管理局である催しがあった。
簡単なアンケートだったのだが、それがある少女達に
一生モノの決断をさせるまさにターニングポイントになるとは
誰も想像しえなかっただろう。
これは優秀すぎた少女達の悲劇のお話である。



彼女達の人気



 フェイトは仕事を終えて副官のシャーリーと共に本局内の食堂に向かっていた。
「はあ・・・とにかく疲れる事件だった・・・」
「そうですねぇ・・・早く食べてお風呂入って寝ちゃいましょう・・・」
 二人とも疲れ切っている様子だった。
 ちなみに事件はストーカー犯罪。しかも男が男に、嫌がらせではなく恋するがゆえに起こした
事件であり、どっちも結構な美形であったそうだ。
「同性愛なんてもう見たくないよう・・・」
「ガチでしたからねぇ・・・しかも最後は和解と言うか付き合うことになってましたし・・・」
 ごくノーマルな感性を持つ二人には色々とつらい事件のようだった。
 二人は事件のことを可及的速やかに忘れられるように美味しいものでも食べに行こうとしたが、
途中の廊下に張られている掲示板に人が群がっているのを見て足を止めた。
「なんなのかな?」
「ああ、この間アンケートが送られてきましたよね? あれの結果発表じゃないですか?」
 二人は自分達も書いた事の結果を知るために近づいていくと、途中ではやてとなのはに出会った。
「あ、フェイトちゃんや」
「あはは。なんか久しぶりだね。シャーリーも久しぶり」
「お久しぶりですお二人とも」
「そうだねなのは。はやて。アンケートの結果を見に来たの?」
「そや。まあ気になってしもたさかいな」
「これから見るところだよ」
 4人はその結果を見ていく。
「えっと。結婚したい男性局員ベスト10。一位は――――クロノ・ハラオウン」
「ほー。さすがエリート、もてとるなあ」
「さすがですねぇ。まあ結婚したら玉の輿ですし?」
「あはは、そうだね」
「次はその逆、結婚したくない男性局員ベスト10。一位は――――レジアス・ゲイズ」
「「「ああ、たしかに・・・」」」
「納得なんだね・・・」
 いやみで強引な中年は皆に嫌われやすいのだ。
 なおこの結果を見た本人はコメント欄に自分の娘の字を発見し、ぼろくそに書かれていたことに
傷つき地上本部の部屋から涙を流しながら夕日を見ていたそうだ。
 中年の心は意外と繊細なのである。
 それを見た娘のオーリスはさもうざそうにしていたそうだが、彼は一切気付かなかったらしい。
 仕事上では尊敬しているが、プライベートでは少々思うところがあるようである。

 閑話休題

「さて、今度は・・・結婚したい女性局員ベスト10」
「ん〜。なんか緊張するなぁ」
「さっさと見ちゃおう。おなかすいてきたし・・・」
「そうやね。一位は――――カリム・グラシア。・・・はい?」
「その人って教会騎士団の人じゃあ・・・」
「ま、まあ一応管理局にも所属しとるしなあ・・・」
 その後も10位まで見るが・・・彼女達の名前は発見できなかった。
「ないね・・・なんかショック・・・」
「そうだね・・・」
 嫌な予感がしてきた四人はおそるおそる最後のアンケートを見る。
「・・・結婚したくない女性局員ベスト10」
「一位は――――八神はやて」
「なんでやのおおおおおおおっ!」
 はやて思わず絶叫。
「お、落ち着いてはやて!」
「なんや? 闇の書事件のがまだ尾をひいとるんか!?」
「お、落ち着いてくださいはやてさん!」
「二位は――――高町なのは」
「なんで!? 自分で言うのもなんだけど器量はいい方だよ!?」
「コメントは後で見よう! 何人か集めて!」
「三位は―――――フェイト・T・ハラオウン」
「なんでですか!?」
「しゃ、シャーリー?」
「フェイトさんはこんなにも素晴らしい女性なのに!?」
 フェイトを除く3人はひとしきり暴れまわり、フェイトの私室に集まり(一番近かったので)コメントを見る事にした。


「さて、パンドラの箱を開けようか」
「「うん!」」
 フェイトの私室には三人娘にシャーリー、ヴォルケンリッター(−犬)、エイミィにリンディがいた。
「しかし・・・ここの男どもは見る目が無いのか・・・」
「そうとも限らねーんじゃねーの?」
「しかしまあ、コメントも気になるわね」
「むしろそれに全てが書かれているでしょうしちゃちゃっと見ちゃいましょう」

―――八神はやてコメント数一位――――

【デートに誘おうとしたら彼女の騎士達にぼこられました。怖くて近づけません】(同内容多数)

「へぇ・・・」
 はやての押し殺したような声に守護騎士たちはびくっと肩を震わせる。
「そ、その・・・」
「は、はやてと一緒になるのはだ! アタシはあいつ以外は認めねー!」
「そ、その通りだ。奴以外にふさわしい男はいない!」
 はやてはじとっとした目で騎士達を見ていたが、ならば良いというので許しておいた。

――――八神はやてコメント数二位――――

【正直優秀すぎます。高嶺の花過ぎて声をかけるのも恐れ多いです】(同内容多数)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 はやては沈黙している。
「どうしたのかしら・・・」
「なんか呟いてますね・・・」
 耳を澄ますと、
「この根性なしどもが、恐れ多い? 勝手に決め付けてくれて迷惑やわブツブツブツ・・・・」
「ほっとこう! うん!」
「そ、そうだね! そうしようか!」
 つぎ言ってみよう!

――――高町なのはコメント数一位――――

【あんな砲撃を使う相手に手を出す命知らずはいねえ】(同内容多数)

「レイジングハート セットアッ「待ってなのは!」ちっ・・・」
 いきなり砲撃準備に入ろうとするなのはを必死で止めるフェイト。
 他のメンバーは内容を聞いた瞬間に物陰に退避していた。

――――高町なのはコメント数二位――――

【エースオブエースに告白しても相手にされるなんてまったく思えません】(同内容多数)

「そんな事無いのに・・・」
「まあ好きだと言われて嫌がる人ってそうはいないよね」
 はやてと大体同じ理由だった。

――――フェイト・T・ハラオウンコメント数一位――――

【義兄のクロノ提督が過去何人かを血祭りに上げてました(血祭りにあいました)】(同内容多数)

「ふふふふふふふふ・・・おにいちゃんったら・・・」
「相変わらずシスコンだねぇ・・・」
「まったくあの子は・・・・」
 これも大体はやてと似た理由だった。

――――フェイト・T・ハラオウンコメント数二位――――

【美人オーラに気押されて話しかけられません】(同内容多数)

「えーっと・・・美人過ぎて近寄ってこれない?」
「フェイトちゃん美人さんだしねぇ」
「自分なんかじゃ釣り合いが取れないっていうのも多いみたいね」
「そんなの本人達が気にしなければいいだけなのに・・・」

結論

「なんというか・・・」
「好意的な意見も多いんだけど・・・」
「一部アレだけどな」
「周りが壁になってるっていうか・・・」
 なかなか結論が出せない3人。
 しかしリンディがあることを呟いてしまう。
「同期にこんな感じの人が居たんだけど、その人もこんな典型的な高嶺の花がお嫁さんに行き送れる事情
というか、その人未だに独身だったりするのよね・・・」
 三人が固まる。
 周りの皆があせり始め、とにかくこういう男なら大丈夫だと言う理想を話し始めた。
「えっと・・・まずそれぞれの周りの皆も認めてくれるような相手で・・・」
「この三人を纏めて倒せるような実力者で・・・」
「地位とか能力とかそういうのを取っ払って本人をちゃんと見てくれる相手が理想になる・・・と」
 その理想の男を思い浮かべると・・・全員の脳裏にある青年が浮かんできた。
「「「やっぱり(君)しかいない!!!」」」
 三人はそう叫んだ後、凄まじいスピードで彼の元へ行ってしまった。
 残されたものたちは件の青年を思い、
「まあ、なら慰めてくれるだろ」
「そうだね。いろんな意味で器がでっかいし」
「彼なら娘を預けられるわ」
 自分達の手に余ることはに全部丸投げするのであった。


 その頃、は自宅に届いたミッドチルダの行政府からの手紙に困惑していた。
 その内容は、
――――不破殿。この度ミッドチルダ行政府はあなた様の数々の功績を賞賛すると共に
いくつかの特権を認める事に相成りました。その旨をお伝えいたします。――――
 は今までの功績を思い出す。
 管理局の暗部の摘発に始まり、デバイス技術の向上、教育機関の建て直し、ミッドを含む複数の世界で
発生した伝染病の根絶、新規開発した医療機器による難病や死病の解明と治療法の確立。
 他にも家電製品の性能向上や環境問題への取り組みなど、恐ろしく多岐にわたっていた。
 どれもが自分が中心、または先頭に立って行った事であり、自分が立ち上げたシンクタンクの科学者達と
共に頭を悩ませたものだった。
「まあ、いいか。ところで特権とは何があるんだ?」
 はその資料を読み始める。

 ―――特権――――
 1・固定資産税など一部税金の免除。
 2・他世界への渡航の自由。
 3・次元航行艦の保有の権利。
 4・一夫多妻の許可(人数は問わない)
            ――――以上

「・・・・・・・・・・・・・・確かに特権だな」
 1に関してはありがたい。
 広大な土地を持つにとってこれはかなりの負担になっていたのだ。
 2は好きに地球やその他の世界にいけるというのは研究者としてはありがたい。
 その世界特有の鉱石なんかも多数あるためその採取が容易になる。
 3にしても同様のことが言える。
 そして・・・・4。
「いいのか? 本当にこんなの認めて」
 回りから嫉妬を買うのではないかと気にするが、やってきた事がことなので誰もが認めているので
特に問題なかったりするのだが、本人はこの辺のことは酷く無自覚であったりする。
「うん? 特権に対する義務もあるのか。まあそれもそうだろうな」

――――履行するべき義務――――
 1・弟子を取る事。
 2・後進の指導を行う事。
 3・優秀な後継者を作ること。
     ――――――――以上

「いや。1と2は同じ事じゃないのか?」
 思わずツッコミを入れるが部屋には誰もいない。
 そもそも既に弟子なら研究所の新人達に楽園付属の学園がある。
 3に関しては・・・・・
「まだまだ先の事だしなあ・・・」
 不破、現在17歳。気になる相手はいるがまだ彼女無しである。
 キスだけはやたら経験があるが・・・シグナムとかフェイトとかはやてとか。
 もっとも一方的にされる方なのが情けないやら・・・
 ちなみに初めての相手は酔っ払った桃子さんである。(確か小2の正月)
 その時キレた士郎にぶっ飛ばされて、その理不尽さに更にキレたにより高町家大乱闘が勃発したのだが
まあそれは昔の話だ。
 その時、警備システムのアラームがなった。


 の家に超スピードでやってきたフェイト・なのは・はやての三人娘。(フェイトが牽引した)
 侵入者かと思って迎撃準備に入っていたは武装を解除して3人を迎え入れた。
「・・・・・・で? 何のようだ?」
 玄関先に仕掛けていたトラップに掛かって身動きが取れなくなっている三人を見下ろしながら
疲れたように話しかけるが三人は聞いちゃいない。
 しっかりと意識を刈り取られていた。

「改めて聞くが・・・何のようだ?」
君。何もいわずに答えをちょうだい?」
「何の答えかいまいち分からんのだが・・・」
 事実説明もなしに答えをよこせと言われても何がなにやら。
 その時はやてが目ざとくテーブルの上にある書類に気付く。
 フェイトと二人で読み進めて行き、にやりと邪笑を浮かべる。
 壮絶に嫌な予感がしたはひそかにウォーカーを起動し逃げの体勢に入る。
君。大事な話があるんや」
「・・・・・・・・なんだ?」
 三人は顔を見合わせ、頷いて、
「「「私たちをお嫁に貰ってください!!!」」」
 いきなりそうのたまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
 予想外の言葉に呆然と言葉を漏らす
 そして今の彼女達は色々と普通ではなかった。
「今はいって言ったよね!」
「うん! 確かに聞いたで!!」
「これからもよろしくね、だ・ん・な・さ・ま(はあと)」
 は完璧に思考が停止しており彼女達が何を言っているのか認識できなかった。


 思考が正常に戻ったはそれぞれの家族を集めて家族会議を行ったが、
「「「「「すまん。貰ってやってくれ」」」」」
 と、彼女達の暴走ぶりに説得を断念したそれぞれの家族が揃って同じ答えを口にした。
「・・・・・・俺の意志はどこにあるんだ? いや、彼女達はむしろ好きではあるがこんな展開は・・・」
 その後、はまだ結婚は早いと主張し、何とか婚約で落ち着かせることに成功したそうな。





後書き
彼女達の管理局での評価の話。
そして主人公の受難。
いや受難といって良いやら・・・
怒涛の勢いで婚約が決まってしまいました。
すぐさま式を挙げそうな勢いだったのですが、今追っている事件(レリック事件)
を終わらせて落ち着いてからにしてくれと説得して婚約で治めました。
大乱闘の話は・・・読んでみたいですか?


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