今日から青空学校が始まる。
まあ、自分には授業の道具を作るぐらいしかかかわってないので、
あまり関係ないのだが、リィンバウムの常識を知るのも良いかもしれないな。
この島を出て旅をしてみたいとも思うし。
そう、思いながら散歩していると、
「ビー!!!、ビビビビーー!!!」
なんだ?見た目鬼火みたいな召喚獣が凄いあわてているが。
「どうした?」
「ビー!!」
おいこらなに引っ張って・・・・!!
「誰か危険な目にあってるのか!?」
その鬼火は肯定する。
「案内してくれ!!」
「ビービー!!」
くそっ、誰だか知らないが無事でいろよ!!!


私は・・・ベルフラウ・マルティーニは・・・死に掛けている。
徐々に体の感覚が無くなっていく。
どうしてこんな事になっているんだろう。
ああ、そうだ。アリーゼ姉様と離れたくなくて、
姉様達の乗る船に忍びこんで、その船が嵐に遭って、沈んで、
私遭難したんでしたわ。
必死に流木にしがみついて・・何日も海を漂って、今いるこの島に漂着して、
でも、何かをする体力も気力も何も無くて。
死にたく無い、死ぬなんて嫌ですわ・・・
「だれか・・・たす・・けて・・」
「ああ、今助ける。もう大丈夫だから、生きる事を諦めるな」
え・・・?
誰かが私を抱き上げている?
何処かへ・・連れて行かれる?
助けて・・くれるの・・・・?
そのヒトはぎゅっと私を抱きしめる。
暖かい・・・冷え切った体に温もりが染み込む・・・
暖かい・・・私は今、温もりに包まれている・・・・
暖かい・・・私、助かるんだ・・・・


浜辺で倒れていた長い金髪の赤い服を来た少女を見つけ、
酷く衰弱しているのを確認した後、俺はその少女を抱えて全力で
リペアセンターに走った。
鬼火も必死で付いてきている。
「だれか・・・たす・・けて・・」
少女が息もたえだえに呟く。
「ああ、今助ける。もう大丈夫だから、生きる事を諦めるな」
俺はその少女にそう返す。
少女の顔色に少し変化が現れる。
助かると言う希望を見出したのだろう。
俺は少女の体を抱きしめる。
冷えた体を温めるように、これからの走りで少女を取り落としてしまわないように。
ラトリクスに入り、リペアセンターに駆け込んだ。
「クノン!!急患だ!急いで治療を!!!」
俺の剣幕にクノンは驚き、俺の腕の中にいる少女を確認すると、
「至急治療いたします。急いでこちらに」
その言葉に従い、メディカルルームへ飛び込んだ。



「非常に危険な状態でしたが、もう大丈夫です」
「そうか、・・・良かった・・・」
セツナ様は安心したように呟き、大きく息を付いた。
その傍らの小さな召喚獣も安心したようだった。
どうやらこの子があの少女を見つけ、近くを通ったセツナ様に
助けるように頼んだようだ。
少女は酷く衰弱しておりもう後30分遅ければ確実に亡くなっていたでしょう。
セツナ様の足の速さとすぐさま少女に上着を着せ体を温めたことがあの少女が
生きるか死ぬかの分かれ目でした。
少女は現在呼吸も安定し、体温も正常になり静かに眠っています。
おそらく、この前運び込まれたイスラ様と同じように
嵐で船が沈没し、この島に漂着したのでしょう。
あの少女が目を覚ましたらすぐに連絡すると聞かせると、
セツナ様は学校を見てくると言い施設から出て行かれました。


「誰もいないのか?」
青空学校へやってきたが・・・なぜ誰もいない?
まだ授業中だろう?
「あっ、セツナさぁん・・」
「マルルゥ・・何かあったのか?」
「あのですねぇ・・・ワンワンさんとヤンチャさんが騒いで
 あの子が怒ってしまったのですよう・・・」
・・・・アティ・・・やはり付け焼刃ではまともな授業にならなかったか・・・
アリーゼも色々たまってたんだろうしなぁ・・・
その後を聞くと、アリーゼが教室を出て行ってしまいアティもそれを追って行ったそうだ。
仲直りできるといいんだがなぁ・・・


おや?・・・皆が帰って・・・・何で戦闘メンバー集結してんの?
「なにかあったのか?」
「貴方こそ何処に行っていたのよ・・・」
「帝国軍がアリーゼを人質にとって仕掛けてきたんだよ」
また一大事だな・・・無事なようだが。
「アリーゼ、怪我はしてないか?」
「あっ、はい。大丈夫です!」
どうやらアティとも打ち解けたようだな。
アリーゼを見ていて、ふとあの少女の顔がよぎった。
まさかとおもうが・・・・
「アリーゼ・・長い金髪の赤い服の少女に心当たりはあるか?」
「えっ?・・・妹がそんな感じの格好ですけどなんで・・・」
やはりか・・・・
「散歩中に衰弱した少女を見つけてな、もしかしたら、もしかするかもしれない」
「ベルが!!!なんでここに・・・いえ!それよりっ!ベルは何処に!!」
「落ち着けアリーゼ!今はリペアセンターで休んでいる。命に別状は無い。
 と言っても俺が助けなければ確実に危険だったが・・・」
「落ち着いてなんていられません!!すぐにリペアセンターに!!」
「行きましょうアリーゼ。セツナ、案内してください」
「分かったが・・・あまり騒ぐなよ」
そうして俺たちはリペアセンターに向かった。


「ベル!!!間違いありません!妹のベルフラウです!!」
あの少女はベルフラウというのですか。
しかし・・・なぜ彼女が此処に?
私がアリーゼの家庭教師になったときは生徒は一人だけだと聞いたのですが。
「どうして・・・ベルがここにいるんですか」
「これは推論だが・・・聞くか?」
セツナが話し出した。もちろん聞きます。
「ベルフラウとアリーゼは仲がいい。これは間違いないな?」
「はい。姉妹ですから」
アリーゼは当然だという感じで頷く。
「アリーゼと離れ離れになりたくなくて、君達が乗り、カイル達が襲ったという船に
 忍びこんでいたんじゃないのかと思うんだが」
えっ、ええっ!!!可能性は無いとは言いませんがそんなこと・・・
「そうかもしれません・・ベルは私以外で心を開けるのは両親しかいませんでしたから・・・」
そ、そうなんですか?
「それにベルはその・・・行動力があると言うか・・やりかねません」
結構・・無茶をする子なんですね。
クノンから目覚めれば連絡をするし、自分が責任を持って看病するので
心配は要らないといわれ、私たちは船に帰りました。


ここは・・・?
目が覚めれば・・・見たことも無い部屋に寝かされていた。
雰囲気からして病院のようですけど・・・
「目を覚ましたのか」
えっ?
突然声をかけられ私は警戒しながらそちらに振り向いた。
・・・女性のような綺麗な顔をした男性が心配そうにこちらを見ていて・・・
「あなたは・・・・」
「君を助けたものだよ。ベルフラウ」
!!!なぜ・・
「この島には君の姉が、アリーゼ・マルティーニがいる。彼女に君の身元を確認してもらった」
姉様が!!!ここに!!
その人が私に近寄って、頭をなでて、
「君は本当に危険な状態に有った。だがもう大丈夫だ」
この温もり・・・この声・・・この人が私を助けてくれた・・・
「ここには君の姉もいる。俺たちも可能な限り君を助ける。今はなにも考えず
 体を休めて、速く元気になってくれな?」
この人の優しさが、温もりが私を安心させてくれる。
でも・・・
「申し訳ありません。その、何か食べるものはありませんの?」
か、顔が熱い。絶対に真っ赤になっている。
し、仕方ないじゃありませんの!!!こちらは何日もなにも食べていませんのよ!!
そのヒトはすぐに分かってくれて、
「待ってろ。消化に良くておいしい物を作ってくる」
すぐに部屋を出て行きました。
・・・って、作ってくる?もしかしてあの人が?


あのヒトは少したってから料理を持ってまいりましたわ。
「中華粥だ。味には自信が有るし、消化にもいい。体が弱っている君には
 こういうものがいいだろう」
チュウカガユ?なにかスープのようなものに一度見た事の有るお米が
入った料理を作ってきてくれましたわ。
その人はそれをスプーンのようなもの(レンゲというらしいですわ)に掬い
私の口元に・・・・/////
「あ、あの・・・・」
「まだ満足に体を動かせないだろう?」
うう、その通りですわ・・・・
その人はその秀麗な顔で微笑みながら、
「遠慮する必要は無い。使える物は使うものだぞ?」
といってレンゲを口元に差し出して・・・・
私は覚悟を決めてチュウカガユを口に運んで・・・
そのおいしさに心底びっくりしましたわ。
私は羞恥心を捨ててその人にチュウカガユを食べさせてもらいました。
おなかが一杯になって、おいしい物を食べたせいか心も満足して、
眠気が私を襲い始めて、
「しっかり休みな。早く元気になろうな」
そう行って私の頬を撫でてくれて・・・
身も心も温かいものに包まれて、満たされて、私は・・・
再び眠りに付いた。

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