなものだ。俺は管理局を信用も信頼もしていない」
 管理局に所属している誰もがその言葉に驚きを隠せない一方、納得の色を見せていた。
「まだ聖王教会の方が信用も信頼も出来る。連中には貸しがあるしな」
 クロノもリンディもその心境は複雑だった。
 だが、自身の事や暗部のことを考えれば理由はわかるためもうそれを話題にしなかった。
 今はそれでいい。せっかく再会した二人がいるのにこういう話はするべきじゃない。
 そういわれた二人は渋々とへの追及を避けた。
 もっとも、これ以上追求するなら物理的に排除されていただろう。
 密かに握りこんでいた小刀がそれを物語っていた。

 クロノやのやり取りを見ながらも、愉快な高町一家は自分達の欲求を満たす方向に動いていた。
「ふふふ。少しは楽しめたわね♪」
「こーゆー時のかーさんは本当に性格悪いよね」
「詰め寄られているを見て楽しむのもどうかと思うんだけどな・・・」
 なのはも参加した事に若干ショックを受けた恭也だが、それよりもすずかの行動に驚いていた。
 ただ、忍が納得顔だったのが少し引っかかっていた。
「忍。すずかちゃんの行動には何も思わないのか?」
「むしろ納得かなあ。あの子昔は普通に友達だって思ってたみたいだけど、最近はねぇ・・・」
 妹がいることで高町家に嫁入りが許可された旧姓月村忍は目が輝いていた。
 何せこの女性は桃子の同類である。
 基本的に自分が楽しい事は最優先するタイプだった。
「すずかー! 君は【お友達】なんじゃなかったのかなー?」
「お、お姉ちゃん!? そ、それは・・・そのっ!」
 からかわれるすずかを見て、アリサは複雑そうな溜め息を吐いた。
「すずかまで・・・っていうかあいつ何時の間にすずかまで落としてんのよ・・・」
 幼馴染達が軒並みに惹かれていく状況に頭を抱えていた。
「何処がいいんだか・・・」
「さて、俺にとっても予想外にほどがあるんだけどな」
 いつの間にか件の青年がそこにいた。
「・・・・・・・・・・・その頭、なにがあったの?」
「親父さん方にもみくちゃにされた。既にアルコールが入ってるぞアレは」
 は髪の毛が爆発していた。
 なお、高町、月村、バニングス家の父親達は既に宴会モードで、ノエルやファリンに酌をさせながら
日本酒を飲んでいた。巻き込まれたらしいリインとアルフが既に撃沈されている。
「はあ・・・パパ達ってこういうとき賑やか過ぎるのよね」
「それはそれでいいと思うけどな。限度を超えてさえいなければ」
 アリサは懐から櫛を出しての髪を梳き始めた。
 も何も言わずに受け入れている。
 二人は思い出す。かつての正月を。
 高町家で行われた新年会にて、酔った桃子がにディープキスをかまし、それを見てぶちきれた士郎により
被害者であるが全力で蹴り飛ばされた。被害者でありながら強烈な一撃を食らわされた
半ば飛んだ意識で本気でぶちきれて士郎を強襲、油断していた士郎を投げ飛ばして壁にたたきつけたのだった。
 そこから士郎VSの一騎討ちが始まり、素手での格闘の際に館長の教育の所為で意外に強かった
対し、大人気無いにも程がある士郎が何処からとも無く取り出した木刀でを吹き飛ばした。
 は飛ばされた先が道場だった事で木刀を入手し小太刀二刀で現れ、その姿に何故か強烈な危機感を覚えた士郎が
恭也と美由希を緊急参戦させ子供相手に3対1という普通ならありえない布陣での戦闘が幕を上げたのだった。
「あんた御神流の修行って当時やってたっけ?」
「士郎さんが恭也さんや美由希さんに修行をつけていたのをなのはと一緒に見ていたぐらいだ。
高レベルの見取り稽古をしていたようなものだよ」
 あの時は油断しまくりの美由希をいきなり射抜でK.Oしたのだ。御神流の奥義で。
 その後、バリバリに警戒する士郎と恭也を相手には見よう見まねで奥義を放ち、其れに対して二人は、
更に大人気なく問答無用で奥義を放ち始めたのだ。その際追い詰められた恭也が神速を開眼したりしていた。
「最後に神速を使った士郎さんの薙旋で木刀を折られてそのまま吹っ飛んで、恭也さんが雷徹で追い討ち掛けて
K.Oされたんだっけ? 見てたはずなのにいまいち思い出せないんだけど」
「おおむねそんなものだったと思うぞ? 俺も後で撮影されていたビデオを忍さんたちに見せられたからな。
肋骨全損・両手足の骨にヒビ・内臓にも多大なダメージありの全治半年の重傷を負ってベッドの上だったが」
 士郎たちが児童虐待で警察にしょっ引かれそうになったりとか、月村家が裏で手を回したとか色々あったりし
たものだった。士郎と恭也は警察よりも泣きながら怒るなのはやすずかの方が怖かったらしいが・・・
 なお、ビデオの題名は高町家大血戦だった。いまも関わった各家庭に一本ずつ置かれている。
「余り思い出したいものでもないからこの辺でやめておこうか・・・」
「そうね・・・。あの時見た血塗れのあんたは思い出したくないわ・・・」
 激しい戦いの末に体中に傷を作り血塗れで意識を失ったをなのはとすずか、アリサの三人は
血で汚れるのも構わず泣きながら抱きかかえて必死に呼びかけていたりしたのだが・・・
「・・・アリサ、どうかしたか?」
「なんでもないわよ」
 アリサは忘れる事にした。
(・・・・・アタシまで参加したら、なのはやすずかに悪いじゃない・・・)

「ところでアリサさんや。なぜに七三分けに・・・」
「ごめん。間違えた」


 髪型をセットしなおしたは大人組みの誘いを丁重に断り、フェイトたちに酒が入らないように
監視しつつ、酔いつぶれたリインとアルフに膝枕をしながら介抱していた。
「お疲れさんだねー」
「こういう役回りは今更だしねぇ・・・もう慣れたよ」
 エイミィが士郎たちに絡まれたクロノを見捨てつつに話しかけていた。
 クロノは泣きそうな顔で助けを求めるようにこちらを見ているが二人で無視している。
「ミッドではどうなの?」
「順調といえば順調だな。・・・・何人か知り合いが亡くなられたけど・・・」
 は遠い目で呟く。
「向こうで俺を引き取ってくれたゲンヤ・ナカジマの奥さんと、その上司と同僚達。
 ある事件を追った末に全員亡くなられた。みんな良い人たちだった。
 気がかりといえば、その同僚の娘さんが行方不明になったことだけど・・・」
 行方不明になったあと探したのだがまるで見つからなかったのだ。
 母親が仕事で家を空けるため数度面倒を見た事のある、紫の長い髪をした少女は・・・・・・
「俺も裏社会の連中を通じて探してはいるけど・・・まるで見つからない」
「裏社会って・・・まずくない?」
「何の問題も無いよ。連中はドライだからね。お互いに深入りしない主義なんで互いに都合が良いんだよ。
アンダーグラウンドの掲示板に賞金つきで情報を集めているんだけどこれがなかなか・・・。」
 裏社会と聞いて眉をひそめるエイミィだが、信用商売である事が多い裏の連中はある意味
管理局よりも信用できたのだ。少なくとも一度行った契約は必ず遵守してくれる。
「妹達の検査とかで家族達がいないときにその子の面倒を見ていたんで妹達は知らないし
あの子も小さかったから俺のことは覚えてないかもしれないけどねぇ・・・」
 は過去を思い出しては溜め息をつく。あの子はなかなか難儀な子供だった。
「・・・まあ、あの人たちのことは今でも鮮明に思い出せる。料理番として俺がいるからといって
家に呼んで宴会三昧、朝方まで飲み続ける酒豪どもにおつまみを作り続けて夜を明かしたあの日は
絶対に忘れない」
 本気で殴ろうかと何度思ったことか、と暗い顔で呟くにエイミィは顔を引きつらせる。
 そもそも実際のところ、一番怪しいのは管理局だった。そういうことが出来そうな組織がそもそも少ないのだ。
 聖王教会は論外といっても良い。彼らは生命操作関係のことには関わる事はない。
 そういった事は禁忌としている以上それを破る事はまずないだろう。
 そういう研究をしている違法研究者ももちろん存在するし、そういう組織も存在する事はするのだが、
ゼストたちに幾つか潰されていて以前よりも減っている。大き目の組織は大体が壊滅している。
 スバルとギンガはそういった組織を潰した際に保護された数少ない完成した戦闘機人なのだ。
 なお、開発者は明らかになっていないし、逮捕されてもいない。
 何よりもにはあの管理局の不正データ集がある。そこにはあったのだ。生命操作研究についてのことが・・・
「まあ、それ以外は大体良い感じで事は進んでいるよ。だから・・・」
「だから?」
「変に手を出さないこと。エイミィさんは好奇心が強すぎるところがあるからね」
「好奇心は猫を殺す・・・かぁ。りょーかい、手は出しません」
 海鳴での暮らしが長いせいか日本のことわざを使うエイミィ。
 お互いになんとなく事情に気づきながらも深入りはしない二人だった。

「ああ、そうそう。婚約おめでとう」
「あうっ! だ、誰からそれを!?」
「ユーノから」


 エイミィの婚約を祝うと同時にそれまでの苦労(クロノと付き合うに至るまで)をねぎらった後。 
 リインが目を覚ましアインの帰還を粛々と祝う八神家の面々に拉致られて行き、アルフはリンディに引っ張られて
厨房におつまみを作りに行って、は少し一人で懐かしい面々を見ていたのだが・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・やられた」
「えへへへへへ〜〜〜〜」
「うふふふふふ・・・・」
 酔っ払ったフェイトとすずかに絡まれていた。
「桃子さん・・・やってくれましたね・・・」
「何のことかしら〜?」
「おかーさん・・・・・・」
 なのはですらも呆れたような目でとぼける桃子を見ている。
 桃子は二人の飲んでいたコーラ等にウォッカ等の強い酒を混ぜ込んだのだ。
 その為、擦り寄ってくる美少女二人にはいっぱいいっぱいだった。
 いくら理性が強いとはいえも年頃の男である。美しい少女達の行動に理性をガリガリと削られつつあった。
君。一杯いかが?」
「・・・・・・・・なのは。そっちのコーラとってくれ」
「あ、うん。・・・・はい」
 桃子が用意した明らかに酒としか見えないそれを可能な限り見ないことにしてなのはにジュースを取ってもらう。
 その光景をただ微笑みながら見る桃子に不審な物を感じつつコーラに口をつけると、
「――――ぐふっ!」
くんっ!!?」
 コーラに酒が混入されていた。
 桃子は更に良い笑顔でをただ眺めている。
「お、おかーさん! まさか!!」
「甘いわね君になのは。そのペットボトルの中身が増えていた事に気が付かないなんて」
 全ては桃子の策略だった。なお、混ぜたのはテキーラである。
 ところで、は下戸である。両親共に下戸だった事もあるのだが、は輪をかけて弱かった。
 度数の弱い酒ならそこそこは大丈夫だが、強いものを飲むと一気に酔っ払うのだ。
「――――ふふ」
くん・・・?」
 いきなり静かに笑い始めたは、自分に縋り付くフェイトとすずかを抱きしめ、
「ちょ、ちょっとくん!!?」
「あらあらまあまあ♪」
 不敵な笑みを浮かべて二人の唇を奪っていた。
 フェイトとすずかは幸せにとろけた顔で更ににキスをねだっている。
「そこまでだっ!」
「クロノくん!?」
 の凶行にクロノが正義の味方のごとく立ち上がった。・・・・・・が、
「それいりょうのはんこうはゆるしゃないりょ!!」
「酔ってるぅぅぅぅぅぅっ!!!!」
 呂律も回らず足元もおぼつかないほどにべろんべろんに酔っ払っていた。
「だめだ! クロノくんがこの調子じゃあ・・・。そうだ! おにーちゃー・・・ん・・・」
 クロノが使い物にならないため今度は恭也に助けを求めるが、恭也はすでに忍の手によって
酔い潰されていた。ちなみに決まり手はウォッカの口移し。
 なのはは目の前で行われている行為にいい加減我慢がならなくなり砲撃をかまそうとレイジングハートを・・・
「いいかげんにしなさーーーーーーーーーーいっ!!!!!!」
 なのはがアクションを起こす前に、大魔神と化したアリサが怒りの形相で咆哮を上げた。
 どごおっ!!! という鈍い音を立ててアリサのチョッピングライトがの後頭部に決まり、昏倒した。
 なのはは待機状態のレイジングハートを握ったまま硬直している。他の面々も驚き固まっていた。
 アリサは荒い息を整えてから、
「なのは」
「は、はいっ!!!」
「桃子さん」
「はいっ!!」
「今日はもうお開きよ。はうちで預かるから何とかして皆を家に帰しなさい」
「「了解しました!!!」」
 静かな怒りをたたえたままなのはたちに命令し、最早狂宴と呼んでいい惨状になっていた宴会を
無理やり終わらせた。
「あんたも少しお仕置きが必要かしら?」
 アリサは剣呑に光る目で気絶中のを見やる。
 気絶しながらもアリサの殺気を感じるのか時折体を震わせていた。


 懐かしい人々と再会したが、あいも変わらずドンチャン騒ぎになることには少し呆れていた。
 もう少し、そう八神家の様にもう少し湿っぽい再会の方がいいなあと思う反面、いつも通りの皆を見て
安心している自分がいるのに気付いて黄昏そうになった。
 そして・・・・・

「すまん! 勘弁してくれ! 酔ってる間はほんとに意識がほとんどな・・・がああああああっ!!」
「分かってるわよ。それでもね、色々と我慢ならないのよこっちは!!!!!」

 桃子が元凶なのだがはアリサから八つ当たりに近いお仕置きを受けていた。
 救助に来たなのはやフェイトが膝を抱えて部屋の片隅でガタガタ震えるほどのド級のお仕置きだったらしい。

 最後までグダグダなままおわる



あとがき
主人公海鳴に帰還するの巻。
はやて達の方は描写はありませんが静かに帰還を祝っていました。
すずかはある事情により親友といった立場だったのですが、彼女も成長して心変わりしてました。
アリサは友達想いな子ですから・・・・・
そして、高町母ランページ。その悪戯脳がフル回転し主人公をいじり倒すことになりました。
あくまで仕掛けて高みの見物をしているだけなあたり更に性質悪いです。


inserted by FC2 system