初夏の爽やかな朝、なにかがのしかかるような重みを感じて目を覚ましたら、
「おはようございます! とーさま!」
とても可愛らしい幼女が満面の笑みを浮かべて挨拶してきました・・・


    誕生! リインフォースU


「ごめんなぁくん。いきなりで驚いたやろ?」
「いきなりにも程があるし、不法侵入だよなぁこれ・・・」
幼女をネコ掴み子猫の様に持ち上げ、部屋を出て居間に出たが見たものは・・・
エプロン姿で台所に立つ調理中のはやてだった。

とりあえず不法侵入に対するお小言が終わって・・・
「もう完成していたんだな。ユニゾンデバイスの管制人格」
件の幼女を眺めながら、というより現在の膝の上で上機嫌でTVを鑑賞中の
【彼女】を見て小さくため息を吐く。
今は妖精の様な小さいサイズになっているので特に重くは無い。
「完成してすぐにここに来たんや。くんに最初に見てもらいたかったし」
「それでこの時間か。徹夜だったよーだな」
「まあ苦労したんよ・・・わたしのリンカーコアをコピーしてそれを元に
この子を作ったから。まあ、一番難しいと思ってたとこはくんが解決してくれてたし。
この子は私の娘みたいなもんやね」
「その一番難しいデバイス本体を作成したのは俺なんで・・・・」
くんが父親やね」
どことなく嬉しそうに話すはやて。だが・・・
「俺まだ10歳なんだけどなぁ・・・・・・」
「わたしもや・・・・・」
自分たちで言っておいて複雑な気持ちになる。さもありなん。
「とーさま! リインはリインフォースUです! これからよろしくお願いしますです!」
「ああ、よろしく・・・」
リインの元気の良い自己紹介に思わず苦笑してしまった。

朝食が完成して、テーブルに料理を並べ始めた。
「さ、召し上がれ」
「いただきます」「いただきまーす」
3人での食事が始まり、まるで家族の団欒のような雰囲気になる。
「おいしーです! はやてちゃん!」
「ふふ、ありがとなリイン。くんは?」
「美味いな。ここ最近は自分で簡単なものを作るか店ものばかりだったからな」
「あかんでくん。ちゃんと栄養とらな成長せえへんよ?」
「大丈夫だ。少なくともクロノ(5歳年上)より背は高い」
「は、はははは・・・そ、そういやそうやなぁ」
少なくともクロノよりも頭半分は高い。
なおこれをクロノに言うと即座に氷漬けにされる危険があるので注意するように。
「ああ、こらリイン。口元がきたないぞ」
「あう・・・ごめんなさいとーさま・・・」
「ほら、顔をこっちに向けな」
「はいですぅ・・・・」
はリインの汚れた口元を拭う等かいがいしく世話をする。
その光景を見たはやては二人が親子にしか見えずに苦笑してしまう。
相も変わらず世話好きである。
「とりあえず、食べたらもう一眠りするから」
「へ? 寝不足なんか?」
「二度寝ですか? とーさま」
不思議そうに首をかしげる二人に、は心底疲れた顔で事情を話す。
「どこぞの将とどこぞの執務官候補生が模擬戦から殺し合い一歩手前に発展したらしくて
デバイスを中破させたんだよ。その修理と改造を本人達に依頼された」
「あはははは・・・後でお仕置きやね」
「それとどーいう関係があるんですか? 少し時間をもらえば・・・」
「仕事に影響するんで早いとこ直してくれとどこぞのチビ執務官に急かされてな。
三日間徹夜で5時前あたりまで改造作業に勤しんでたんだよ・・・」
「お、お疲れさまなのです・・・」
「わたしもリインが完成したの4時ごろやったからなぁ。・・・なあくんここで寝てもええ?」
「いいぞ。昼過ぎまで寝てしまおう。川の字で寝よーか?」
「うん!」「はいです!」
3人は食事後、リビングに寝る準備をしてリインをはさみ、川の字で昼寝に入った。


某所にて
「まさか局長までもが加担していたとはな・・・」
「管理局は芯から腐っていたと言うことですね」
「さて、証拠物件その他もろもろも掴んだ事ですし、そろそろ動きますか?」
「うむ、だが後は少し装備の問題がある。彼が設計したサポート用のデバイスが
まだ完成していない。あれがあるのとないのとでは大分違うからな」
「彼らが抵抗し反撃に出た場合、改造したモノやロストロギアが出てくる可能性がある、
と言うことですね?」
「うむ・・・すんなり行ってくれるといいのだが、今まで彼に対する行動が脅迫ではなく
完全に抹殺しようとするものばかりだったからな。用心に越したことは無い」
「はい。しかし・・・あの子に負担が掛かり過ぎな気がしますね」
「彼が囮になっていなかったらこうもすんなりとは行かなかったろうな。
だがそれももう少しだ」
「ええ。あと少しで管理局の闇を摘出できます」
「彼の方は急な仕事が入ったのでかなり弱ってますね。リーゼたちによる護衛を強化する
必要がありますが、彼の復調を待つのもそう時間はかからないでしょう」
「ふむ・・・ならば装備の充実を急がせつつ現状のまま待機だな」
「彼らの不正の証拠集めと情報収集は継続しておきます」
「では、各自頑張ってくれたまえ。今回の会合は解散する」
「「「「「「はっ!」」」」」」


再び家 昼過ぎ
「あう・・・なんだか入りづらい・・・」
「確かに。・・・しかし此処でこうしているわけにもいかんだろう」
「そうなんですけど・・・怒ってないかなぁ・・・」
フェイトとシグナムがデバイスの様子を見に家に訪れたが、
デバイスがこわれた理由が理由なので後ろめたいようだった。
「たまたま技術部に顔を出してたからつい頼んじゃったけど、その時は怒ってなかったよね」
「ああ、だが帰るときに遠目に見たシャマルがかなり不機嫌そうだったと言っていたからな・・・」
この二人は怒っているときのが心底苦手である。
色々と前科があるため強く出る事が出来ないのも一因だが、たまにを巻き込んでは
どこかしら怪我をさせる上に、現在はそれぞれのサポート用デバイスまで作ってもらったりしているので
なおさら頭が上がらないのである。
「・・・覚悟を決めるぞテスタロッサ」
「・・・はい、シグナム」
二人が家に入り、リビングに向かうと・・・リイン・・はやての順で
雑魚寝しており、しかもはやてとリインはの腕枕で眠っていた。
川の字だったのが小の字になっている。
シグナムは予想していない光景に固まるが、フェイトは・・・
「あ、いいなぁはやて。うらやましい・・・」
特に怒ってもいなかった。むしろ羨むだけである。
「こっちの子は誰なんだろう?」
「あ、ああ、そうだな・・・どこと無くリインフォースに似ているようだが・・・」
シグナムは自分がこういうことをやったときのフェイトの反応を思い出し、
その時とのあまりの違いに理不尽をなものを感じる。
「あ! そうか! 新しい夜天の書の管制人格だ!」
二人の会話で目が覚めたのか、リインが目を開け、二人を確認した。
「どちらさまですか〜? ・・・はっ、まさかどろぼうさんですか!?」
「は? いや・・・私たちは・・・」
「もんどーむよーなのです! ええ〜い!」
「ま、待ってぇ〜〜〜!!!」
何もいわずに入って来た=泥棒と判断したリインは二人に魔力弾を叩き込む。
はやてとの教育は着々と成果を挙げつつあった。
二人は大慌てで逃げ回るがリインはそれを許さない。
二人はとはやてが目を覚ましてくれる事を切に願いながら逃げ回った。

ところがどっこい二人はとっくに起きていた。
<どないするん? 止めよか?>
<もう少し放って置こうか。とりあえず溜まってる鬱憤をリインに晴らしてもらおう>
<部屋を破壊されへんようにこっそり結界張っとこか>
<頼んだ>
<頼まれました>
色々と工作をしつつちょっとした報復を開始する
だがは二人のデバイスの修理が完了していた事を失念していた。
リインが大慌てで戻ってくる。
「と、とーさま! あのどろぼうさんがデバイスを!」
「だから泥棒ではない! これは元々私のだ!」
! 早く起きて!」
その言葉と共になぜかプラズマランサーが飛んでくる!
逃げようとするが、リインが怯えて動く事が出来ない事を認識したは、
そのままリインの盾になり生身で直撃を食らった。
リインを抱きかかえながらも魔力ダメージと衝撃で吹き飛ばされ壁に激突する。
「とー・・・さま・・・?」
抱えられたままのリインが呆然と呟く。
そしてリインの手に温かい液体の感触が・・・
「あ・・・ああ・・・あああああああ・・・」
手だけではなく紅い液体がリインの体を染めていく。
リインは恐慌状態に陥り何も出来ない。
フェイトとシグナムはやばすぎる事態に大慌てで治療をしようとするが・・・
二人の後ろから不吉な音と共に魔力刃が突きつけられた。
「いくらなんでもやりすぎやろ・・・」
「は、はやて・・・その・・・」
「わ、私達は誤解を解こうと・・・」
二人ははやての方を向いて弁解を始める、が、その後ろでゆらりと影が動く。
フェイトは肩を握り砕かんとばかりに掴まれて硬直。
シグナムは腕を握り潰さんばかりに掴まれ硬直。
おそるおそる後ろを見ると・・・
「ハハハハハハハハ・・・イッペン・・・シンデミル?」
血塗れで良い感じに哂うの姿を見て、フェイトとシグナムは意識を失った。


更に某所にて
「まだあの小僧を始末できんのか!」
「申し訳ありません・・・奴はこちらの想像を超える使い手でありまして
刺客が次々と倒されているのです」
「ならば改造したものやロストロギアを使えばいいだろうが!」
「もしそれで倒されなどすれば一気に旗色が悪くなります。
あの少年は魔道技師としても一流以上の技術者です。そこから我等の事を
嗅ぎ付けかねません。もう少し冷静にお考えになってください」
「むう・・・せめてもの救いは奴が自衛以外の行動を起こさないことか・・・」
「これまで通り刺客を送るか、周辺ごと消し飛ばすかが最良とは行かなくても
一つの手段であることは確かです。」
「・・・倒された暗部の行方は?」
「依然判明していません。どこかに幽閉されていると見るのが無難でしょう」
「奴ならば亜空間でも作って隔離する道具ぐらいは作ってもおかしくはないしな・・・」
「奴本人が強いのもありますが隣にハラオウン提督が家族と共に住んでいるのがもっとも痛いですね。
彼らは揃ってAAA以上の魔道師。リンディ提督にいたっては・・・」
「SSランク・・・並の魔道師では歯が立たん。前線を退いているとはいえ嘗ての凄腕だ」
「彼らのいないところで狙うにしても遠距離狙撃で落とされてしまいますし・・・
正直打つ手がありません」
「仕方が無い・・・現状を維持しろ」
「はい。そのように伝えます」

の偽装工作に完全に嵌っている管理局の暗部。
彼らの命運が尽きるのはあと少し、秒読み段階に入っていた・・・・・・



三度 家 夜 夕飯時
「とーさま! とっても美味しいです!」
「リイン! その皿こっちに回してくれ!アタシまだ食べてねえ!」
「はいですヴィータちゃん!」
「うう、相変わらず私よりも料理上手・・・・」
「まあまあ、シャマルも大分上手になってるって」
「染み渡るな・・・・良い酒だ」
「ザフィーラ、そんなに気に入ったのか? まあ高い酒だしなぁ」
ヴォルケンリッターが合流し、
「・・・・なんか凄い複雑・・・」
「クロノ君。美味しい料理は美味しく食べなきゃ!」
「エイミィの言う通りよクロノ」
「はあぁぁぁぁ! 肉ぅぅぅぅ!」
「さすがは烏骨鶏。アルフが我を忘れているな」
ハラオウン家も一緒に食事中だった。
さて、食事に参加していない二人はというと・・・
「ほれほれ、おいしーぞこれ。たべねーのかシグナム?」
「ぐうぅぅぅぅ! ヴィータァ! くそっ! 体が動けば!」
「・・・・・まあ自業自得だな」
「ううううう・・・ごめんなさい、もうしません。だから何とかしてぇぇぇ・・・」
手足の関節を外されてリビングに放置されていた・・・

あの後はやてがの怪我を治し、色々と耐えられなくなったリインが失神し、
大慌てで介抱しながら血で汚れたリインの体を綺麗にし、散らかった部屋を掃除した。
それが終わってから二人が目を覚まし、逃げようとしたところを捕獲。
海鳴大学病院の銀髪で童顔で小柄な女医から習った整体術、通称地獄の整体術をもって
全身の関節を外し、そのまま放置したのだった。
なおこの後、骨をはめなおすと言う地獄が二人を待ち受けている。
ついでにリアルタイムでその光景を見た彼女らは皆この言葉を残している。
曰く「人間の体ってこんな風に曲がるんだ・・・」である。

その後双方の家族に連絡し、なのは達にも連絡して、リインフォースUのお披露目が行われたのだ。
その後、なのは達はそれぞれの家で食事があるため帰宅し、残りは家で夕飯をいただく事になり、
現在に至るのだった。
なおシグナムとフェイトはこの一件でリインに危険人物として半年以上も警戒される事になるが
まあ自業自得だろう。


リインからの一言
「とーさま! リインはとーさまの事が大好きです!」



後書き
リインの誕生と【彼ら】の現状。
本編よりもかなり早い段階で彼女が誕生しています。
なお、主人公が作ったサポート用デバイスとは各種単一特化型の機能を有したデバイスで、
技術を転用すれば医療用、主に体の機能に異常がある(盲目、隻腕等)を補助する義手などの
代わりになります。
フェイトには脆弱な装甲を補うシールド(出力はなのは並み)を、シグナムには一度に20人前後を
転送できる転移用のデバイスを持たせています。
なおこのデバイスは天才3人(ある意味三賢者)の開発したシステムにより、リンカーコアと同じで
周囲の魔力を吸収して使用が可能になるので使い方さえ分かれば誰でも使用可能です。

作者は原作(とらハ)の世界とアニメ(リリカル)の世界は少しの差異しかないという
解釈をしていますので、原作の登場人物も基本的に海鳴市で生活しています。
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