「今日から一緒に勉強をする事になった御影 灯也君だ」
「よろしくお願いします」
「「「「「「ええええぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!男の子ぉぉぉぉぉーーーー!?」」」」」」



私は釘宮円。中学2年生。
このクラスに急に転校生が来ると言う話だったんだけど。
驚いた・・・まさか男の子が女子校に転校してくるなんて!
でも、如何してなんだろう。
あ、朝倉の目が輝いている・・・・
「質問してよろしいでしょうか」
いんちょが先生に質問する。
「なぜ殿方である御影さんが女子校であるここに転校するのですか」
「もっともな質問だね。理由は君たちに男と言うものに慣れさせるという目的があるんだ」
まあ女の子しかいなかったら、そう言う危惧も出るかなぁ。
御影君も発言するようだ。
「自分が聞いた限り、転校時の手続きの不手際で先の理由は後付けの理由なんだけど」
そ、そうなんだ。
なんか皆も納得したような感じ・・・・
「まぁ、自分が感じた限りその方が面白そうだからと言う学園長の道楽なんだと思うよ?」
・・・・・・あぁ学園長ならやりかねない・・・・
他の面々もさもありなんという顔をしている。
「ウチのおじいちゃんが迷惑掛けてごめんなぁ。後で凹ましとくから」
「いや、気にしなくても。というか凹ますって何を・・」
このか、恐ろしい子・・・
「それじゃあ、残りの時間は御影君への質問タイムとしようか」
朝倉他多数の目が光ったような気がする。
そうして、尋問に近い質問タイムの幕が開けた。



そんなこんなで色々あって今日はもう放課後。
御影君ってなかなかいい男だと思うなぁ。
家事全般得意だって言ってたし、礼儀正しいし、顔もまぁ 美形ってわけじゃないけどなかなかいい感じだし。
うん、好感が持てるよね。
朝倉にあれこれ聞かれた所為で憔悴しきってたけど。
「御影さん、少し付いてきてくれないか」
桜咲さん?何か用でもあるのかな。
「なに、時間はとらせないよ」
龍宮さんも?
「いいけど、できれば手早くね。まだ日用品が揃ってないんで 買い揃えないといけないんだけど」
付いて行くんだ。なんか気になるなぁ。
「円?部活行くよー」
「ごめん先行っててー!」
「分かったー!」
よし、こっそり3人に付いて行こう。


そして、私は、社会の裏側を、もう一つの現実を見る事になる。



校舎裏に呼び出されて・・・
「御影灯也、貴様何者だ。西からの刺客か?」
は?
ちょっと待て、なに?西?というか刺客って?
「待て、ちょっと待て。何が何やら話が見えない」
「とぼけるなっ!その強大な魔力、貴様陰陽師だろう!」
ああ?
「だから待てって!魔力ってしかも陰陽師って」
「問答無用!!」
桜咲が持っている竹刀袋から白刃が閃く!
真剣かいっ!!
龍宮は何も言わずに木に寄りかかって見物している。
桜咲の刀が自分に向かって振り下ろされる。
全力でバック!ぎりぎりで回避、振りぬいた刀が跳ね上がる!
切り返しが速い!回避できない!
ザシュッ!!
「あっぐ、くうぅぅ」
くそっ、斬られた!痛いというより熱い・・
ちぃっ、本気で殺す気か!
「ふん、お嬢様に危害を加える者を麻帆良にいさせるわけにはいかない! 此処で消えろ!!」
膝を着いた俺の首に刀が・・・・・っ!
ギィンッッ!
目の前に見えるのは長い綺麗な金髪、その持ち主エヴァンジェリンが 扇をもって俺の命を奪うはずの刃を受け止めていた。
「エ、エヴァンジェリンさん!なぜ止めるのですか!その男は!」
「御影は一般人だ。魔法だの何だのとは一切関係が無い」
「そうなのか?だがその魔力は・・・」
「それは僕から説明しようか」
高畑先生?
「御影君!大丈夫なの!?」
なぜか釘宮さんも駆け寄ってきた。
「釘宮さん?まぁ・・この状態で大丈夫とは・・・言えない・・・」
くうっ!喋ると痛みが・・・
「無理をするな。喋るだけでも辛いだろう」
「説明よりも先に治療だな。龍宮君、シスターシャークティーを 呼んで来てくれないか?」
「わかった」
あぁ、なんか目の前が暗くなりつつあるなぁ・・・・
気を失いつつ軽く説明されているらしい桜咲を見ると・・・・
顔色が蒼白を通り越して土気色っぽくなっていた・・・・・


「申し訳有りませんでしたっ!」
桜咲さんが土下座してる。
まあ、当然だろうね。
勘違い、というよりも早とちりで御影君を殺しかけたんだし。
「速めに連絡しなかった僕らにも責任はあるだろうけど、 これはさすがに、庇いきれないかも・・・」
御影君は気を失って高畑先生に保健室まで運び込まれ、 シスターに治療を受けている。
「まったく。近衛木乃香がそれほどまで大事なのだろうが、相手が 何者なのかも調べずに斬りかかるなど阿呆のすることだぞ」
あきれ返ったようにエヴァちゃんが言う。
「そんな血染めの加護を与えてあの子が喜ぶかなぁ」
えっ!
「御影君、気が付いたの?」
「心配掛けて申し訳ない」
そんな状況じゃないって・・・
「実を言うと、すぐに気が付いたんだよね。痛みで」
「無理をしてはいけませんよ。まだ完全に治りきっていませんから」
「ありがとうございます。シスター」
「で、聞いていたんだろう?」
え?
「魔法の事と俺がかなりの魔力を持っている事、そして魔力を悪用されない 為にこの麻帆良学園に来るようになり、護衛の為に2-Aに編入になった事」
「ほぼ全部か?以外に狸だな」
「結構あっさり受け入れるんだね。私なんかまだ半信半疑だよ?」
「そうじゃないと色々説明が付かない事情があるからね」
そっか・・・・
御影君しか知らないこともあるからか・・
「釘宮さんもこっち側?」
「彼女は一般人だ」
「お前が呼び出されたのが気になって付いて来ていたらしい」
魔法云々聞かされたけどまだ状況をよく飲み込めて無いんだよね・・・
「それで、お前は如何したい?御影」
「・・・最低限自分の身を守れるだけの技術と知識が欲しいかな」
「ふむ、力はあるんだからあとはそれが必要だな」
そうだよね、狙われるかもしれないんだよね。
そこで御影君は意地悪そうな顔で桜咲を見て、
「またこんな事があると困るしねぇ?」
「本当に申し訳有りませんでした!!!」
あははは、御影君いじめっこだー。
そこでエヴァちゃんがこう話を切り出した。
「御影、私が魔法を教えてやろうか?」
「エ、エヴァンジェリン突然なにを」
「私は弟子などとるつもりは無かったが、お前は別だ。メリットもあるしな」
「うまく育てばかなりの戦力になる、か?」
「それもある。こう見えて私は吸血鬼だ。お前の血を吸えばかなりの魔力を補給できる」
きゅ、吸血鬼ぃ!!!
御影君も目を見開いてびっくりしてる。
「だが、エヴァンジェリンそれは・・・・」
「私はこの身に掛けられた忌々しい呪いによって大部分の力を抑えられている。 このままでは、警備の仕事も満足にこなせんぞ?」
なんで警備?
桜咲さんが事情を知らない私たちに、
「エヴァンジェリンさんは呪いで封じられ、強制的に麻帆良全体の警備員をさせられているのです」
「ああ、だから此処に来たとき迷ってる俺に接触してきたのか」
「もしかして昨日学校にいなかったときに?」
御影君はそれを肯定する。
「ならお願いするよ。本人の自信と言うかプライドの高さからかなり強力な 魔法使いでもあるんだろうし。それだけじゃない気もするしね」
「それだけじゃない?」
どうして?
「あの時桜咲の剣を受け止めたのは鉄扇だよな」
「その通りだ。良く分かったな。武術でもやっているのか?」
「経験は無いけど、古い知り合いが武術マニアでね。色々と薀蓄を 聞かされたんだよ。総合すると100時間分くらい。」
さすがに皆の顔が引きつる。
良く耐えたね御影君・・・
「結構な使い手だろうなと思ったんだよ。昔鉄扇を使う流派を聞いた覚えがあるし」
な、なるほど。
「で、釘宮さんはどうするんだ?」
「わ、私?」
皆の視線が集中する。
「そうだな。最悪この事を忘れてもらうことになるが」
わ、忘れるって・・・
「記憶を操作すると言っているんだ」
「そんな!」
「こちらの関係者になるとしてもどうするか・・・」
「彼女に魔法の才能は無いのか?」
私に何が出来るんだろう・・・
「魔力はあるようだが大した物ではないな。むしろ身体能力が高いから 従者向きだろう」
「従者?」
「今では魔法使いのパートナーと言う立場だな。主に魔法使いが後衛、パートナーが前衛を勤めている」
どうやら魔法使いと従者が一組で行動するのが常識らしい。
「その・・・御影君は魔法使いになるんだよね?」
「まあ仕方ない事だしねぇ・・・」
ああ!なんか御影君が遠い目に!
「だ、だったら私がパートナーになるよ!」



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