管理局会議場にて、ナンバーズの処遇を決める会議が行われていた。
 そしてそこにはの姿も・・・・


 彼女達のその後の処遇



 会議はがいきなり勝負を決めに掛かっていた。
「この度こちらがアインヘリアルによって受けた損害額が300億を超えていましてね。払っていただけます?」
「無茶言わないでください不破総帥!」
「というかなんでそんな天文学的な数字になってるんですか!」
 の提示した額に悲鳴を上げる管理局幹部。いきなりこんな超大金を払えといわれても困るだろう。
「まず、西棟と南棟が全壊しました。医療研究棟とエネルギー研究棟が。知っての通りこの二つは設備から
機材から非常に金が掛かります。そういったものや完成直前の新型が根こそぎ吹っ飛びました」
「「「「ぅあっ!」」」」
 想像しただけでも頭が痛いなんてものではなかった。そりゃあこの額になってもおかしくはない。
「あと中央本部棟が一部損壊しています。非常時に備えて前もって避難させたので人的損害はありませんが
物理的に酷い事になっております。これでは納期に間に合わないどころか今後の研究にも支障が出ます」
「「「・・・・・・・・」」」
 管理局が受けた損害もかなり大きい(特に信頼の面で)のだが、アタラクシアの被害は単純でかつ今後に
大きく支障が出ていた。一応各企業には暫く復旧に力を注がないといけないため仕事が出来ないと
前もって説明しており、その旨は了解されている。
「更に政府からの依頼と民間企業の総意、そしてミッド地上の業務縮小のため、レスキュー組織を新規に立ち上げる事
になったのですが、今のままでは人員募集もままなりません。当然装備の開発も。そこで―――」
 業務縮小のあたりで幹部達は顔をうつむかせる。まだかつての権力にこだわっている様だ。
「そちらに保護された戦闘機人たちをこちらに引き渡してもらいます」
「!!! ふ、ふざけるな! アタラクシアはこれ以上戦力を増やすつもりか!!?」
 の提案に幹部が激昂する。しかし彼らは勘違いしている。
「誰がアタラクシアに所属させると言いましたか? 私はレスキュー隊員としてあの子達を欲しているといったんですよ?」
 の反論に言葉を詰まらせる幹部達。しかし彼らとしては戦闘機人たちは兵器でしかなく今後【使用】していく
つもりなのだ。ただでさえ戦力が低下している管理局はこれ以上の弱体化は避けたかった。
 しかしそれを許すではない。今は落ちている戦力でもこれから挽回は可能なのだ。十分に。
 なのははまだ管理局に残り教官職を続けていく予定らしいし、ヴィータもまた同じ。今の管理局は早急な戦力増加を
目指しているがそんなものがそう簡単に上手く行くはずが無い。人材を育てるには時間がかかるのだ。
 今回の実績から六課が名称を変えて現場で仕事をしながら教導していく人材育成専門の部隊になる予定ではあるし
今居る局員も鍛えなおせば使えないわけでもない。それをしようとしないのは彼らの怠慢でしかないのだ。
「そうそう、彼女らをこちらに引き渡してもらえるなら賠償請求は棄却しましょう」
「むぅ・・・」
 更なる提案に彼らがうなる。保護した(彼らからすれば拾った)戦闘機人を差し出せば300億を超える損害賠償を
無くしてくれるというのはあまりに魅力的だ。そもそもそんな金は彼らには無い。というわけでもないのだが実は。
 評議会の悪事は全て暴露されたのだが、その中には公金横領(スカリエッティに流れた資金)があり、横領が無くなった
事により資金に大分余裕が出来ているのだ。そのためは管理局のスポンサーを辞めるつもりである。
「・・・・・・仕方がありませんね。その提案を受け入れましょう」
「ミゼット統幕議長・・・しかし」
「不破総帥。彼女らを戦闘に出す事はありますか?」
「非常時ならば仕方がないでしょうが、彼女らには災害と戦ってもらう予定ですよ。それ以外は出させません。
というよりウチはあくまで研究所です。時々警備に借り出す事はあるでしょうが、どこを攻めろというんです?
まさか評議会のようにウチの研究資料を盗み出そうと職員を送るつもりですか?」
 数人の幹部が気まずげに沈黙する。その光景にミゼットが頬を引きつらせ残りの三提督のレオーネとラルゴはその幹部の
名前をメモに記している。あとで人物評価をし直すのかそれとも彼等の裏を調べるのか・・・
「・・・で、どうするんです?」
 冷ややかな目で周りを見ていたは答えを出すように急かす。としてはこれ以上敵地になど居たくないのだ。
さっきの幹部達の沈黙がここが敵地である事を雄弁に語っていたから・・・
「分かりました。戦闘機人たちは貴方の下へ行くようにこちらでも処理しておきます」
「隔離施設にも連絡を入れておこう」
「助かります。こちらもウチの者を迎えに行かせます。迎えに行くのは彼女達の親しい人物ですから、もしそれ以外が
引取りに来ていたら追い返すなり逮捕するなりしておいてください」
「了解しました。では解散しましょう」
 結論を出したと三提督は早々に部屋を出ていくが、数人の幹部は悔しげに唇を噛んだままその場を動かなかった。


 と三提督は話し合いながら廊下を歩いていた。
「迎えはチンクとドゥーエにさせます。それ以外が来ている場合は即座に逮捕を」
「分かっている。・・・まったく、評議会の正体がこれでまだあんな幹部が隠れていたとは」
「一度全職員の身辺調査を行いましょう。いくら奇麗事では行かない事が多々あるとはいえ犯罪に手を出すのは容認
できるはずがありません。評議会の消滅により馬鹿な事を考えるのが居なくなったことかと思えばこの有様ですから」
「ワシらはいつになったら若者に後を託していけるのだろうかの」
 管理局の腐敗があまりにも酷かった事を改めて思い知らされた彼らは見限りたい気分で一杯だった。ついでに言うと
は既に心の中で管理局へのあらゆるサポートを止める事を決定していた。
「ではこの辺で。あなた方の苦労が忍ばれますがお体にはお気をつけください」
「お主もな。わしらが引退したら子供達でもつれて遊びに来ておくれ」
「はやてさんとヴィータちゃんもお願いね」
 彼らは今後の事に頭を痛めながらもと別れ、それぞれの執務室に向かっていった。


 数日後の海上隔離施設。
 ギンガはの元に引き取られる予定のナンバーズたちに一般常識についての授業を行っていた。
 時間的にも最後の授業になるだろう。あとは彼女が敬愛する兄が教育を受け持つと聞いていた。
「うん。そろそろ時間ですね。何か質問はある?」
「・・・ギンガ。迎えに来るのはチンクとドゥーエだったな?」
「そうだけど? どうかしたのトーレ?」
「施設の周りを魔導師が囲んでいる。なにやら不穏な感じがするが・・・」
 ナンバーズたちは居心地悪げに身じろぎする。ギンガの事は信頼しているのだが管理局は信用などもってのほかだ。
 ギンガは万一に備えてデバイスを起動しバリアジャケットを纏い戦闘態勢を整える。
 部屋の扉を開けて入ってきたのは―――
「・・・物々しいな。理由は分かるが」
「チンク!」
 カジュアルな格好をしたチンクだった。ノーヴェは普段見ない格好の彼女を見て相好を崩しているが気にしてはいけない。
「外はどうなんだ?」
「三提督が手回ししたまともな局員を配置して、あるかもしれない襲撃を見張っているところだ」
「どうして襲撃なんて・・・」
「我々がアタラクシアに引き取られるのを阻止したい奴らが居るらしい。愚かな事だ」
 ちなみにくる途中に襲撃がありそいつらは捕まえたらしい。
「外でドゥーエが待っているから速く準備してくれ。アタラクシアの敷地内に入れば奴らも手をだせん」
 チンクの言葉にナンバーズたちは大急ぎで準備を始める。
「チンク。大丈夫なの?」
「その辺の心配はない。こういうときに最も頼りになる方が我々には付いているだろう?」
「そうだったわね。私も行くの?」
「スバルやゲンヤ殿も不破の屋敷に居られるのでな。顔を出して行ったらどうだ?」
「そうね。そうするわ。お兄さんにも会いたいしね」
 チンクとギンガが話をしている間にナンバーズたちの準備が終わる。
「では行こうか皆。新しい住まいが待っているぞ?」
 チンクの言葉にその場にいるナンバーズ(2番・4番除く)は大きく頷いた。

 施設から船で最寄の港に着いた彼女達の前には小さ目のバスが停まっていた。
「久しぶりねウーノ、トーレ」
「ええ、久しぶり。元気にしてるみたいねドゥーエ」
 優しげな雰囲気のお姉さんといった感じの格好をしたドゥーエがマイクロバスの前で待っていた。
 久しぶりの再会にウーノたち初期ロットナンバーは嬉しそうだった。後期ロットたちは初めて見る姉に
少し戸惑っているようだった。クアットロあたりから聞いたイメージと違ったからだろう。
「みんな。速く乗って。話は道中にすることにするわ」
「ええ、みんな順番に乗りなさいね」
 挨拶もそこそこ、早速全員がバスに乗り込みアタラクシアに向けて出発した。

「色々と積もる話もあるのだけど、クアットロはどうなったの?」
 出発して早々、ウーノはずっと気に掛かっていた妹のことを切り出した。
 オットーやディード、ノーヴェたちは少々顔をしかめている。思うところがあるからだろう。
「あの子は今・・・眠っているわ」
「眠ってる?」
「ええ、主様、不破総帥のリミットブレイク【布都御霊】で一刀両断されたわけだけど、その時の恐怖からか
精神に異常があるみたいなのよ。肉体的には全く損傷は無いんだけど全く目を覚まさないの」
「精神に異常?」
「精神崩壊か自我崩壊を起こしたそうだ。何をしても反応が返ってこない」
 姉妹たちは顔を曇らせる。ノーヴェたちもまさかここまでひどい状態だとは思っては居なかったのだ。
「総帥は何か言ってた?」
「特に何も・・・その内目を覚ますだろうって」
「精神が崩壊したのに目を覚ますの? ドゥーエ姉」
「戦闘機人も人のようにいくつも人格持ってるだろうからその内別の人格が顔を出す・・・と言うのが総帥の結論よ」
 姉妹たちは首を傾げる。人格をいくつも持っている?
「なあ・・・」
「言いたい事は分かっている。いくつも人格があるというのが不思議なのだろう」
「ああ。ありえるのかそんな事」
「人は基本的にいくつも人格を持っているそうだ。別の相手に態度を変えるようにな」
「主人格が消えた今、その中に眠る幾つもの副人格が主導権争いをしてから表に出てくるらしいわよ。
総帥もどんなクアットロになるか楽しみなんだと言っていたわ」
 彼女たちにとってあり得るはずもないオカルト系の話なのかと思いつつ、離れていた時間を埋めるかのように
賑々しく会話は弾み、不破邸への帰路に就いていた。


 その頃のはクロノとカリムに箱船について尋問というかとにかく説明を求められていた。
「だからあれはうちで培った技術を用いて造った移民船の試作艦だと何度も説明しただろうに・・・」
「信じられるかあんなの! 言え! 何処の世界のロストロギアを使っている!」
 クロノは管理局の技術では作れないであろうあの箱船に脅威を覚えていた。
 武装はなくバリアを持っているだけだと言ってもそのバリアが曲者だったからだ。展開したまま突っ込まれたら
破城槌代わりになりただでは済まない被害を与えられるからだ。凶悪なまでの防御力はそれだけで脅威なのだ。
「総帥・・・素直に吐いた方がよろしいのでは・・・?」
「だ〜か〜ら〜・・・・・・・・!!!」
 はもういい加減に堪忍袋の緒が切れかけていた。そもそも管理局にも聖王教会にも設計図のデータは
事件後に送っているのだが、管理局にも聖王教会にも解析しきれない物だったらしくロストロギア扱いしているらしかった。
「総帥。彼女たちは無事に合流し現在順調にここに向かっていると連絡がありました」
「・・・そうか。出かけに襲撃を受けたときはまたかと思ったが」
 アインからの報告に、キレそうだったは何とか自分を押さえこむ。正直二人の首をへし折りたい気分で一杯だった。
。話を逸らせると思っているのか?」
「・・・出来れば逸らしておきたかったが、いい加減にしないと本気で潰しに掛かるぞ貴様ら」
 マジにキレかかっているを見て顔を引きつらせるクロノとカリム。そばに控えているシャッハは
怒気というか殺気というか・・・本気で怒っている事に気付き顔面蒼白である。
「そ、総帥! 本当に既存技術だけなんですよね!?」
「そうだ。大体うちではロストロギアは使わないと公言しているだろうに。なら俺達が造った物だと言う答えに
辿り着くのが当然だろう? たかだか管理局の技術如きで解析不能な程度でロストロギア扱いするな。というか
造って一年も経ってない新品を古代遺物扱いするな阿呆どもが」
 の正論に二人は口をつぐむ。シャッハはから殺気が無くなったことに心から安堵している。
「とにかくこの話はここまでだ。機動六課は休暇中はうちで預かるがいいか?」
「ああ、旅行に行く者もいるだろうが隊舎もアースラも使えない以上それは仕方がない」
 今の彼女たちはアタラクシアの会議室の一室を臨時本部として使用しており、報告書や始末書などを
連日書きまくっている状態だ。休みにはいるのはもう少し掛かるらしい。
「それと、スカリエッティのことなのですが・・・」
「どうかしたのか?」
「いえ、大人しいものですよ。ただその静けさが嫌に気味が悪く・・・」
「問題ないな。あいつも評議会から解放されて生命研究をしなくてもよくなったことでああいうことを起こす
必要が無くなったんだからな。暫く自分の趣味探しにでも没頭するだろう」
 事実、スカリエッティはが差し入れた様々な本を読みつつ最近はチェスなどのゲームに嵌りつつあるらしい。
 最悪級の次元犯罪者と呼ばれた男の姿は何処にもなかったらしい。
 スカリエッティは事件後、評議会に命令されて生命研究をしていた事、そして自分自身がその為に作り出された
人造生命だという事が暴露されたためかなりの恩赦が与えられている。その頭脳が必要になった場合必要な研究を
手伝う事を条件に禁錮20年ほどの刑罰で済んでいるのだ。
「俺も今は仕事が忙しい。そろそろお開きにしないか?」
「・・・まだ納得しがたいが、まあいいだろう」
「私たちはもう少しここに居ます。と言うか居させてください」
「どうかしたのですか? 騎士カリム」
「以前聖王教会で何らかの不正が行われていないかという調査を行ったのです。ですがその際私の仕事の量
が・・・司祭様方や騎士団のそれぞれの部隊長達が私に仕事を押し付けていた事が発覚したのです。
なので長めの休暇をもぎ取ってまいりましたが行く当てがありません。もうしばらく置いてください」
 それを聞いたその場の全員がカリムに同情し、その願いを受け入れたのは当然の事だった。


 その後、何とか仕事を終わらせた機動六課隊員と、しばらくの間滞在する事になった騎士カリムとシャッハ、そして
到着した戦闘機人たちと共に盛大な宴会が催された。
 高級食材をふんだんに使いとはやて、そして料理においての直弟子であるギンガとスバルが厨房に立ち
の指揮の下最高峰に近いその調理技術を持って調理されたご馳走の数々が振舞われ全員の舌と腹を満足させたそうな。
 かつての敵と味方も関係なく笑いあい賑やかな一時を過ごす様は、とても平和な光景だった。

「・・・いい光景だ。こういう平和で穏やかな光景こそ俺の望んでいたものだからな」
―良く頑張ったわね。それでこそ私たちの息子よ―
―そうだぞ。あの俺もどきも一目で見破っていたしな。嬉しかったぞ―
「・・・あのな。そうたびたび見に来るのは止めてくれ。何を見られているか気が気でないんだ」
―ふふふ。次来る時は孫の顔を見に来るからね―
―御神流の事はお前に任せる。なに、兄さんや恭也がいるんだし美由希ちゃんもいるんだ。お前は好きにしろ―
「分かってるよ。だからさっさと逝けこのバカップル」
? 誰に言ってるの?」
「死後ようやく再会できて周囲にラブラブぶりを見せつけまくっているバカップルにだ。さてフェイト。
今夜は一緒に寝ようか?」
「え? ああぅ・・・えとえと・・・そのぅ・・・お、お願いします・・・・」





後書き

戦いの後の事後処理完了。
後は管理局と政府、そして聖王教会の仕事です。
破壊された街の復興に関しては主人公の私財を一部寄付しています。
この最後の宴会時にスバルの料理の腕を知ってショックで崩れ落ちた某ツンデレとかがいたりしましたが
誰も気に留めませんでした。寮暮らしで食堂で食べるのが普通だったので料理の腕を知らなかったり。
クアットロは壊れてしまった人格を書き換えるという手段もあったのですが、それは主人公の趣味ではなかったので
自然に回復するのを待つ事になりました。
カリムは持っている能力や立場から教会を離れられないとの事でしたが、うちでは彼女が優秀である事を良い事に
適当な理由をつけて教会に縛り付けて仕事を押し付けていたという事になってます。

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