ある日、不破邸の研究室で仕事中のに手紙が来ているといわれ、仕事を一時中断してその手紙を見ていた。
「・・・・・・ホテルアグスタでのロストロギアのオークション・・・ねえ」
「ホテルのオーナーからの直々の招待状も同封されています。どうなさいますか?」
 は少し考え、
「行く事にしよう。正直興味は欠片も無いんだが、こういう付き合いも大事だしな」
「分かりました。お召し物等も準備しておきます」
「頼んだよアイン。・・・しかし、何なんだろうなこの妙な胸騒ぎは・・・」
 は何かの感が働いたのか、奇妙な胸騒ぎを覚えていた。
 



 死者との邂逅






オークション当日


 はホテルのロビーでVIP達と談笑していた。
 といってもほとんど身の無い話ばかりで大分飽きてきていた。
(・・・さっさと始まってもらえないものかねぇ・・・)
 元々興味など無い今回のオークションの開会時間が妙に伸びているのだ。
 何かあったのかと思い回りを見渡してみると・・・見覚えのある女性が3人ほど歩いていた。
(なのはにフェイトにはやて・・・。六課が来ているのか? しかし・・・なのはは髪を
下ろすと本当に桃子さんそっくりになるな・・・)
 将来性格までは似てくれるなよ、と心の中で切実に懇願する。にとって桃子は天敵だからだった。
 彼女らが喋っていない事で念話を使っていることに気付いたはすぐさま念話を傍受する。
(・・・・なるほど。ガジェットが来る可能性があるわけか)
 本当なら彼女達に挨拶する方がいいのだが・・・何も言わずに間近で見学させてもらう事にした。

「ん?」
「なのは? どうかしたの?」
「今誰か見覚えのある人がいたような・・・」
 なのははを見たような気がして周りを見るが、いない。
 こちらを見ている男性が一人近くにいるのだが、なのはは軽くスルーした。
「気のせいだったのかな・・・?」
「なのはちゃん、今は仕事中やで?」
「あはははは・・・ごめんなさい」

 オークション会場で始まりを待っていたのだが、外がにわかに騒がしくなった。
 会場の座席の端に座っていたは、丁度近くにいたオーナーに断り会場を抜け出して屋上に上がっていた。
「やってるな。シグナムにヴィータ、ザフィーラも? 六課の戦闘可能なメンバーが総出なのか」
 サーチャーを飛ばし、自分の周りにウィンドウを開いて戦闘が行われている地区を観察していた。
「新人達は・・・・・・まだまだだな。訓練も実戦経験もこれからまだ積んで行かないといけないな」
 その時、森の一角で召喚魔方陣が発動したのをは視認した。
 それと共にガジェットの動きがこれまでのものとは違うものになった。
「有人操作に切り替わった? さっきのでそういうものが召喚されたという事か?」
 動きが変わり、途端に劣勢に追い込まれていく六課フォワード陣。
「・・・・・・・・・おいおい。多少動きが変わっただけでそこまで苦戦するようなものか?」
 シグナムは剣を受け止められ若干動揺し、ヴィータは鉄球が避けられているのを見て歯噛みしている。
 そして新人達の前にガジェットが送り込まれ、エリオやキャロが交戦している。
 スバルとティアナは・・・スバルが囮になりティアナが撃つらしいが・・・・・・・
「・・・拙いな。倒せてはいるが・・・制御が甘い。あれではその内味方を撃つぞ」

「ああああああああああああっ!!」
 ティアナが魔力弾を撃ち続けている。ガジェットは次々倒されていくが、その時、弾が一発、逸れた。
 逸れた弾丸は真っ直ぐにスバルの元へ・・・・。
 ヴィータが気付いたが、間に合わない!
 が、・・・・スバルに直撃する直前、何かがティアナの魔力弾を貫き消滅させた。
 あまりに早かったために誰が何をやったか誰も気が付かなかった。ただ一人を除いて・・・

っ!? 何でここに!?>
<オークションの客の一人だ。外でドンパチやってるみたいだったんで心配になって見に来ていたんだ>
 ヴィータだけは気付いていた。ティアナに説教をした後、その視線は一瞬だけに向けられていた。
 は弓を構えて、彼女達を見ていた。
<なのは達も気付いていない。というより髪形変えて仕立ての良いタキシードを着ているだけなんだが
何故に気付いてくれないのか・・・・・・>
<あ〜〜〜・・・。まあ気にすんな。普段は髪を下ろしてるけど今日はオールバックだろ?
 なんかその、印象が違いすぎる。あたしでもアムルテンが無いと判別できねー>
 なのはが周りを見たとき、実は5Mも離れていなかったのだが普通にスルーされて若干へこんでいたりする。
<まあ、気付かなかったあいつらもあいつらなんで俺のことは他言無用な? 老舗の最高級のアイスと
俺の手作りのアイスとどっちが良い?>
<両方で!!>
<・・・・・・躊躇いもなく第三の選択肢を選ぶ辺り抜け目がないな。まあ良いだろう。後で六課に
ヴィータ宛で贈っておく>
<おっけー! 楽しみにしてるからな!>
 あいも変わらずアイス好きなヴィータに苦笑しながら、そういえばスバルもアイスが好物だったという
事を思い出し、苦笑が更に深くなった。
「あとでスバル宛でアイスでも送ってやるかね・・・ん?」
 の視界の端に黒い影が飛んでいくのが見えた。
 それが召喚師の手によるものである事を推測したは気配を消し、ノワールですらも感知できない程の
穏行でその影を追っていった。


 黒い影は一人の少女の手にあるグローブに付いた宝石の中に消えていった。
「ご苦労様・・・ガリュー・・・」
「用事は済んだ。あの玩具どもも全滅したようだ。さっさと退散しよう」
「うん・・・」
 少女は脱いでいたコートを再び纏い、そばにいた男性と共にその場を後にしようとして、
「動くな」
 背後から突きつけられた刃の感触に動きを止めた。
「・・・・・・・まさか、後ろを取られるとはな」
「・・・・どうするの? ゼスト・・・・?」
 その男―ゼスト―は冷や汗を流しながら何とか声を上げる。
 少女はごく普通にゼストにこの後どうするかを聞いていた。
「・・・・・・ゼスト・・・だと? まさかと思うがゼスト・グランガイツか?」
 背後の相手の言葉にゼストは驚く。
「俺を知っているのか?」
「クイント・ナカジマとメガーヌ・アルピーノの上司。レジアス・ゲイズの親友だった・・・死んだはずの男」
「・・・・・・よく知っているな。その通りだ」
 ゼストは後ろを振り返り、驚愕に目を見張った。
 後ろにいたのは、
「お前は・・・ナカジマが引き取った・・・!」
「ひさしぶり・・・と言うべきなんだろうね。・・・死者がここで何をしているんだ?
 それに、その子はまさか・・・!」
「・・・・色々とあったのだ。この子はお前も知っているだろう。メガーヌの娘、ルーテシアだ」
 とゼストは互いに驚いていた。そしてルーテシアも。
 は死んだと聞いていたはずの男が目の前にいることに。
 ゼストは学者になるつもりだと聞いていたはずのに背後を簡単に取られたことを。
 そしてルーテシアは、の声や姿に懐かしいものを感じて・・・。

「・・・・・・・そう・・・か・・・」
「気に病むな。お前はずっと探していてくれたのだろう?」
「それでも・・・この結果は辛すぎる・・・」
「・・・・・・・・・そうだな」
 たちは場所を替えて不破邸ででこれまでの事を話していた。
 ゼストとはテーブルを挟んで向かい合い、ソファに深く腰掛けていた。
 途中で合流した子悪魔風の小さな少女、融合騎アギトはから効率的なアウトフレームの拡大の仕方を教わり
ルーテシアと同じぐらいの背丈になってが作ったケーキを頬張っていた。
 なおこの方法はリイン用に開発した技術だがまだ彼女には教えてなかったりする。
「なあなあ。若旦那って呼んでいいか?」
「別に構わんよ。好きに呼んでくれアギト」
 アギトはあっさりとに懐いていた。
 最初はデバイスその他の研究者だと聞いて警戒していたが、にアギトとのユニゾンの適正があることに気付き、
さらにSS−という高レベルの騎士であるということを聞いた途端に態度を翻したのだった。
 そしてルーテシアはというと、
「これ・・・おいしい・・・」
 の膝の上でこれまた手作りのチョコレートケーキを食べていた。
「ところでルーテシア、そろそろの膝の上から退いた方がいいのではないか?」
「嫌・・・。なんだか、落ち着くから・・・」
 の膝の上が気に入ったらしい。も戯れで抱き上げて膝の上に乗せたのだが、何か記憶
に触れるものがあったらしい。
「昔こうやってお菓子を食べさせた事があったなあ・・・」
「それか・・・」
「多分それの所為だぜ若旦那」
 ケーキを食べ終わったルーテシアはにもたれかかっての顔を見ていた。
 相変わらず表情が読めないので何を考えているのか周囲は良くわかっていなかったが、は違った。
「・・・・・・・・晩御飯のリクエストか?」
「うん」
 の言葉に何を言っているのかと思った二人だが、間髪いれずに返答を返したルーテシアに思わず注目した。
「わ、若旦那・・・。ルールーが何言いたいのか分かったのか!?」
「まあな。昔もこんな感じだった・・・」
「言葉が少ない分目で語るのか・・・。いや読み取れるお前も大概だが・・・」
 母メガーヌを以ってして良く分からない子と言わしめたルーテシアをはよく理解していた。
 幼少期の経験から表情と仕草だけで人の思考を読む術を心得ていたからなのだが・・・習得した理由が桃子対策だと
いうのが泣けてくる。それと彼女はむしろ表情を出してかく乱するタイプのポーカーフェイスなので
ほとんど役に立たなかったというむなしいエピソード付きだ。
 まあ、まだその当時のルーテシアは物心が付くか付かないかの頃だったが・・・。
 なおメガーヌはルーテシアのことを溺愛している。夫を早くに亡くした所為か娘には愛情を注ぎまくっていた。
「さて、肉か魚か・・・魚のようだな。焼くか煮るか・・・むう、揚げろと。魚以外にも色々?
 ・・・・・・ならてんぷらにするか。ん? ああ、故郷の料理だよ」
 ほとんど独り言に近いとルーテシアの交流を見て、ゼストとアギトはルーテシアへの理解度が
低かった事を嘆いていいのか喜んで良いのか判断が付かなかった。
 その後も二人はお互いの眼を見ながら、聞いている限り一方的な会話?を立派に成立させていた。
「あ〜・・・その、なんだ、二人とも、出来れば普通に会話してくれ」
「アタシ達にもわかるようにして欲しいんだけど・・・・」
「ああ、とりあえず今日の晩飯は俺の故郷の天麩羅という揚げ物の料理だ。で、買い物に行くんだが
ついてくるか? 欲しいものがあったら買ってやるぞ?」
「行く!!」
「わたしも・・・」
「・・・・一応ついて行こう。買い揃えておきたいものもあるしな」
 全員で買い物に行く事が決定したのだが、
「あれ? 旦那、そういえば路銀がそろそろ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・、すまんが・・・」
「立て替えておいてやるよ。後で個人的に仕事を頼もう」
「申し訳ない。節約してはいたんだがな。奴らはこういう資金を出してはくれないのでな・・・」
 実は日雇いの仕事で路銀を稼いでいたりしたゼスト一行だった。


 買い物から帰り、賑やかな(主にアギト)食事をした後、子供達と風呂に入っていた
ビール片手に上がってきていた。
「飲むか?」
「すまんな。いただこう」
 ゼストはここ最近野宿だった所為か久しぶりに食べたまともな料理の味を脳内で反芻していた。
「思い出すな・・・昔はお前を巻き込んで宴会をやったものだが・・・」
「朝までおつまみを作らせ続けた連中がよく言う。最後まで起きてたのはあんたとゲンヤだけだったろうが・・・」
 ゼスト隊の大半の面々はあっさり潰れるのだが、クイントとメガーヌは明け方近くまで、そしてゲンヤと
ゼストは明け方過ぎまで飲み続けていたのだ。
 翌朝冷蔵庫が空っぽで朝食を作れずギンガとスバルに散々愚痴られたりしたものだった。
。ルーテシアとアギトを頼む。あの子達をめぐり合うべき相手に合わせてやってくれないか?」
「・・・最終的には俺がどうにかしよう。だが、やるべき事をやるまで、その命が尽きるまであんたがそばに
いてやるべきだよ。あの二人はあんたに懐いているしな」
「だが俺は・・・」
「先が短いのであればなおさら傍にいて思い出を作ってやれ。楽しい思い出をな。俺はそれから後でも出来る」
「・・・・そうか、そうだな。あの子らはまだ子供だ。父代わりとしていい思い出を残してやらないとな」
 ゼストとは穏やかな顔で夜の星を眺めて杯を傾けていた。
 遠くからアギトの騒ぐ声が聞こえる。どうもノワールとじゃれあっているようだった。
 とゼストはその喧騒に耳を傾けながら夜空に浮かぶ星を肴にビールを飲んでいた。


 三日後
「もう行くのか」
「ああ・・・世話になった」
「ご飯・・美味しかった・・・」
「やる事やったらまた来るから寂しがるなよ若旦那!」
 ゼスト一行はの屋敷から再びレリック探しの旅に出るところだった。
「ルーテシア。やりたがってたあのゲーム、次来るまでには完成させておくからな」
「うん。よろしくお願いします・・・」
 実はルーテシアはが地球から持ってきた某昆虫王者なゲームに大嵌りしたのだった。
 蟲を扱う召喚師だけに心の琴線に触れるものがあったらしい。現在ミッド版を開発中だ。
 なお竜召喚師のキャロはバーチャル空間で竜を使役する漫画にはまり、にそのゲームを再現してくれ
と頼んでいたりする。なんの躊躇いもなく引き受けた辺り自分もやりたいらしい。将来ゲームを超えて対戦で
きるようにしたりするかもしれない。
「こんなにもらってよかったのか?」
「多少色はつけてあるがそれだけの仕事はしてもらったよ。どうも槍の使い手がうちにはあまりいないんでな。
アームドデバイスは持ち主の技量も問われるんで、あんたほどの実力者がテストしてくれたんなら良い物が作れそうだ」
「そうか。こいつの調整もしてもらったからな。また仕事をしにこよう」
 ゼストには試作した槍型のデバイスの試運転をしてもらっていた。
 その報酬でゼストの懐には結構な額のお金が入っている。
 ゼストのデバイス【ダイダロス】は長年整備されていなかったのだががオーバーホールして不具合の解消と
問題点の改善を施している。調整後にやった模擬戦では終始上機嫌で相手をしたに切りかかっていた。
「なー若旦那ぁ。あたしのメンテナンスが出来るのは分かったけど、なんでルールーの診察が出来たんだ?」
 アギトは度重なる実験とその後全く整備されていない事で幾つか不具合が存在していたのだが、
リインに使っているメンテナンスユニットを使って整備していた。
 そして、ルーテシアもここ最近何もしていないという事でが診察したのだが・・・
「うちの研究所では医療関係の研究もしているし、俺自身医師免許も持っているんだが・・・。
・・・実を言うと妹分が戦闘機人でな。もしもの為だって事でその子達に使われてる技術や機械を解析した
事があるんだよ。だから埋め込んだ機械を解析するのは経験があったんでルーテシアの体も診せてもらった。
 ルーテシアに使われている技術は複雑ではあったが何とか出来ない物でもなかったよ。人間にあんな物埋め込むのは
どうかと思うがメカニズムは大体理解した。後はそれを応用して・・・な」
 はどことなく暗い顔でアギトに真相を話す。
「そーだったんだ・・・。なあ、そいつらは、妹分たちは今・・・?」
「管理局に所属してる。・・・俺はあまり賛成できなかったんだけどな」
 にとって管理局は性質の悪いセイギノミカタの集団である。
 非常に分かりやすい正義を掲げ、そのために時折手段を選ばない行動を取る。
 アタラクシアにも幾つかの工作が行われたのだがことごとく排除している。
 査察だといって無理矢理押し入ってきた挙句自分たちが持ち込んだ違法ロストロギアを研究所で見つけたと
でっち上げて施設を接収しようとしたりもしていた。・・・全て映像に収めて、やった連中をことごとく産業スパイ
として情報漏えいや不正行為を行ったとして牢獄行き(禁固刑80年超)を確定させて排除したりしている。
 アタラクシア以外にも被害に遭い接収された研究所(一切違法は行っていない)が多々ありそれを摘発したので
実行犯達には重い刑を与える事に成功していた。
 もちろん逮捕された彼らのその後ろには評議会の影があった。
「奴らと、スカリエッティたちとつるんでいるならその内会う事になるだろう。敵同士になるが・・・
遠慮は要らん。存分にやってやれ」
「いーのかよそれで・・・。まあ若旦那がそれでいーんならやるけどさ」
「強き者と戦えばそれだけで良い経験になる。そのためか?」
「そういうことだ。まだまだ駆け出しなんで存分に叩いてやってくれ。多少怪我させても問題ないし」
「・・・分かった。話してくれた召喚師もいるんだよね?」
「ああ。ポテンシャルは高いからこの後の経験しだいでは大化けするだろう。よろしく頼む」
「ん・・・・」
 は容赦がなかった。新人達の成長のために強敵である彼女らをけしかけているのだ。
 まあその結果強くなれるのだから文句は言わないでもらおう、とは心の中で舌を出す。
「じゃーなー! また遊びに来るよ若旦那ー!」
「しばしのお別れだ。また会おう」
「行ってきます。・・・おにいちゃん」
 三人はに挨拶をした後、再び旅立って行った。
 は彼らの姿が見えなくなるまで見送っていた。


 彼らを見送っていたの前に、唐突に通信ウィンドウが現れる。
 その主は・・・・・
『やあ不破君。元気でやっているかね?』
「何の用だスカリエッティ。逆探知されて居場所を掴まれたいか?」
 が敵と認識した男、ジェイル・スカリエッティだった。
『相変わらずつれないね君は。僕達は兄弟のようなものじゃないか』
「お前のような兄は要らん」
 この二人には共通点がある。それは管理局によって作られたということだった。
 だからこそ彼はを弟と呼ぶのだが・・・
『実を言うとあるロストロギアを確認してね。アレがあると僕にも君にも非常に都合が悪いのだよ。』
「・・・アレか? アルハザード関係」
『その通りだ。君にはその処分をお願いしたい。もちろん僕の方からも管理局に潜入中の作品を同行させるが』
「インビジブルマーダー・・・。姿無き殺人者か。アレが評議会の手に渡ればまず間違いなく俺達に差し向けられる」
 インビジブルマーダー。その正体は無色透明にして無味無臭の気体状の人工生命で、それに包まれると
即座に窒息死するという危険きわまるロストロギアである。
 その危険性ゆえに、存在を知ったがそれを処分するために探していたものだった。
『君と僕の目的は同じものだと思うのだがね』
「管理局の破壊か。だが俺は生命を弄び踏みにじるようなまねはせん」
 この二人は状況的に意気投合する事が多々あるのだった。今回の事もその一つ。
『君は管理局を内側から変えるのだろう? それは難しくないかね?』
「内側から変える? 違うな、内側を替えるんだ。無能な屑どもを排し有能で人道的な思いやりのある人間を
入れる事でその首を挿げ替える。後は彼らが体制を変えてくれるだろう」
『・・・・・・・・・僕よりも君の方が怖いと思うがね』
 スカリエッティはのプランに寒気を覚える。
 前にも言ったがは容赦がない。
 そういった薬にもならず毒でしかない連中に対して一切慈悲という物を持ってはいなかった。
 なのはたちから見ればあまりにも非情で酷く酷薄に見えるだろう。
 これがのもう一つ顔、不破の当主としての一面だった。
 なおスカリエッティに関しては彼は非常に強力な毒なので使いようによっては薬になると考えている。
『では、彼女と打ち合わせをしておくので行動を始めてくれ』
「不本意ではあるが今回は仕方が無い。協力しよう」
『では、吉報を待っているよマイブラザー』
「黙れマッドドクター」
 スカリエッティは親愛を、は嫌悪を込めて挨拶をして、それぞれが行動を開始した。


 その後、はある施設で合流したナンバーズNo2.ドゥーエと共にそのロストロギアの廃棄を
行った。その際に六課の面々とニアミスをしたのだが彼女らに気付かれるようなとドゥーエではなかった。
 更にその際に評議会の命令を受けて回収に来ていた局員と鉢合わせ、が彼らを気絶させ、ドゥーエが
止めを刺して回っていたが、はそれを見ても何も言わなかった。
 ドゥーエはが内に秘める絶対零度の冷たさを垣間見て、いろんな意味で背筋をぞくぞくさせ、
恍惚とした笑みを見せていた。SとMは紙一重らしいそうだが・・・・
 と同行している時のドゥーエはまるで奴隷のように従順だったそうな。

『・・・・・・不破君。ドゥーエに何かしたのかね?』
「・・・・・・知らん。気が付いたらこうなっていた」
「ああ、様ぁ・・・・」

 なおにはそのような趣味は無い事をここに宣言しておく。




おまけ―――後日機動六課にて

「こ、これは何かのいじめなんやろか・・・?」
「私のところにもきてるよ・・・」
「絶対犯人は君なんだけどされた理由がわかんないよう・・・」
 隊長陣三人娘のところにから彼女達の嫌いな食べ物詰め合わせが贈られてきていた。
 食べ切らないと更に送るというある意味脅迫文付きだった。ホテルで気付いてもらえなかった仕返しらしい。
 そしてヴィータのところには、
「ああ、天国だ。ここはパライソなのか・・・?」
「いーなーヴィータ副隊長・・・」
「スバル。そんなもの欲しそうな目で見ないの」
 お勧めの最高級アイス特選詰め合わせとの手作りアイス各種が贈られていた。
 スバルは同じアイス好きでヴィータに送られたものの価値が分かるからか物凄い羨ましそうだった。
 一方ティアナはミスショットが未だに後を引いているのかいつもの勢いが無かった。
 キャロとエリオが心配そうに見ているが彼女は自分の事で一杯一杯な所為か気付いてもいなかった。

 この後の模擬戦でティアナとスバルがなのはに対して危険な連携をやって怒らせたのだが、
の仕返しのせいで最高に機嫌が悪かった事もあり、かなりボロボロにされたそうだった。
 なおその惨劇を目撃した人々は、フェイトはかつて打ち込まれたアレを思い出しガタガタと震え、
ヴィータは直撃し損ねたあの砲撃の迫力を思い出し、エリオとキャロの心に少しばかりトラウマを作ったらしい。

「そういえばヴィータちゃんだけ凄くいい思いをしてるよね。・・・ちょっとお散歩しようか?」
「待て! 待ってくれなのは! 今回の事はお前やはやての自業自得だ! だからアタシらに八つ当たりすんな!!」
 そしてヴィータから事情を聞いた彼女らは様子を見に来たに謝り許しを得ようとしたのだが、許してもらえず
その日の晩はかつての超激辛カレーが振舞われ彼女らは再び散々な目にあったとか。

 あと、和解したティアナは罰ゲーム的にそのカレーを食べさせられたのだが、彼女は辛党だったらしく
かなり満足げにカレーを完食、挙句御代わりまでしたらしい。なのはたちから怪物を見るような目で見られていたが
いろんなものから解放された高揚感と自分好みな辛さの料理への満足感から一切気がつかなかったらしい。
 その後、が来るたびにカレーを作ってくれとねだるようになったのだが、スバルやキャロが全力を持って
阻止するということがたびたびあったそうな。


後書き
ゼスト・ルーテシアとの再会。
ゼストの槍は名称が明かされていないので作者が適当に名前をつけました。
アギトとの融合の適応度ですが、ゼスト・30% 65% シグナム120%となっております。
なお、ティアナはリンディとは真逆の味覚を持っている設定になってます。
つまり超辛党。女の子らしく甘いのも好きですが、辛いもののほうが好きだったり。
ルーテシアは改造時に保存されたりしているので少しばかり実年齢と離れた容姿をしているということで。
実際はスバルとそう変わらない歳という事に。まあ、精神年齢も幼いですし。凍結期間があったみたいな
ことを言っていたような記憶があるので。どこかでゼストとルーテシアが活動再会とか・・・


PS.改訂前の話が意外に好評だったので多少加筆修正して再掲載しました。
   なんか色々と申し訳ないです。(土下座




inserted by FC2 system