「なあ・・・前にも言ったけどいじめじゃないのか?」
「前にも言ったが、正当な評価だ。あきらめろ」
 今日は楽しい模擬戦闘訓練。
 素晴らしく晴れ渡った空の下、は背中で泣くのだった。


模擬戦をしよう Ver.STS



機動六課の訓練施設にて
「さて、今日は模擬戦だよ」
「相手は特別ゲストだ。洒落にならない位につえーから手加減無用な」
「なお今回はお前達フォワードに加え我々隊長陣も参加する」
「ちなみに相手は一人な。そうやないと戦力バランスがおかしくなるんや」
 上からなのは・ヴィータ・シグナム・はやての順である。
 新人達+ギンガは一対十というありえない模擬戦に呆然としている。
 特にティアナはどんな化け物が来るのかと戦々恐々としていた。
(隊長たちがフル参戦して戦力が釣り合うってどんな化け物なのよ・・・)
 そんな事を思っていると、ゲストがやってきた。
「なあ・・・帰っていいか?」
「「「「「「駄目」」」」」
 特別ゲスト・不破の一言目は凄くネガティブだった。
 しかも一言で却下されていた。
「どう考えても前より戦力上がってるじゃないか・・・」
「ふ・・・クロノ提督やユーノ、シャマル達がいないだろうが」
「新人達がいるしギンガもいる。何よりお前ら当時より強くなってる。俺のが不利だろうどう考えても・・・」
 はそれはもうやる気がなかった。
君。私らに勝ったら色々サービスするで?」
「いらん。俺はそんなものには釣られん」
「むー。婚約者の体が恋しくないん?」
「体が目当てじゃないからな」
「「「あう・・・・」」」
 誘惑しようとしたはやてだが切り返されて逆に赤面していた。
 なのはとフェイトにもダメージがあったらしく耳まで真っ赤になっている。
「あの・・・本当にそこまで強いんですか?」
 声を掛けたのはティアナだった。
 以前シグナムとの決闘を見てはいるもののあくまで一対一の勝負でほぼ互角だったように見えていたのだ。
「・・・・・・・・はあ。証明するしかないようだな」
 本人は何を言われようと無視できるのだが周りが、婚約者達と守護騎士の目の色が変わっている。
「・・・・・・・・始めようかー」
 いささかやる気の無い声で、模擬戦は始まった。


 ちょっとした作戦タイムを取った。
 まずは六課側は新人達が仕掛けてから隊長陣が仕掛け、その後総攻撃という作戦が可決し、
はあらゆる攻撃を捌ききるという作戦を取る。というかむしろそれしかなかった。

「行くよおにーちゃん!」
 模擬戦が始まり、いきなりスバルが突撃してきた。
 マッハキャリバーが唸りを上げ、へと肉薄する。
 は、
「真っ直ぐ過ぎる」
 その一言と共に足払い。
 スバルは盛大に前のめりにすっころび慣性に任せてそのまま木にぶつかり停止した。
「てやあああああああ!」
 ついでエリオがストラーダを構えてチャージ(突撃)してくるのを、穂先の先端を虎月の刃先数ミリで
受け止める。そしてはエリオを高々と空中へ蹴り上げた。
 間髪いれずにオレンジ色の魔力弾が数発に向かって殺到してくる。
 は木にぶつかってぴよっているスバルの襟首を掴み、何の躊躇も無く盾にする。
「――――はっ! 何が――ええええええええええっ!!!!」
 盾にされているスバルが状況に気付き絶叫と共にバリアを張る。
 魔力弾が着弾しその衝撃に歯を食いしばりながらスバルは耐え切った。
 ティアナの魔力弾を凌ぎきったスバルは安堵の息を吐いて、に食ってかか―――
「やああああああ!」
「む、ギンガか。ではもう一度」
「やめてギン姉ー! って言うかおにーちゃん後で覚えてろー!」
 ――――ろうとしたところでギンガが強襲し、は再び盾(スバル)を構え防御体制をとる。
 ギンガのナックルがスバルのバリアを貫いた瞬間にが拳を受け止める。
 驚く二人を無視して、はギンガの腹とスバルの背中に掌を当て、浸透勁を叩き込む。
 防御も何も出来ず二人は地面に崩れ落ちた。
 今度はピンク色とオレンジの魔力弾が数十発飛んでくる。
 は数十本の魔力の飛針を作りだし、魔力弾に向かって正確に投擲、魔力弾を撃ち抜き
術者であるティアナとキャロを狙う。
「この程度なら撃ち落す必要もない! キャロ、退くわよ!」
「はいっ!」
 ただ針が飛んでくるだけで大した威力はないと踏んだ二人は軽く下がっていなそうとする。
 しかし―――甘い、甘すぎる。
 地面に落ちる寸前で飛針は自壊し、炸裂。
「うそおおおおおおおおおお!!!」
「じゅ、絨毯爆撃いいいいいいい!!!?」
 次々と降りしきる飛針という名の小型爆弾の豪雨に、ティアナとキャロは爆風にもみくちゃにされ戦闘不能になった。
 なお、蹴り上げられたエリオはティアナたちのそばに落ちており爆撃の集中砲火で既に気絶していた。
 ついでに、フリードは開始直後ににピンポイントで殺気を叩き込まれて泡を噴いてひっくり返っている。

「鮮やかだね・・・所々卑怯くさいけど」
「戦場ではよくあることだ。敵の骸を盾にするなど乱戦では基本とすらいえる」
 ハリウッド映画では良く見るシーンだ。
「しかし・・・やる気が感じられないな」
「そりゃそうだろーさ。今日絶不調らしーし」
 ヴィータの言葉に隊長陣が一斉にヴィータを見る。
「・・・・それでもあいつら程度なら軽くあしらえてるけどな」
「どこか悪いん?」
「そうは見えないけど・・・」
 はやてとフェイトも心配そうにを見るがどこが悪いのかさっぱり分からない。
 そして見ていたはやてとフェイトが顔色を変える。
「どうかしたの?」
「まずい! みんな退避ーっ!」
 その号令を聞いてまずを見て、全力で散開する。
 散開したその場を蒼い魔力の激流が焼いていった。
「いきなり絶龍砲かよ! マジに死ぬかと思ったぞ今っ!」
「固まっているから丁度良かったんだがな・・・」
 いまいち調子が上がらず本気でやる気が無いは即行で終わらせようとしていた。
 フェイトとシグナムがさっきのお返しとばかりに連携攻撃。
 幾度と無く刃を合わせてきた二人の息のあった連撃がを襲うが危なげなく捌ききる。
 二人がの蹴りで吹き飛ばされたところにヴィータがサッカーボール程の鉄球を打ち放つ。
 更になのはが無数の魔力弾を全方向から浴びせかける。
 は鉄球をなのはに向かってノートラップボレーシュート!
 鉄球が魔力弾を弾き飛ばしながら飛ぶそのすぐ後を飛んでなのはに接近。
 鉄球をかわしたなのははを攻撃、だがはなのはを無視してその向こうで一人でたたずむはやてに
針を投げつつ虎月を抜き斬りかかる。
 はやてはかつてから蒐集した戦闘技能をダウンロード、迎撃しようとするが所詮過去のデータ。
 意にも介さずはやての杖を弾き飛ばして徹を込めたデコピンを喰らわせる。
「ぅあいたーーーっ!!!」
 たかがデコピン、しかし徹の込められたその一撃は脳に直接衝撃を与え激しい頭痛を引き起こす。
 はやては頭を抑えながら地表に落下していった。
「せええええええええいっ!!」
 フェイトがの後ろからザンバーで攻撃するがはなんと魔力刃を白刃取り、しかも魔力刃を叩き折って
なのはに向かって投げつける。
 なのはに届く前に魔力刃は崩壊し消え失せるが、それを目晦ましにしたが一気に接近。
 しかし何もせずになのはのすぐそばを超音速で駆け抜ける。
 訝しげにを見るなのはは、一拍遅れて発生した衝撃波に吹き飛ばされ平衡感覚を失いつつきりもみ回転しながら
地面に落ちていった。

「な、何をしたの? 今・・・」
「さ、さあ・・・・・」
 意識を取り戻した新人達が集まって隊長たちとの戦いを眺めていた。
「多分、ソニックブームです。音を超えて飛んだことで発生したんだと思います」
「普通ならそういう事を起こさなくするものだけど・・・攻撃に使うなんて・・・」
 のありとあらゆる事象や現象を利用する戦いに目を奪われる新人達。
さんはランクはあくまで指標の一つでしかないから戦い方しだいで格上を圧倒できると言ってました」
「でもあの人もランク高いわよね?」
「ほぼ同ランクの魔導師を数人相手にして無傷であそこまでやるのは・・・」
「そういえばお兄さんはそれぞれの項目で激しくばらつきがあるとかで、戦闘技術を考慮したうえで
SS−だって言ってたような・・・」
 ティアナのを見る目が変わっていた。
 この人に師事すればもっと上にいけるのでは・・・そんなことすら考えていた。
「あれ?」
「どうしたのスバル?」
 スバルが遥か高空を見ながら疑問の声を上げる。
「あそこ・・・ほらなんか魔法陣が見える・・・」
 スバルが指差した場所はを挟んで更に向こう。
 今戦っている隊長たちやとも違う魔力光が見えていた。

 ヴィータと打ち合っていたが視界の端に見覚えのある青白い魔力光を捉えた。
「―――ヴィータストップ! あの魔力光って!」
「クロノの奴じゃねーのか!? っていうかなんでここに!?」
 そして気付く。
 あの魔法はクロノの最強の魔法スティンガーブレイド・エクスキューションシフト。
 しかも自分に向いている。
 は即座に射線軸から離れようとするが―――踏みとどまる。
(後ろに新人達が! ダメージを与えすぎたせいか回避行動がとれていない!)
 身動きがとれず見ているだけの新人達にあせりを感じながらは迎撃準備に入った。
 遠目に見て非常に分かりづらいのだが、は直感していた。
 ―――あれは殺傷設定だ―――
「あの妹莫迦(シスコン)ここで俺を亡き者にするつもりか!」
 発射された魔力の剣を迎撃するためにも魔法を放つ。
「咆えろ虎月!」
『SONIC HOWL!』
 突き出された刀から放たれた破壊振動波が魔力の剣を破壊していくが、それでもかなりの量の剣が
めがけて降ってくる。
 もう一度放とうとしたところで、
「おらああああっ!!!!」
 ヴィータが小さな鉄球を幾つも打ち放ち剣を迎撃する。
「下がってろ! の薄い防御じゃひとたまりもねえ!」
「下がれば後ろの連中が傷を負う! 連中を潰す訳にはいかん!」
「っ!! 畜生! あの野郎ぶん殴ってやる!」
 二人は剣を迎撃するも、いくつかの剣が目前まで迫ってきていた。
「このおっ!」
 ヴィータがバリアを張るが、よりによってバリアを貫き体に刺さってから―――剣が爆発した。
「うああああああ!!!」
「ヴィータ!」
 が可能な限り甲冑の強度を上げ、傷ついたヴィータを抱えて防御しようとするが、
その防御も意味を成さず剣が直撃炸裂し、とヴィータは地上へと堕ちて行った・・・

 地上からそれを見ていたフォワード陣は凍りついた。
 彼女達には見えていたのだ。
 血塗れになって地に堕ちる二人の姿を・・・
「おにー・・・ちゃん・・・?」
「うそ・・・これって・・・模擬戦でしょ・・・?」
 呆然と言葉を発するが、そんな場合ではないとすぐに立ち直り、落ちた二人の元に向かう。
 そこには・・・治療と防護の複合結界に包まれた血塗れのとヴィータがいた。
「だ、だいじょうぶ・・・ですか?」
「キャ、キャロ・・・明らかに大丈夫じゃあ・・・」
 エリオとキャロが声をかけるが二人は身じろぎもしない。
 ヴィータは結構な深手を負って意識を失っており、はヴィータを抱きしめたまま空中のクロノ
を睨みつけていた。
「二人とも大丈夫!? 生きてる!?」
「シャマル先生!」
「とーさま! ヴィータちゃん! 御無事ですか!?」
「リイン曹長も!」
 非常事態のため救護班として待機していた二人が駆けつけてきた。
「シャマルちゃん! すぐに治療をするです!」
「わかってるわリインちゃん! ・・・癒しの風よ!」
 シャマルの治癒魔法によって瞬く間に傷が癒えていく。
 ヴィータもかすかに意識を取り戻した。
「大丈夫ですか?」
「・・・そう見えるんなら眼科へ行け」
「あたしは、表面的には治ってるけどダメージは残ってる・・・」
 ヴィータはあの状態で更にをかばっており、は比較的軽傷だった。
 ・・・・あくまでヴィータに比べてではあるが。
「むこうは隊長たちがクロノ提督を説教中らしいわね」
「・・・あの、魔法が飛び交っているように見えるのは・・・」
「気のせいではないわね」
 クロノVS隊長陣−1が行われていた。
 口々にクロノを罵りつつ過剰なまでの攻撃が行われているがクロノもさるもの。
 紙一重で捌ききっている。
「あたしも参加する・・・」
「ヴィータ副隊長!? 無茶です!」
「行くんだよ・・・あたしとなのはの教え子を巻き込もうとしたあの馬鹿を、を潰そうとしたあいつを
ぶん殴りになあっ!」
「ヴィータ・・・副隊長・・・」
 フォワード陣は自分たちのことを考えてくれている自分の上司に感動していた。
 だが、ヴィータは懸命に立ち上がろうとするが最早体が限界なのか立ち上がることが出来ない。
 そして倒れそうになったヴィータを、は優しく抱きとめた。
・・・」
「ヴィータ。俺が行く。死なない程度にたこ殴りにしてくる。だから無理はしないでくれ・・・」
「・・・・・・・ああ、あとは・・・任せた・・・」
「ああ、ゆっくり休んでくれ」
 力を抜いてに身を任せたヴィータの頬に軽くキスをしてから、は立ち上がった。
「シャマル。新人達にも治療を」
「ええ」
「とーさま・・・」
 心配するリインの視線の先で、は―――哂っていた。

「クロノオオオオオオ!!!」
「いくらなんでもやっていい事と悪い事があるよ!!」
「私らの婚約者を傷つけ、部下達を巻き込もうとしたんや! 絶対許さへんで!!」
 なのはたちは怒っていた。
 無理も無い、それだけのことをやっているのだこのシスコンは・・・
 なお、そのシスコンの言い分はというと、
「一矢報いただけじゃないか! それに個人的に色々と恨みつらみが・・・!」
 一矢報いたにしては卑怯なやり口である。
「可愛がっている妹を盗られた腹いせでしょうが! 一度は認めたのなら受け入れるべきだ!」
「その妹に力で脅されて仕方なくだったんだよ!」
 その上かなり情けなかった・・・
 彼女達の戦いが佳境に差し掛かった時、彼女達は非常に凶悪な悪寒を覚えた。
 ―――ふふふ・・・はははははは・・・ハハハハハハハハハ!!!!―――
 聞き覚えのある身も心も竦ませるような哄笑が響き渡る。
 かつての、嫌と言うほどに覚えがあるあの壮絶な悪寒が彼女達の・・・特にクロノの背中を駆け抜けた。
「・・・・ま、ままままままさか・・・!」
「こここここここれは・・・・!」
 彼女達は呂律すら満足に回っていなかった。
 全員が地上を見下ろして、失神しかける。
 特にクロノは呼吸困難を起こしそうになっていた。
 そこには―――あの頃よりもパワーアップしなさった修羅様が御降臨なさられていた。
 周りのフォワード陣やギンガ、リインもシャマルも腰を抜かしてへたり込んでいる。
 ―――なぜか真っ赤な顔で頬を押さえて呆けているヴィータがいるのが非常にミスマッチだ―――
「ハハハハハハ! アムルテン・フォルムドライ! ウォーカーフルドライブ!」
 手甲型アームドデバイスアムルテンUの甲から魔力で出来た鋭い爪が現れる。
「カートリッジフルロード! タイガーランページ・オーバーブレイク!!!!」
 左右8発総数16発のカートリッジをロードし、がその場から消えた。
 一瞬後にはクロノの目前に出現し、強烈無比な蹴りを叩き込む!
 その直後にはウォーカーで不可視の足場を作り、神速の二段がけを発動!
 吹き飛んだクロノを追うどころか先回りして、今度は裏拳を叩き込んだ。
 吹き飛ぶクロノ、先回りして攻撃を仕掛ける
 三十秒にも満たない間に数十回も行われ、とどめ―――その爪で×字に引き裂き、更にドリル状に変えた
右の手甲を叩き込みそのまま地面に叩き付け、後を追う様に発生した衝撃波がクロノを更に打ちのめす。
 その惨劇に見ていた者全てがクロノの冥福を祈っていた。


 誰もがクロノの死を予感したが、どっこいクロノは生きていた。
 その理由は非殺傷設定と、ヴィータと交わした死なない程度にたこ殴りという約束を
守るための神業的で絶妙な手加減ゆえだった。
「い、いっそ殺せぇ・・・」
「そうはいかんさ。―――ああエイミィさん? お宅の旦那が喧嘩売ってきてこのざまなんだが」
『・・・ごめんね君。うちの宿六は帰ってきたらお義母さまと一緒に説教しておくから』
「え、エイミィ・・・・」
「さて・・・」
 ある意味死刑宣告を受け真っ白になったクロノは放って置いて、は殺気を隠さないままに新人達に向き直る。
 新人達は完全にビビリながらもから目をそらさなかった。
 ――――目をそらしたらその瞬間に殺されそうだと思ったのはスバルだけではない―――
「丁度いい。俺のプレッシャーを受けている状態で少しやり合ってみようか」
「む、無理! 絶対無理ぃぃぃぃ!!!」
 は遠くをちらりと睨み、特大の針、いや槍を作り出して睨んだ方向へ投擲。
 一瞬後、凄まじい爆音が轟く。―――まるで見せしめのように。
「ああ、拒否権は無いからな」
「「「「「――――――――!!!!!!」」」」」
 彼女達の悲鳴は音にすらならなかった。


 まあ結論から言うと、彼女達は見事に生き残った。
 死の恐怖を感じて生存本能が働いたらしく恐怖を乗り越えて全員がパワーアップしていた。
 スバルとギンガは基礎能力が上がっており、一瞬ではあるもののに捉えられないほどの高速戦闘を
やってのけた。その際にの愛刀である虎月を二人がかりで破壊している。その直後に吼破で撃墜されていたが。
 ティアナは苦手だった魔力弾の弾体制御が向上しており、百に近い数の魔力弾を完全に制御した挙句
今まで使えなかった砲撃魔法すら同時に行使してみせた。しかも一発一発の強度がバリアブルショット超えており
虎月を失ったでは打ち砕く事が出来なかった。もっとも全弾旅の扉で送り返されていたが・・・
 エリオはフェイト並の電撃を行使した。それと共に直線での速さならばフェイトに届くほどに速くなり
でもかすり傷程度ではあるが傷を負った。もっともあっさり捕まって海に叩き込まれていた。
 キャロはフリードに竜魂召喚を使ったのだが、なんとフリードがパワーアップ。その巨体に鎧を身に纏って出現し、
その火力までもが上がっていた。しかし尻尾を掴まれてのジャイアントスイング後にエリオと同じ末路を辿っていた。
 キャロは途中で脱出し、に向かって不破邸のキャロ専用武器庫にある武器を無差別召喚し攻撃。
 その光景はまさにゲー○オ○バ○ロンだった。もっとも、全部手で受け止めて投げ返されていたが。


「わ、私達・・・生きて・・・る?」
「な、なんとか・・・生きてます・・・」
「・・・い、生きてるって・・・すばらしい・・・!」
 彼女達は自分たちがちゃんと生きている事を実感し物凄く感動していた。
 つい先ほどまで生きた心地がしなかっただけに感動もひとしおだった。
 その姿が無残なまでにボロボロなのは言うまでも無い。
「大幅にパワーアップしたね・・・」
「潜在能力が開花したと言うべきなのだろうな・・・」
 フェイトとシグナムがフォワード陣を極力視界に収めず会話をしていた。
 アノ状態のの恐ろしさを良く知っているだけに生き残った彼女達に尊敬すら抱きかけていたりする。
「なあ、ちょっとやりすぎやないん?」
「問題ないだろう。そもそもお前がリクエストしたんだぞ?」
 今回の模擬戦は元々はやてが仕組んだもので、新人達に修羅場の空気を感じさせて欲しいとお願いしたものだった。
 そこでは適度に死の恐怖を感じさせつつ手加減したのだ。クロノの乱入は予定外だったが・・・
「なのはさん・・・」
「何? ティアナ」
「あたし前に死ぬ気でやらなきゃ強くなれないって言ったじゃないですか・・・」
「・・・そうだね。で、感想は?」
「強くなれはしましたけど・・・二度とやりたくないです」
 ティアナは以前言った事をそのまま体験して、馬鹿なことを言ったと本気で後悔していた。
 なんせ本当に殺されると思ったのだ。その恐怖は忘れられない。
 もし過去に戻れたら彼女は以前の自分をいさめるだろう。
 死ぬ気になる事がどんなものなのかを力説して・・・
「あ、そうだ。ティアナ。クロスミラージュのダガーモードを使いこなすために
君に指導を願うように。アタラクシアに出向して訓練を受けてきてね?」
 なのはの刺した止めにより、ティアナは力なく倒れこんだのだった。

「はい二人とも。大体一週間は絶対安静ね」
「「りょ〜か〜い・・・」」
 とヴィータの重傷組みは六課の医務室で入院宣告を受けた。
 クロノの放ったアレは殺傷設定であり物理破壊力を嫌と言うほど込められていた為
その直撃を受けた二人は見た目も中身もボロボロで、内蔵にまで少し傷がはいっていた。
「フォワードの皆は一見ボロボロだけどかすり傷しかないから心配ないわね」
「アレだけやってその程度で済むあたり手加減の絶妙さが窺い知れるな」
 フォワード陣は肉体よりも精神的な疲労が深く既に各自の部屋に引き上げている。
 今頃、疲れを癒すために夢を見ないほどに爆睡しているだろう。
「クロノも似たり寄ったりな状態だったね」
「そうだね。あの後普通に船に帰っていったし」
 アレだけボコられたにもかかわらず軽い治癒魔法だけで全快したクロノはさっさと
クラウディアに帰っていった。暫くは自宅に近寄らないものと思われる。
 その行動が更に自分の首を更に絞めることになるということには一切気が付いていない。
「ぱぱ、ヴィータおねえちゃん、だいじょうぶ?」
「静かにしていれば治るよ。治ったら遊ぼうな?」
「うん! ヴィータおねえちゃんは?」
「あたしも大丈夫だ。治ったらと一緒に遊んでやるからな」
「うん! なおるまでまってるね!」
 大好きなパパが怪我をしたと聞いて涙目で医務室にやってきたヴィヴィオだったが、
大丈夫だと笑っていたので安心してなのはのところに帰っていった。
「で、大丈夫なのか?」
「あたしの脂汗が見えねーってのかシグナム?」
「顔で笑って心で泣くのが男と、そして父親というものだ」
 しっかりとやせ我慢中の二人だった。
 なにせシャマルが薬を間違えているのだ。
 痛み止めと感覚を鋭敏にする薬(シャマルの手作り・用途不明)とを間違えられているため
とヴィータは声に出さないものの激痛をこらえていた。
 誰もそれに、間違った本人も含めて気付いていないが・・・・・・
「暫く安静にしててね?」
「「了解・・・」」
 シャマルを信用している所為で無意味に激痛を味わう二人だった。




―おまけ が投擲した槍の着弾地点にて―

「み、みんな・・・生きているか? とりあえず姉は無事だが・・・」
「な、なんとか・・・生きてるっす」
 そこにいたのはナンバーズのチンク・セイン・ノーヴェ・ディエチ・ウエンディの5人だった。
 実は彼女達、潜入任務中のドゥーエからこの模擬戦のことを聞いて敵情視察に来ていたのだった。
「なんなんっすかあの化け物は!」
「彼は数キロ離れた私たちに気づいただけでなく攻撃してきた・・・」
 彼女達は数キロ離れていながらも自分たちを圧倒するの殺気に恐れをなしていた。
 そしてがあの時槍を投げたのは見せしめの為ではなく邪魔な虫を排除しようとしてのことだった。
「なあ、今思ったんだけどさ・・・」
「ん? なにを?」
 ノーヴェがいいにくそうな顔で口ごもるのをセインが促す。
「管理局を潰せたとしても・・・その後にはあいつが待ってるんじゃねえの?」
 ――――時が凍った。
 機人の少女達はその光景を想像し、真っ青になっている。
 セインとディエチにいたってはガタガタと震えていた。
 過去に惨敗している彼女たちからすれば恐怖以外の何者でもないだろう。
 彼女達の脳裏をよぎったのは―――筆舌に尽くしがたい惨劇だった。
 ―――もし管理局を潰し、なのはたちを捕えるような事があれば高確率で実現するのは言うまでも無い―――
「い、いやだ! あたし死にたくないよっ!」
「私だって同じだ!・・・で、どうする?」
「ど、どうするったって・・・」
「このままドクターについていけば高確率であの男と同じ道をたどるぞ?」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」」」」
 チンクの言葉にその場の全員の顔色が真っ青を通り超えて真っ白になっていた。
 言っているチンクにいたっては土気色っぽくなっている。
 あの男とはもちろんクロノだ。
 超高速で吹っ飛ばされ続けているのを目撃している。
「・・・・・・・・裏切っちゃう?」
「・・・喧嘩を売ってわざと負けて捕まるという手もあるな。一か八かだが」
 彼女達は自分の身の安全とスカリエッティへの忠誠を秤に掛けて・・・身の安全を取った。
「とりあえず秘密裏に彼に接触しよう。全てはそこからだ」
「「「「うん!!」」」」
 スカリエッティやの知らぬところで寝返りフラグが立ちつつあった。
 彼女達は今後どうなるのだろうか・・・・・・・・





あとがき
修羅降臨再び。
今回の主な犠牲者はクロノとフォワード一同+ギンガ。
でも子供たちは恐怖を乗り越えてパワーアップしました。
その辺りは逃げる事しか出来なかったなのは達より偉いかもしれませんね。
本人達は大分手加減されていた事を知りません。アレは序の口に過ぎなかったり・・・
ナンバーズの一部(比較的性格の丸い子達)による寝返りフラグが立ちつつあります。
というか自分的にお気に入りの子達なんですが・・・
ああそうそう、クアットロはだいっきらいです。
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