第3話
 翌日、用意してもらった部屋にて目を覚ます。

「おはようございます、セツナ様。随分と早いですね。」
「おはようクノン。なんか早起きが習慣になっててね。」

 部屋を出るとちょうどクノンがいた。

「お食事まで少し時間がありますが、いかがいたしましょう。」

 そうだなぁ

「散歩してくるよ。ああ、そうだ。護身用に武器が欲しいんだが
 何か無いかな?」
「何をお使いになるのですか?」
「銃か刀、槍も使えるな。無手でもなんとかなるが」

 クノンが目を丸くする。本人気づいて無いだけで結構感情豊かかも?

「貴方って多芸なのね・・・・」
「アルディラ?おはよう、まぁ育ての親とその友人たちにいやと言うほど
 仕込まれてね。」

 アルディラが呆れながらも声をかけてくる。
 しかし・・・あの修行というよりも苦行の日々、思い出したくないなぁ。

「とりあえず銃はだめよ。あれは気軽に使えるから。」
「了解。とりあえず刀をメインに使おう。ここにあるか?」
「申し訳ありません。ここには刀は置いていません。」

 そうか・・・・

「ならいいか・・後でキュウマにでも聞いてみるかな。
 まぁ・・散歩に行ってくるよ。海賊達とも少し話がしたいし。」
「分かったわ。いってらっしゃい。」
「ああ、行ってきます。」



 船の近くまで行ってみると、カイルが気の鍛錬と思わしきことをやっている。
 向こうも俺に気づいたようだ。

「よう、確かセツナだったか」
「ああ、おはようカイル鍛錬中か?」
「まあな、おまえはどうしたんだ?」
「散歩ついでに会いに来たんだ。ストラのことも聞きたかったし。」

 カイルがなにやら嬉しそうな顔をする。なんかいやな予感が・・・

「なら、話してやるから組み手しねぇか?」
「はぁ、仕方ない相手するよ」



 時間は瞬く間にすぎ、一通り終わったところでアティが拍手していた。
 2人でストラの説明を受けた。俺の知る限りの気の扱いとそう変わらないらしい。

 その後カイル一家の最後の一人スカーレルとも会い、軽く自己紹介をし、
 アティの生徒、アリーゼとも話をした。
 なんでも、帝国の大富豪の娘らしい。信用できないのか、思いっきり怪しまれた。

 ソノラが料理をしている。あまり得意ではなさそうだが・・・
「あっ!セツナっ、確か料理得意だって行ってたよね!」
「・・・手伝え、と?」
「だめ?」

 ええい上目使いするな、逆らえなくなるから!!・・仕方ないなぁ。

 結局、一人でやってしまった。くそう・・口に合わなくても知らないからな。

 結論から言うと大絶賛された。アティがなにかショックを受けているが。
 なにやら「勝てない」だの「次元が違う」だの呟いていたが。
 アリーゼはびっくりしたような顔で俺を見て、尊敬するような
 視線を向けていた。

 俺は食事を作った後、大急ぎでラトリクスまで戻り、アルディラから遅いと怒られ
 遅めの朝食をとった。


今俺は風雷の郷にいる。ここはあれだな、昔の日本の田舎のようなところだ。

「なぁなぁ、兄ちゃん?此処で何してるんだ?」
「や、やめようよスバルゥ・・・」

 子供?犬っぽい子と耳のとがった子。

「キュウマ達から聞いてないかな?召喚された人間がいるって・・・」
「あっ!!そうか鬼神将ゴウセツの攻撃をかわしたって言う人だ!!!」
「ヤッファさんを助けてくれた人だね!!」

 話は一応いってたみたいだなぁ・・
 なんかいきなり警戒心0になってるけど。
 軽く自己紹介、鬼の子のスバルにパウナスのパナシェね・・

「ねえねえ、今からユクレス村に遊びに行くんだ。セツナお兄さんも行こうよ」
「そうだぜ。一緒に遊んでよ。」
「分かった分かった。遊んでやるよ。」


 ユクレス村の広間に来た、というか

「何をして遊ぶんだ?2人とも」
「うーん、考えて無かったなぁ・・パナシェなんかある?」
「僕も何も考えて無かったよ・・・」

おいおい・・・仕方ないな玩具でも作ってやるか。
周りを見回し枝が落ちているのを発見。そうだな、アレを作るか。
いい感じに太い枝を拾いアルディラにもらったナイフで削りだす。
子供達が興味深げにこちらを見る。
木の枝はみるみるうちに形を変え・・・・

「お兄さん!これは何!?」
「これはな、竹とんぼという玩具でな」
「竹じゃないのに?」
「・・・・パナシェ、それを言ってはいけない。」
「兄ちゃん、これどうやって遊ぶんだ?」
「これはこうするんだ!」

竹とんぼを勢いよく回し、飛ばす!

「おぉぉぉ!!」
「すごい!飛んだ、飛んだよ!!」
 
子供達、大興奮。喜んでくれて何より。
遊び方を教え、もう幾つか作ってやると、どこまで飛ばせるかの競争になった。
そんなこんなで遊んでいると、アティが緑の妖精らしきものと一緒にこっちにやってきた。

「あれ?セツナここにいたんですか
 これから集落を案内してもらうんですけど、一緒にどうです?」
「そうだなぁ、一緒しようかな」
「ええ!お兄さん行っちゃうの?」
「もっと遊んでよぅ、兄ちゃぁん」
「ヤンチャさん、ワンワンさんわがままいっちゃいけないですよぅ」

えっと・・・この妖精さんは?

「・・・・君は?」
「マルルゥはマルルゥですよう。お兄さんは誰ですぅ?」
「昨日召喚された神埼刹那だ。セツナと呼んでくれな、マルルゥ」
「うぅ、マルルゥは名前を覚えるの苦手なんですよう」

だからあんな風に呼んでいるのか・・・

「でも、覚えられないわけじゃないだろう?」
「それはそうですけどぉ・・・・」
「名前と言うのは大切なものだぞ?マルルゥも妖精さんって
 呼ばれるより名前で呼んで欲しいだろう?」
「はいですぅ」
「ならちゃんと名前で呼んでくれな?俺の名前はセツナだよ」
「分かったですよう・・セツナさん」

よしよし、ちゃんと言えたな。マルルゥの頭をなでてやると、
褒められて嬉しいのか照れくさそうに嬉しそうに笑っている。

「わ、私より先生らしい・・・・りょ、料理でも負けたのに・・・」

苦手を無くす手伝いをするのも先生の仕事だと思うぞ・・
料理はアレだな、才能もあるが何より経験だろう。
俺の場合は・・・爺が家事無能で俺がやるしかなかったからだが。
くそぅ、あのぢぢぃめ。七十過ぎの癖に、無駄に強い上に味にうるさいなんて最悪だ。
アティと子供たちも自己紹介し、俺は各集落を巡る事になった。




ユクレス村・ラトリクス・狭間の領域の順で案内してもらい、最後に風雷の郷に来た。

「この集落には、お姫さまさんってエライ人がいまして、その人を中心にしてみなさん仲良く暮らしてるです。畑でお野菜を育てたり、森で狩りをしたり」
「あそこに見えるのは、水田ですね」
アティが水田を指差す。
「お米のゴハン、とってもおいしいです。たまにマルルゥもご馳走になるですよ」
お米ですかー。あまり食べたこと無いんですよねぇ。
「ここの護人さんはニンニンさんですね。さっき会ってますから、訪ねる必要はありませんですね」
また後で会うんですよね。今度はセツナも連れて来てくれと言われましたし。
「さっき来たときも思ったけど、日本の田舎そっくりなんだよなぁ」
「あれ?セツナ此処にきたことあるんですか?」
「この辺でスバルとパナシェに会ってな、すぐにユクレス村に遊びに行く事になってな」
「そうだったんですかぁ。なんだか玩具で遊んでましたけどあれどうしたんですかぁ?」
「俺が作ったんだよ」
え?そ、そんなことまで出来るんですか?
セツナ、多芸すぎますよう・・・・
「ところでセツナ、ニホンって?」
「ああ、俺の故郷の国だよ。名も無き世界のな」
そうでした。
セツナははぐれ召喚獣だったんですよね。
「どんなところなんですか?」
「そうだな。俺の国やその周辺はシルターンに似ているな。いやシルターンが似ているのかな」
へぇ・・・
「ロレイラル程ではないけど機械技術が発達していたし、メイトルパのような亜人やサプレスの
 天使や悪魔のようなものの伝説や神話が多数あったな。」
「なんか色々混ざったような世界なんですね」
「というよりも、それぞれの世界がウチの世界にある特色をそれぞれ強調したような感じなんだよ」
へぇー・・・

「見えてきましたよう。あれがお姫様さんの住んでる鬼の御殿なのです」
「まんま日本に在る武家屋敷だなあ・・・・」
「武家屋敷?」
「権力を持ってる侍なんかがが住んでいる屋敷のことだよ」
やはり似ているのか詳しいですね。

「よく来てくれたな客人よ。わらわの名はミスミじゃ。この郷の衆をまとめておる」
「アティです」
「神崎刹那です」
自己紹介する私達を眺めると、満足そうに頷きました。
「うむ、よい響きじゃな。面構えに似合うておる」
「はは、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
セツナが少し苦笑しつつ礼を言っていた。何かあるんだろうか。
「セツナどうかしたのか?」
ミスミ様がセツナに聞いている。
「刹那と言うのは一瞬と・・1秒の何十分の1だったかな?まぁそんな言葉でね。
 俺の親は俺が生まれるのを望んではいなかったようで、
 刹那の間に死んで行けと言う意味で付けたらしいんだ」
なっ!!!!
「なんじゃそれはっ!!!!」
ミ、ミスミ様?
「仮にも親であろう!!それが自分の子にそのような・・・!!!!」
「そうですよ!!というかセツナはなぜそんなに平然とそんな事言えるんですか!!」
そんな、子供が死ぬのを望むなんて!!!
「まぁ、ろくでもない親だったからねぇ」
ろくでもないにも程が有ります!!!
「母は、綺麗な人だったよ。その美貌で適当に男にとりいっては男に金だの何だの貢がせていたそうだ。
 父も、綺麗な人だったよ。その美貌で適当に女にとりいっては女に金だの何だの貢がせていたそうだ。」
そんな・・・・そんなひとが・・・・
「なぜ二人が結婚なんてしたのか、なぜ子供を作ったのか、それは俺も知らない。」
私の体が怒りで震える。ミスミ様も同様に・・・
「俺の物心付いたときには、すでに二人の仲は修復不能な最悪の状態だった。」
普通は、そういうのは子供には見せないようにするものでしょうに。
「二人とも何か言い合う度に、いらいらや怒りを俺にぶつけていた」
やつあたりを・・・子供に・・・
「正直な話、俺は親の事は嫌いでもなかったが好きでもなかった」
え?あ、ミスミ様も唖然としてる。
「ただ、どうでも良かった。あの二人の事は、正直に言うと如何とも思わなかった」
それは・・・・
「そして最後には・・・・俺の見ている前で二人して刃物を持って、互いに互いを殺した」
・・・・・・・・・・・・・
「それが・・確か6歳の頃だったか」
6歳の子供が・・・親の殺しあう様を・・・
「俺も、腹と背中を刺されて死にかけていたからうろ覚えだが」
親が子を・・・殺そうと・・・・
「まぁ、その後に騒ぎを聞きつけた近所の人が助けてくれたおかげでこうして生きてはいるけど」
そんな・・・壮絶な過去を・・・持っているなんて・・・
「その後も色々と普通に考えれば辛いなんてものじゃないことも起こったりしたけど」
「おぬしは、今までの人生をどう思おうておるのじゃ?」
ミスミ様・・・
「まぁ、ろくでもない人生だったな」
「そうでしょうね・・・・」
「だがまぁ、自分を助けようとしてくれる恩師もいたし、気にせず付き合ってくれる友人もいたし」
「そうか・・・少しは救いがあったのじゃな」
そうですね・・・・・
「もっとも恩師は突然行方不明、俺も友人たちに何も告げずに此処へ・・だからねぇ」
セツナは笑顔だ。
なぜ・・・・
「なぜそんなに笑ってられるんですか?」
どうして・・・そんなことがあったのに・・・・
「俺はな、そういう風になっちまってるんだよ」
「そういう風とはどういう意味じゃ?」
ミスミ様が聞く。
「なんにもないんだよ。両親の事は、それに連なる事はどうでもいいんだ」
・・・・・・・・・
「薄情に聞こえるだろうし、怒りもするだろうが・・・ただもう両親の事は何もかもがどうでもいい」
セツナ・・・・
「そもそも、両親の死に眉一つ動かさなかったからなぁ」
このヒトは、あまりに悲しすぎる。
「まぁ友人たちの事は、心配しているんだろうが」
そうでしょうね。心配してますよね。
「なんかそのうちひょっこり会いそうな気がするんだよなぁ」
はい?それはどういう・・・・
「やれやれ、暗い話になったな。これくらいにしておこう」
「そうじゃな・・・」
・・・・気を取り直して!!!
その後色々と世間話をして
「困った事があればいつでも訪ねて来い。わらわに出来ることならば、力を貸すぞ」
「「ありがとうございます、ミスミ様」」

「これから集いの泉に行くんだって?俺も」
「あっ、はい何かあるみたいです」
そして私たちは集いに泉に向かった。



「ミスミ殿誰か来ておったのかの?」
「これはご老体。いやな、新たに住人になったものがおってのう」
「そうかそうか」
「内一人は名も無き世界から呼ばれたようでの。セツナと言うのじゃ」
「刹那?神崎刹那か?」
「何じゃ、知っておるのか?」
「まあな。しかしあやつも此処に来るとはのう」



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