その日は冬休みの最終日。
次の日は学校の新学期が始まる日。
ある少女たちも本来なら再び始まる学校生活を心待ちにしている・・・筈だった。


ある修羅場の日(冬休み宿題編)


 此処はハラオウン一家が暮らすマンションのフェイトの部屋。
 ここには仲良し4人組と言える少女達が一堂に会していた。
「・・・まさかこの私達が宿題を忘れていたとはね・・・」
「・・・色々と事件が終わった後で冬休みに入ったから気が抜けてたみたいだね・・・」
「・・・ずっと遊びほうけてたからね・・・」
「・・・とにかく急いで仕上げないと・・・後数時間しかないよ?」
 つまり闇の書事件が終わってから皆が皆遊びほうけていたのだ。
 ついでに言うとなのはの姉美由希も同じ状態である。

 という訳でまず援軍を要請する。
「ごめんよ〜フェイト・・・今日はその、ザフィーラと・・・」
 アルフ・・・どうもデートらしい。
「君達の自業自得だろう?何故僕が手伝わなければならないんだ」
 クロノ・・・説得失敗。
「ごめん!手伝いたいのはやまやまなんだけど仕事が・・・」
 ユーノ・・・多忙につき手伝い不可。
「宿題は自分でするものだよ〜」
 エイミィ・・・説教されました。
「あらあら、困ったわねぇ」
 リンディ・・・のほほんと流されました。

「うう・・・みんな冷たい・・・」
 涙目で呟くなのは。
「頼める人はみんな駄目だったね・・・」
 落ち込むフェイト。
「こっちも駄目だったわ・・・」
 顔色の悪いアリサ。
「笑い飛ばされただけだったよ・・・」
 最早半泣きのすずか。
 アリサは立ち上がった。此処でくじけていてもどうにもならない。
「やるわよみんな!徹夜してでも終わらせるわよ!」
「アリサ・・・」
「ほら!それぞれの得意科目を優先して終わったやつから写せば何とかなる!」
「そうだね。なんだか希望が沸いて来たよ!」
「うん!早くやっちゃおう!」
 アリサの激になのはとすずかが勢いづく。
「あ!そうだ!」
 何やらフェイトが思いつく。
「クラスの子に見せてもらうと言うのは「却下!」・・・ええ!?何で!?」
「この私が・・・学年トップのこの私が他の奴に見せてもらうなんてあっちゃいけないのよ!」
 プライドゆえに自ら道を塞いだ瞬間だった。

 ピンポーン
「あ、はーい!」
 来客のためフェイトが応対に出る。
「がー! 誰よこんな時に!」
「あ、アリサちゃん・・・」
 来客のようだがいったいこんな時間(19:05)に誰が来たのだろうか。
「良い感じに死にかけてるなアリサ」
「あ、あんたは・・・フェイトが転校してから隣の席になり、なにかとフェイトを気に掛けてる
このアリサ様に次ぐ成績保持者!なぜここに!」
「説明的なセリフをどうもありがとう。簡単に言えばフェイトからメールで救援を要請されたからだ」
 アリサがフェイトを睨み、その眼光にフェイトが怯える。
「ありがとうフェイトちゃん!ありがとう君!これでなんとかなるかも!」
「た、たすかったぁ・・・」
「ほら救援物資。終わらせた宿題に、終わってからの御褒美に翠屋のスペシャルケーキセットだ。早く終わらせるようにな。後丸写しじゃなくアレンジして写しておけよ」
 まるで迷子が親を見つけて嬉し泣きしているかのような目のなのは・すずか・フェイト。
 もたらされた希望と御褒美に俄然やる気が増す3人。
 早速作業に取り掛かっている。
 しかし、アリサだけがを睨み付ける。
「どうしたよアリサ。さっさと片付けないとケーキが食べられないぞ?」
「なんで手伝ってくれんのよ」
「お前は俺が相手になると途端にやさぐれるなぁ。お隣さんが助けてくれって言ってるんだから
助けるのは当たり前だろう?」
 じつはハラオウン家と家はマンションのお隣さんであり結構交流があったりする。
 フェイトが学校に来る前からリンディに学校でのフェイトの事を頼まれていた。
 アリサがため息を吐き作業を開始する。
 しかし、アリサは救援物資に目もくれずに自力で解いていく。
「どうした。俺の宿題は見ないのか?」
「いいんだよ。アリサは自分でやるらしいから」
は顔をしかめて、
「それは難しいぞ。ウチの学校進学校だけあって宿題の量が半端無いんだから」
ちなみに宿題はドリルが各教科二冊、一冊30ページ程である。
「私の頭ならこの程度どうって事無いわ!」
 確かにほとんどノータイムで回答している。
「このペースなら夜中の3時には終わるな。まあがんばれ」

2時間経過・・・・・

「うえ〜〜〜ん。終わんないよ〜〜〜!」
「宿題多すぎるよ〜〜」
「全く。そんな大事な物を忘れるからだぞ」
 どうやらクロノが帰ってきて居るようだ。
「そういうなって。忘れてたものは仕方ないし」
 が弁護する。
「君なぁ。ってどうしたんだ? それ」
「差し入れ。リンディさんに台所借りたんだよ」
 は大きなトレイにサンドイッチを結構な量を乗せていた。
「ほ〜ら4人とも一息入れな」
「ありがとう〜みんなきゅうけいしよ〜」
 疲労のためか全てひらがなになっているなのは。危険な兆候である。
「眠気覚ましにコーヒーも入れたからな。ブラックで飲むように」
「ちょっと厳しいけど・・・ やっぱり砂糖とミルクが欲しい」
「甘えんな。後でデザートが待っている」
 その様子を見て居たクロノは。
「君らの精神年齢って高いよなぁ。正直普通の九歳児じゃないだろう」
 その言葉に小学生組みは顔を見合わせて、こう答える。
「家ってほら色々あったから・・・」フェイト
「私んちもお父さんが怪我したりとかお母さんが忙しかったりとか」なのは
「私は両親居るけどお仕事忙しくてお姉ちゃんとノエルさん達に育てられたようなもんだし」すずか
「家も両親居るけど将来家を継ぐ関係で色々勉強してたりするし」アリサ
「俺は母子家庭で母さんがしょっちゅう海外出張するから一人暮らし同然だし」
「「「「「他人に迷惑掛けない為にも精神的に大人になるしかなかったんだよね・・・」」」」」
 遠い目をしながら自分たちの境遇その他に共感を覚える5人。
 それぞれ複雑な家庭環境にあるようだった。
 そんな子供たちを見てクロノが引きつる。
 そう言えば自分もこんな感じだったっけ、等と遠い目をしながらなんとなく思う。
 しかし・・・自分は此処まで大人だっただろうか・・・
「あ、おいしい。・・・すごいね・・・パンや野菜にも下味がついてるよ」
「翠屋で食べたサンドイッチを自分の味覚と記憶だけで再現したんだけど、うまくいってるみたいだね」
「ああ、道理でどこかで食べた味だと思った」
「すごいねー。料理得意なんだ」
「私も切ったり焼いたりするのは得意なんだけどなぁ」
 料理談義に花が咲きはじめるが・・・九歳の会話ではないのはどうだろうか?
 一部はいっぱしの料理人の会話である。
「さて、休憩は終わりにして続きだ続き。どうせだから最後まで見守るからな」
「見張るの間違いじゃないの?」
「ならそうしてやろう。きりきり写せうつけども」
「う、うつけって?」
「昔の言葉で馬鹿ってことだよ・・・」
「うう。二の句が継げない・・・」
 言いながらも物凄いスピードでアレンジ写しを行う3人。
 アリサも能率が上がってきたのかスピードが上がっている。
 この分だと1時ごろには終わりそうである。
 は使い終わった食器を持って部屋を出る。
 クロノも女の子だけの空間に男一人は嫌なのかについて部屋を出た。
 修羅場の夜はまだまだ続く。

 その後宿題は終わったものの今回の事が元でなのは・フェイト・すずかは に頭が上がらなくなり、命令されることは無いのだがこの事によりある秘密がばれる羽目に陥るのだが・・・それはまだ先の話。


 なお、美由希は宿題を終えられず廊下に立たされ、それを聞いた恭也に散々馬鹿にされきつい修行を追加されたらしい。
 どっとはらい。






後書き
 リリカルなのは夢です。
 ちなみにアリサはをライバル視し、フェイトは色々な場面でさりげなく助けられた事で淡い恋心を抱いており、なのはとすずかにとっては頼りになる男友達という間柄です。
 この作品は短編連作になるかもしれません。




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