アティです。今日は皆に休みをいただきました。 アティです。でも私今まで休みらしい休みを取った事がありません! 一体何をすれば良いのでしょうか? アティです…アティです…アティです… 「と言う訳なんですよ…」 「なんだその俺のいた世界のとある芸人風の説明は…」 セツナは頭痛をこらえる様に頭を抱えています。 「誰かに聞いたりしたのか?」 「他の皆にも聞いたんですけど自分の好きにしろとしか…」 「それはそうだろう。寝て過ごしても良いし、日がな一日釣りしててもいいし、 子供たちと遊んでても良いし、ヤッファと酒飲んでても良いし、あるんなら温泉に浸かりにでも…」 色々と休みの過ごし方を列挙してくれてますが、温泉ですかぁ。 「兄様はどんな休日を過ごしてらしたんですか?」 ベルのその言葉にセツナはなぜか沈黙し… 「……俺も休みらしい休みは取った事が無いな…」 …………え? 「あ、あの?」 「普段は学校に通い、家事全般をこなし、その後に爺どもと戦闘訓練。 学校が休みの日には、警察の犯罪捜査に付き合い良くて泥棒退治、悪くなると 犯罪組織の一つ二つ相手に取って大立ち回り。組織の暗殺者とかと殺しあったりとか、 仕留めきれずに何度も戦ってるうちに戦友っぽくなってたり…」 なんだか、想像以上に殺伐とした毎日を送ってたんですね… 「気が付いたら独自の裏ルートを形成してて、挙句の果てに近所に住んでるならず者とか 国内のそういう組織から恐れられる存在になってたり、そういう方面で知り合った情報屋とか ガンスミスとかもっと言えば死の商人とかに頼りにされててそのくせ裏で4億くらいの 懸賞金ついてたりもしたな他には…………」 …………………………… 貴方一体どんな生き方してたんですか? 「しかも大元の原因は考えるまでも無くあの爺どもなわけで……あれ? なぜだろう?俺が送った当たり前の日々を語っているだけなのになぜか涙が止まらない…」 「も、もういいですから。辛かったらもう思い出さなくても」 「兄様の強さの秘密がわかったような気がしますわ…」 毎日が闘争で、時々修羅場入ってて、命まで狙われていたと… 「しかも普段の生活では、俺の生い立ちとかを知ってる奴らが大半で、そいつらから 色々と迫害受けてたりもしたんだよなぁ。ああ、ろくでもない人生万歳!」 …………セツナ。 良かったですね、リィンバウムに召喚されて… 盛大に脱線してしまったが、決まったのは浜辺でバーベキューでもしようかというものだった。 適当に釣りをして、適当に泳いで、適当に騒いで、適当に飲んで、適当に食おうという、 まあありきたりな休日を過ごそうかと。 そして…知らない間にアティと合流したいつものメンバー+αで騒ぐ事になった。 そこで、俺は一つ提案してみた。 みんな、泳げる格好―水着―で集まろうと。 野郎どもは大賛成。女性は条件付賛成だった。 なお条件とは…一日俺に給仕をしろというもの。 …………………いつもと変わらない気がひしひしとするのだが。 まあとりあえず全員水着に着替えてきた。 男衆はともかく女性陣はそれはもう華やかだった。 皆が皆、美女美少女なので男衆の鼻の下が伸びる事伸びる事。 キュウマはミスミ様の紫のセクシー水着に鼻血を噴き、カイルはソノラの黒のビキニにいちゃもんをつけては 殴り飛ばされ、ヤッファはアルディラのセパレートの水着をからかいドリトルで追い回され、 ほとんどの野郎どもはアティの白いビキニ姿に見とれ、当のアティは俺が褒めたときに恥ずかしそうにしていたが 他の男のときはそういう反応を示さなかった。 「先生はお主以外は興味無さそうじゃな」 「ははは。喜んで良いやら悪いやら」 ミスミ様は首をかしげて、 「なぜじゃ?」 と聞いてきたが、気付いてないのか? 「ミスミ様…島の大半の男はアティに気があるんですよ」 「……………本当か? それは」 「事実です。現に俺に向かう嫉妬の視線の痛い事痛い事」 バーベキューその他諸々の準備を淡々と進める俺に、あからさまな嫉妬の視線が突き刺さってくる。 アリーゼやベルフラウは清楚かつ可愛らしいワンピースの水着で非常に可愛らしい。 さっきから子供たちと釣りに精を出しているクノンも、俺とアルディラの改造により青のセパレートの水着を着ている。 着せ替えをする時はなかなか楽しそうだったのは印象深かった。 「セツナよ。現実逃避するでない。あと、家事に逃げるな」 イエスマム。 「兄様…不憫ですわね…」 「ベル?どうしたの?」 姉様が兄様を哀れむ私に声をかけてくる。 アレを見てどうとも思わないんですの? 「男衆が兄様に嫉妬の視線を向けていますわ。恨みで人を殺せたら、といわんばかりに」 「あ、あはははは。し、仕方ないんじゃないかな?先生美人だし」 そうではないんですけど。 「姉様。兄様は先生に対して恋愛感情は持っていませんわ。せいぜい手のかかる姉みたいなものですわよ」 「そ、そうなの?確かにアプローチの類はしてないけど…」 兄様は主に先生や他のみんなのやらかした後始末をしたりするのが仕事なんですわよね… それに誰も気づいてないなんて…やっぱり哀れですわ。 「兄様はみんなの世話をしてばかりでご自分のことを後回しにしがちなんですわ」 「そうなの?結構好き勝手にやってるように見えるんだけど」 そんなことありませんわ。 はぁ、やはり誰も気づいてないんですわね… あれ?ベルフラウがセツナに近づいていってる。 「ソノラさん、どこへいくんですか?」 「セツナのとこ。食べ物ないか見てくるよ」 「お気をつけて」 ヤードに見送られてセツナの屋台へ行くと二人の会話が聞こえてきた。 「兄様。いい加減食べないと持ちませんわよ。作るばかりで食事をなさってませんでしょう?」 …………え? 「別にもつから構わんよ。全く食べてない訳でもないしな」 「味見に少しつまむのを食べたとは言いません!少しでも良いから食べてください!」 ベルフラウに説教されて、セツナは渋々と本格的な食事を始めた。 といっても、余りものを適当に炒めて味付けしているだけのものだけど… もうだいぶ日も高くなって、お昼も過ぎてくるところだけど、食べてなかった? なんで? どうして? それに、私はそれに気づいてなかった。 ベルフラウだけが気づいてたの? いつも見てたのに、私はそれに気づけなかった。 「兄様、いつも他人のお世話か後始末をしていますわね」 「仕方が無いだろう?世話をかけるのはあいつらだし」 少しは自分の時間を作ってはどうですの? そういうベルフラウの声が遠く聞こえる。 お世話?後始末?何時それを? 簡単だ。 私たちがいないとき、それ以外に考えられない。 そういえば、皆で集まるときは常に何か用意したり片付けたりしていたような・・・。 「誰も気付かないなんておかしいですわ」 「仕方ないだろう。俺もかなりのハイスピードで仕事こなしてるし」 それも一因だったの!? 包丁捌きとか段取りとか物凄く早かったのは知ってたけど! 私は二人の会話を聞きたくなくて足早に岩場に出た。 このままじゃいけない。 確実にセツナをベルフラウに取られる。 先生は気付いているんだろうか。今セツナに一番近いのは間違いなくベルフラウだ。 どうすればいいんだろうか。これまで海賊家業で真っ当な恋愛なんてしていない自分ではどうすればいいのかまるでわからない。 ・・・誰か既婚者とかに相談しよう。 遊び疲れて早夕方。 セツナさんはバーベキューの道具を手早く片付けて既に帰る気満々です。 酔いつぶれたメイメイさんを肩に担いでたりしてますけど。 「ファルゼン。すまんがこれ持ってくれ」 「ヨカロウ」 「私もお手伝いします」 バーベキューセットを持ち上げて運び出す私とフレイズは楽しかった一日を思い返しながら 文句も言わずにセツナさんを手伝います。 当初、フレイズはアティ先生たちもそうなんですけどセツナさんを警戒していました。 フレイズは私を守るためなら迷うことなく敵を滅ぼします。なので色々と言いくるめようとしていたのですが・・・ 「セツナさん。今日はもうアレは作らないのですか?」 「冷蔵庫にいくつか残ってたはずだが、そんなに気に入ったのか?」 「ええ!それはもう!!」 セツナさんは召喚獣用の食べ物を作ってました。サプレスとロレイラルの物以外は人間も食べられるのですが、それぞれの世界にあわせたおやつなんだそうです。 そもそもセツナさんが普通におやつにしてたみたらし団子とかがシルターンの召喚獣にものすごく受けた事が始まりでした。 今はサプレスの天使や精霊、果ては悪魔すらも虜にしかねないほどのおやつを作っています。 もうお分かりになったと思いますが、このフレイズ、餌付けされました。 というか作れる者がセツナさんしかいないんですよ。 なのでフレイズ内部の好感度では私に次いで2番目くらいにセツナさんがいるらしいです。 「セツナ。マエカラオモッテイタノダガ」 「何だ?」 「アレ、アジミハシテイルノカ?」 サプレスの者が食べられる物は非常に限られています。人間に近い悪魔や天使なら普通に食事が可能なんですが、タケシー なんかになると物体を食することが出来ません。霊体に近い何かでなければ食べられないのです。・・・私も含めて。 更に言うと人間には食べられません。試したというか、イスラがつまみ食いしたらしいんですよね。大分前に。 その場で倒れて即入院だったらしいですが。 「俺が契約しているプラーマに味見を頼んでいる。呼んだら即行で来るぞ」 「・・・メガミトイエドモヤハリオンナナノカ」 自分が生きていた頃のことを思い出します。ええ、甘い物は別腹でしたよ。それで痛い目に遭ったことも一度や二度ではす みません。そのたびに周りを巻き込みながらダイエットを・・・ 「噂を聞いてプラーマに分けてもらった魔臣ガルマザリアにも大好評だったらしい。というかあいつらって種族的に 敵対してなかったか?」 「・・・・・・・・・・・・」 もはや何も言いません。 私達が全員で家路についていると、森の方から爆音が聞こえてきました。 何があったのでしょう。 「大変だ! ジャキーニたちが自由を求めて反抗してきたぞ!」 ・・・・・・・・結構優遇されてませんでした? 結構な頻度でセツナさんが差し入れに行ったりしてたはずなんですが・・・ |