「はぁ・・・」
思わずため息が出てしまいます。
晩御飯に魚が欲しいとソノラが言うので釣りをしていたんですが、 何なんでしょうか?このぶよぶよした魚は。
なんか気持ち悪いんですよねぇ・・・
捌こうとしてもぬるぬるしてて切れない上にまな板から滑り落ちるんですよ・・・
「あの・・・先生。その魚どうするんですか?」
「うん・・・どうしましょうか・・・」
どうすればいいんだろう・・・
「あら?先生にアリーゼ。どうかしたのかしら?」
「スカーレルさん・・・」
かいつまんで事情を説明する。
「そうねぇ・・・私たちもこういうのはちょっと・・・」
「海に帰すか、捨てるかしないといけないですよね・・・」
あ、スカーレルが何か思いついたようです。
「セツナに聞いてみたら?何か知ってるかもしれないわよ?」
「セツナさん・・・ですか?」
「基本的に物知りでしょう?もしかしたら名も無き世界にもこういうのあるかも知れないじゃない」
そうですね・・・セツナに押し付けちゃいましょう!

「あ、いた・・・」
「ベル。もっと速くだ」
「はい!」
訓練中ですか・・・
小太刀の訓練のようですね。
かなり上手に見えるのは何ででしょうか・・・
「あれ?先生じゃないか」
「イスラ・・・ちょっとセツナに用事があったんですけど」
「ちょっとまってね。セツナー!先生が用事が有るって!」
セツナがこちらにやってきて、事情を説明すると・・・
「いらないならくれるか?晩御飯を迷っていたんだが丁度良い」
「た、食べるのかい?流石にちょっと・・・」
イスラが引いてますね・・・
「この魚はあんこうといってな。故郷では高級食材だ。鍋にするとかなりいける」
・・・マジですか?
「ゲンジ先生も呼ぶか。ああ、なんなら鬼の御殿でアンコウ鍋をやるか・・・」
すると何か思いついたようで・・・
「ちょっと待ってろ」
と言ってアンコウ(5匹)を持って厨房にはいるセツナ。
10分程で戻ってきました。
「食ってみ?アンコウのから揚げだ」
イスラとベルフラウと私の3人で恐る恐る食べてみたら、
「おいしい!なにか上品な感じの味がしますわ!」
イスラも私も絶句している。
あのグロテスクな魚がこんなに美味しいなんて・・・
これがお鍋に・・・・
イスラも同じ事を考えたのか唾を飲み込んでいる。
「まぁ楽しみにしていろ。腕によりを掛ける」
ああ、今日の晩御飯が待ちどうしいです。

スクラップ場を歩いているとアティが鉄屑を掘り起こしていた。
「アティ・・・何やってるんだ?」
「セツナ? お願いです! 手伝ってください!」
いや・・・だからな・・?
「手伝うのは良いんだが何をしているんだ?」
アティは今気が付いたかのような顔をして、
「ご、ごめんなさい。 あの、この下から助けを求める声が・・・」
「判った。 瓦礫をどかすぞ」
アティと協力し、瓦礫をどかすと、そこには機械兵士が横たわっていた。
「・・・って、これは機界の鎧???」
「違うであります!」
「わ!? 鎧がしゃべった!?」
「鎧ではなく機械兵士なのであります! 
型式番号名VR731LD 強攻突撃射撃機体VAR−Xe−LD  ヴァルゼルド、と親しみをこめて呼んでほしいのであります!」
ふむ・・・機械兵士か。資料で見てはいるが、なんかやけに人間くさい奴だな。
「は、はあ・・・で、その機械兵士がガレキの下で、一体なにをしてるんです?」
「よい質問であります! じつは・・・」
「大方エネルギー切れで活動できないんだろう?」
「・・・その通りであります」
若干気落ちした感じで肯定するヴァルゼルド。
「本機は、本来ならば光をエネルギーに変換して、永久駆動できるでありますが・・・ ソーラーパネルが破損した挙げ句、ガレキに埋まってしまいまして」
永久駆動か・・・高性能だな機械兵士。
「よくわかりませんけど、日当たりが悪いから動けないってことですか?」
「そういう次第で・・・」
「だったら、これでもう大丈夫ですよね?」
「いいえ! 事態は急を要するのであります!! 本機の消耗は限界寸前 このままでは、充電が終わる前に、機能停止するであります!」
「ええっ!?」
「というかソーラーパネルが破損しているならそもそも充電自体できないだろう?」
「そ、そうなんですか・・?」
「全く持ってその通りであります。 そこでせんえつながら、お願いがありまして・・・」
「バッテリーなら此処にあるぞ」
アティとヴァルゼルドがこっちを見て沈黙する。
「セツナ・・・なんでそんなに用意が良いんですか?」
「まさか・・・予知能力という奴でありますか?」
こいつらは・・・・・
「此処に来た理由は使えるものが無いか探しに来たからだ。このバッテリーは動かせるかどうかを 確認するために持ってきていたんだ」
一人と一機は納得する。
「まぁ、いらないんならそっちに使うが・・・・」
「ま、待って欲しいであります! ぜひそれを自分に!」
「セツナ・・・意地悪はいけませ「ああ、そういえば厨房に昨日作ったフルーツタルトが」 ちゃっちゃと終わらせて食べに行きましょう!」
ふっ・・・弱点は既に把握しているぞアティ・・・

「・・・どう?」
「ウマイであります!! 感激であります! 数十万時間ぶりの補給 大変に、おいしゅうございます!!」
「すうじゅうまん!?」
そんなにですか!?
「この状態になってから、その程度の時間は軽く経過したであります。 本機はその間、予備の電源で、最低限の機能を保持していたわけでありますな・・・」
とんでもない話ですね それって・・・
「ごちそうさまでした。 ええと・・・」
「アティですよ この島で、学校の先生をしているんです」
「先生・・・ すると、貴方は教官殿でありますか?」
「まあ、間違いではないかな?」
でも教官って・・・
「そちらの方は・・・」
「刹那だ。 物作りの職人をやっている」
「職人・・・では貴方は技師殿でありますか?」
「そんなとこだろう」
セツナ・・・幅は広いですけど確かに職人ですね。
「感謝するであります! 教官殿・・・技師殿・・・
本機はこれより補給したエネルギーで自己修復機能を作動させるであります。  修復が終わり次第、このお礼は、必ずさせていただきます」
「いいんですよ、そんなの。 困ってる時は、お互いさまなんですから」
「教官殿・・・」
「それじゃ、またね。 ヴァルゼルド」
「また様子を見に来るよ」
「はいっ! おやすみなさいでありますっ!!」
うん。おやすみヴァルゼルド・・・
そしてセツナ。早いとこタルトを食べに行きましょう!


「ぼや?風雷の郷でか?」
「はい。ユクレス村でもあったようですが、心当たりは・・・無いようですね・・・」
それも当然か・・・
セツナさんは此処に来てから夕食のアンコウ鍋の準備をしているのだし。
「これで解体の仕方はわかっただろう?そっちの残りも同じように捌いておいてくれ」
「はい!判りました先生!」
鬼の御殿で奉公している若い女性(鬼人)に料理の指導をしながら準備をしているので なかなか進まないそうだ。
「なぜアンコウを吊るすんですか?」
「まな板で切ろうとしても滑ってしまって切れないんだ。 だからフックで吊り下げて水を飲ませて腹をパンパンに膨らませてから切るんだよ」
吊るし切りと言うそうです。
私に専門的な話をされてもよく理解できないんですが・・・
まあとにかくセツナさんは知らない・・・と。
「その場には誰がいたんだ?」
「?・・・スバル様とパナシェとマルルゥとイスラですね」
それが何か・・・?
「・・・イスラに気をつけろ」
は?
「あの・・・?」
「火を点けられるとしたら奴しかいない。 堂々と郷の中央に入ってこれて怪しまれない上に身元が分からないからな」
!?
た、確かに!
「ユクレス村の方はどこかに仲間・・・おそらくあの刺青野郎だろうな。奴と組んだと考えるか、 元から帝国の軍人である可能性もある。・・・あまり考えたくないが」
その可能性も・・・なら今後の行動は・・・っ!
「子供達が人質に取られる可能性もある。速いとこ・・・」
セツナさんの言葉が終わる前に私は走り出していた。
スバル様・・・・!


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