ミッドチルダの不破邸にて
 は大きな会議が終わりその疲れからか、日も暮れぬ内から
ベッドに入って爆睡していた。
 助手であるアインも激務で動作に支障が出たためメンテナンスユニットでスリープモードに
入っているので二日間は動く事は無かった。
 ペット兼従者の魔獣ノワールは縄張りの見回りをしていた。
 広さが広さなので一晩は軽く掛かると思われる。
 その為不破邸はいま限りなく無防備な状態だった。
 そして・・・その不破邸に、怪しい人影が現れ、真っ直ぐにの元へ向かっていた・・・。



 吸血鬼 襲来 !!



 その二日後

 機動六課の隊長室に、それぞれの小隊の隊長と副隊長が集まっていた。
「最近はレリック絡みの事件がおこらへんなあ」
「もう準備を終えてしまっているのかもしれないけどね・・・」
「ならこちらも準備をするだけだ」
「あいつらも大分マシになったしな」
「同じ事はもうしたくないだろうけどね」
 これからのことの対策を立てるつもりだったのだがそれも身に入らず雑談をしていた。
 そんな平和を甘受している彼女達に地球の友人から緊急連絡が来たのだった。
『なのは! フェイト! はやて! 聞こえてる!!?』
「アリサちゃん?」
「何かあったの? そんなに慌てて」
 アリサは今までも見た事が無いほどに取り乱していた。
『何かあったもなにも! すずかが行方不明なのよ!!!』
「・・・・・・・・え?」
「な、なんだと!!?」
 伝えてきたのは彼女達の幼馴染である月村すずかの失踪だった。
「誘拐事件なの!?」
『分かってる限りじゃ本人が自分で出て行ったみたいなんだけど・・・あの子今ちょっと拙いのよ!』
「拙いって・・・何が?」
 ヴィータの疑問にアリサはあからさまにうろたえ・・・
『と、とにかく今のすずかは精神的に普通の状態じゃないの!! もし見つけたらバインド掛けてでもいいから
押さえつけてこっちに搬送して!』
 誤魔化した。誰もがそう思っていた。
 アリサは何を考えたのか羞恥で赤面している。
 しかし内容が物騒なのだが・・・
「なあアリサちゃん。すずかちゃんに何があったのかはわからへんのやけど・・・こっちに来たって
言う証拠とかはあるん?」
「それに彼女は月村財閥の御令嬢だ。そちら世界での営利誘拐なのでは?」
 はやてとシグナムはもっともありえそうなことを聞くが、アリサがすぐさま答える。
『疑問はもっともなんだけど・・・まず誘拐は無いわ。こっちの裏の人間には月村がどういうものなのか
よく分かってるから、手を出す事はまず無いはずよ。それと別荘においてあるトランスポーターのログに
ミッド行きの履歴が残ってたのよ。だからそっちに行った筈なんだけど・・・座標しかなくて場所が特定できないの』
「?・・・いまいちよく分からない話なんだけど。まあとにかく座標を送ってくれる?」
『分かったわ。今そっちに送るわね』
 アリサの説明にも彼女達には事情の分からないことが含まれていたが、とりあえず座標を照合する。
 そこは・・・・・
「ここって・・・君の屋敷だ!!」
の家!? すずか・・・あんたまさか・・・!』
 はやてはに連絡を取ろうとするが、一向に繋がらない。
『はやて。 繋がった?』
「あかん。一向に応答が無い」
『今すぐのところに向かって! あんた達にとって良くない事が起こってるわよ!』
「わ、分かった。大した事件もないし、一応総出で行ってみよ」
 彼女達は互いに頷きあい、六課のフォワードメンバーを引き連れて不破邸に向かったのだった。


「ここが・・・不破総帥の・・・」
「そうだよ? どうかしたのティア?」
 ティアナは初めて見る豪邸に呆然としていた。
 スバルは平然としている。というか一時期こっちで過ごしていたのだ。
「金持ちって・・・・」
「まあ、将来の事も考えての事やけどな」
「半分くらいは研究所なんだけどね」
 不破邸の建物の半分は研究および実験スペースであり、もう半分は居住区である。
 離れには再現した日本家屋、というより武家屋敷があり実はこっちにシグナムの私室があったりする。
 時代劇が好きな彼女にとってこの空間はかなり住みやすいらしい。もたまにこっちを使う。
 その庭にはヴィータが海鳴の老人会の爺様たちから仕込まれたらしい見事な盆栽があったりする。
「まずは中に入ろっか」
「そうだね」

 中に入った途端、黒い何かがメンバーに、いやキャロに飛び掛った。
「な・・・! く、黒豹!!」
「キャロ! この、離れろ!!」
 エリオが黒豹に向かってストラーダを振り下ろすが、尻尾で足払いをされて転ばされる。
 黒豹はキャロに噛み付き・・・とかそう言う事はせず、しがみついたまま甘えていた。
「もう、ノワール。驚いちゃったよ?」
「くるるるるる・・・」
 黒豹―ノワール―はすまなそうに喉を鳴らした後、キャロを背中に乗せて歩き始めた。
 フリードもノワールの頭に乗っている。
 なにやら喋っているようなのは旧交を暖めているからだろうか?
 エリオは事態についていけずに呆けた顔でキャロを見ていた。
「え〜と・・・どーゆーこと?」
「この子はのペットというか従者というか。ノワールって言うんだよ」
 ノワールはスバルたちの視線も気にせず上機嫌でキャロをおぶっている。
 キャロも久しぶりだからか顔が緩んでいた。
「ノワール。すずかちゃんについて何か知ってるの?」
 なのはの問いに、ノワールは少し声を上げる。
 普通なら誰も理解できないのだが・・・数少ない例外がここにいた。
「すずかさんなら来たって言ってますよ。様子がおかしかったらしいですけど」
「待ってキャロ。ノワールの言葉が分かるの?」
「うん。そうだよエリオ君。鳥獣使役は得意だから」
 そういうことらしい。
 フェイトは驚きもしないが他のメンバーは驚きを隠せなかった。
「様子がおかしいってどんな感じに?」
「・・・え? 待ってノワールそれ本当なの?」
 ノワールが何かを言ったらしいがキャロは慌てて聞きなおしている。
 何か信じられない言葉だったらしい。
「キャロ?」
「え、えっとその・・・は、発情してたって・・・」
 全員の顔が真っ赤に染まる。
 発情というのはつまり・・・・・・・・・・
「フェイトちゃん。はやてちゃん」
「うん!」
「はよいかな君の貞操が!!」
 全員よからぬ妄想をしながらの部屋に走っていった。

「アイン!? 悪いけどそこどいてくれる?」
「申し訳ありませんはやて。ここに踏み入るのは色々と拙いのです」
 の部屋の前ではアインが門番のように立っていた。
「はよせな君が!!」
「申し訳ありません。既に手遅れです」
 手遅れという言葉を聴いてに好意を持つ何人かが膝を付いた。
「・・・いつからなの?」
「二日前の深夜からです。仕事に疲れきったドクターは日も落ちないうちからお休みになられたのですが、
寝ているところを襲われていたそうです・・・」
「三日くらいその・・・ずっと・・・?」
「はい。休憩はされているようなのですが・・・」
 彼女達は脳内妄想が凄いことになってきていた。
 そこに地球からの通信が届いた。
『はやて、はどうだった?』
「・・・・・・手遅れやった」
『そう・・・とうとうやっちゃったか・・・』
 親友の凶行にアリサは頭を抱えていた。
「アリサ・・・事情、知ってそうだね」
『・・・・・・・・あの二人が部屋から出てきたら説明するわ。二人を交えてね』
 アリサは非常に言いにくそうに言葉を搾り出す。
 だがそこにある意味救いの手が差し伸べられた。
『少し待っててくれ。身だしなみを整えたら説明する』
「「「「(君)!!!!」」」」
 それはすずかに美味しく頂かれていたはずのだった。

 シャワーを浴びて着替えてきたは、はっきりいってやつれていた。
『大丈夫なの?』
「いや、うん。精も根も尽き果てるというのを生身で体験したわけだが・・・正直きつい」
 それはもう本当に辛そうだった。
「ごめんね君。私加減がきかなくて・・・」
 そしてその場にはえらくすっきりした感のあるすずかも同席していた。
「もういいか? 早いとこ説明してもらいたいのだが・・・」
「分かった。いいんだな、すずか?」
「うん。今回の事は私の一族の体質から来てることだから・・・」
 全員が姿勢を正して話を聞き始めた。
「私達月村と複数の家は夜の一族と呼ばれる特殊な一族なの」
「夜の・・・一族?」
 なのはが訝しげに聞く。
「一説によると人間の突然変異の定着種なんだと言われている。血を用いる事で超常的な
能力を行使する事が出来る一族だ。・・・・・・・・俗称吸血鬼」
「きゅ、吸血鬼ぃ!!」
 はやてが声を上げて驚く。シグナムたちも視線が厳しくなっていた。
「私達は人間とは比べ物にならないほどの身体性能を持っています。でもその代わり体内の鉄分を
生成する力が非常に弱いんです」
「・・・・何か悪いのか?」
「貧血を起こしやすいんだ。そこで彼らは自分達にとって完全栄養食である血液を直接摂取する事で
その強靭な体を維持している」
「それで吸血鬼か・・・」
 フェイトが納得したように声を漏らす。
「ところで、おにーちゃんはいつそれを知ったの?」
「小2の夏だ。なのはは覚えているかどうか分からないがアリサと三人で月村邸にお泊りしたことがあってな」
 なのはも思い出したのか頷いている。
「四人で一緒に寝てたんだけど、私寝ぼけちゃってて朝起きたら君の首筋に喰らいついて血を吸ってて」
「丁度目を覚ました俺がそれを目撃して、逃げようとするすずかを押さえつけて事情を聞きだしたわけだ」
 怖がりすらせずに平然とそういうことが出来るに何人かが呆れたようにため息をつく。
 他はどんな状況でも動じないに感心しているようだった。
「私達の世界ではそういう存在は公には存在しない事になっているの。だから事情を知ってしまった人には
私達はある選択を迫ることになるんだ。全てを忘れるか、それとも友人か恋人としてそばにいるか・・・」
「当時の俺達は恋だの何だのはまだ理解できてない歳だったんでな。順当に友人として落ち着いたわけだ」
「それからは色々とお世話になってたんだ。時々血を吸わせて貰ったりね」
『だけど長く付き合ううちに恋心が芽生えちゃったらしくてね・・・』
 それで今回のことが起こったのだという。
「あの・・・すずかさんが発情していたって言うのは・・・?」
「ああ・・・それなんだけどね。私達夜の一族は・・・その・・・」
 すずかが言いにくそうにしているのを見てが代わりに答える。
「夜の一族は生殖能力が弱いというか、出生率が低いんだ。それを補うかのように
数ヶ月に一度の割合で発情期が存在している」
 その事情を聞いた彼女らは目を丸くして驚いていた。
「じゃ、じゃあ・・・今回は・・・」
「その・・・そういうことで・・」
 なんともいえない空気が部屋を包んでいた。


 皆が沈黙する中、アリサが言いにくそうに声をかける。
『ねえ。一つ聞くけど・・・アウト? セーフ?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アウトだ」
 の返答を聞いてアリサが頭を抱えて突っ伏し、すずかが顔を真っ赤にした。
 なのは達もその内容に気付いたのか難しい顔をしている。
 そしてはやては――――
「そんな・・・一番初めに君の子供を身ごもる野望が・・・・・!」
 自身の野望(そういうほどのものでもない)がくじかれた事を知ってがっくりと崩れ落ちた。
『はやては置いておくとして・・・、あんたねぇ・・・』
「仕方がないだろう・・・。こちとら政府から依頼された海上都市計画のことで休む間もなく
会議に次ぐ会議の連続で、ようやく基礎部分の概要が完成したところで切り上げて休んでるところに
すずかの襲来だぞ? しかもだな、寝てる間に既に手遅れだったんだぞ? 俺に何が出来たと?」
「す〜ず〜か〜ちゃ〜ん?」
「は、はやてちゃん落ち着いて? ね?」
「落ち着けるわけがないやんか!!!」
「私だって正常じゃなかったんだよ? 発情期に入るとえっちな事で頭の中が一杯になっちゃうんだよ!?」
 憤るはやてにすずかが必死に弁解している。だがその顔が緩んでいるのは誰もがわかっていた。
『あんたも災難ね・・・』
 まさかの事態にアリサはに同情していた。
「お前も頑張ってると思うぞ? 今まで相手してたんだろう?」
『言わないでよ・・・。一応言っとくけどあたしもすずかもノーマルよ?』
「知ってる。あの状態のすずかは本当に適当な男にまで声掛けそうだったからな・・・」
『そこいらの男よりもあんたが相手のほうがすずかにもあたしにとってもいいわよ・・・。
 複雑である事は違いないけど・・・』
 実は今まで発情期に入ったすずかの相手してきたのはアリサとファリンだった。
 なお彼女達は基本的にノーマルである。
 アリサもすずかもこの事に関しては多分に過剰なスキンシップとして認識する事で何とか自分を保ってきていた。
君!! 今すぐ私と子作りを!!!」
「無理だ。それにもうすぐ公開意見陳述会が控えている今そんな事しててどうするんだお前は」
 はやての懇願をはばっさりと切り捨てた。

「あの・・・おにーちゃん? 八神部隊長物凄い落ち込んでるんだけど・・・」
「経験上勢いに流されるとろくな目に会わないんでな。それに・・・」
「予言の事があるからね・・・」
 落ち込むはやてを尻目に真剣な顔で話すとフェイト。
「言っておくが俺は手を出さんぞ?」
「・・・・・・・・管理局が危機に陥っても達には特に関係ないから・・・だよね?」
「その通りだ」
 二人の会話にスバルやティアナが色めきだす。エリオは信じられないといった顔でを見ている。
「おにー・・・ちゃん? どうして・・・」
「な、何故関係ないんですか!?」
「世界の司法が無くなるかも知れないのに!!」
 声を上げる3人にはただ当たり前のように言葉を返す。
「管理局がつぶれたからといって世界が崩壊するわけじゃない。犯人達が世界征服を企んでいようとも
それを望まないもの達が全力を持って阻止するだろう。その時は管理局の法が働かない以上可及的速やかに
事件は収束する事になるしな」
 の言葉に誰もが呆然とする。その言葉の意味はつまり・・・・・・
「か、管理局がないほうが・・・解決が速いって事なんですか?」
「その通りだ。無駄に法を敷き詰めている所為で民間の魔導師は一切手が出せないし、奴らに対抗出来得る装備を
開発する事もままならない。知っているか? 対AMF装備の開発は管理局の法で禁止されたんだぞ?」
 の言葉に全員が信じられないといった顔で固まっている。
「な、なんで・・・」
「困るからだろう? 奴らが」
 はなんでもない、当然の事だといわんばかりの顔でキャロのつぶやきに答える。
 対AMF装備を造るに当たってまずする事はAMFを解析する事だ。
 その過程で魔導師を無力化する技術が開発されれば魔導師がメインである管理局はその戦力が
消滅するのと同じ事になる。その恐れから対AMF装備の開発が法で禁止されたのだ。
「まったく・・・せっかく色々と造ったのに全部おじゃんに・・・」
 空戦用のガンナーユニットとか陸戦用の武装バイクとか戦闘用に改造した救助用の強化外骨格とか・・・
 すべて魔力駆動ではない新型エネルギー駆動の装備である。なおその出力は戦闘機人よりも上だったりする。
エネルギー効率が圧倒的に違うのだ。
「そうそう、造った装備だが、一部個人的にティアナに贈ろうかと思うんだが・・・」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!!」
 ティアナに使えるであろう代物のみであるが、かなりの戦力になるだろう。
 あと対AMF装備の開発禁止法はもちろん評議会の肝いりである。
「お前たちはこの事件の背景は知らないんだろう?」
「スカリエッティが事件を起こしている・・・だけじゃないのか?」
「・・・・・そもそも事件の発端がなんなのかも知らないんだし仕方はないか・・・」
 シグナムの言葉にが肩をすくめる。
「戦闘機人の開発はそもそも誰がやっていたのか? それはお前たちなら想像は付くはずだろう?」
 が隊長陣を、特にフェイトを見ながら言葉を投げかける。
 そしてフェイト達は・・・かつての事件を思い出し顔色が蒼白となる。
 付いてしまったのだ。想像が・・・
「管理局は・・・生命操作の研究を・・・していた・・・」
「「「「え?」」」」
 フェイトの呆然とした言葉にフォワード陣が一斉に振り向く。
は・・・その研究によって生まれた存在の一人だった・・・」
「「「「え? ええっ!?」」」」
 今度はの方を向く。
「正義を自任するものは時折人の道を外れる。これは正義のためだ、だからこれは正しい事なんだと、
正義という名の大義名分を携えて・・・」
「人を殺し、命を弄び、暴走の限りを尽くす。正義の名の下に・・・。そしてそこには悪意がない」
 とアインの言葉にフォワード陣は呆けたようにソファに倒れこむ。
 そう、彼女達も理解したのだ。この事件の発端は・・・
「管理局が・・・この事件を引き起こした・・・?」
「信じ難いことだろうがな。他にも色々と裏事情はあるんだが・・・知らないほうが良い」
 色々と汚すぎる裏があるのだ。この子供達に聞かせるような事ではなかった。
「まあ、お前たち現場の人間は気にする事じゃない。起こる事件を解決するのがお前たちの仕事だ。
 こういう政治的な、内部の悪事は監査部や上層部に任せれば良い」
 の言葉に隊長陣は無言で頷く。
「お前たちもだ。誰が悪いか、捕まえたそいつらをどうするかはお前たちには関係ないんだ。
 目の前で行われる犯罪を止める。目の前にいる犯人を捕まえる。邪魔な連中は叩きのめす。周りに被害を出さない。
 それだけを考えろ。迷っていては相手に殺されるだけだ。真っ直ぐ突き進め」
 の言葉に顔をしかめながらも一応頷くフォワード陣。
『まあそんなにかっこつけても今の顔色では締まらないけどね』
「・・・・・それを言うなよアリサ・・・」
 今にも倒れそうなぐらいにやつれているは、心底疲れ切った溜息を吐いてソファに倒れこんだ。
 そんな情けない姿を見てその場の全員は苦笑していた。
 原因であるすずかだけは申し訳なさそうな顔ではあったが・・・


『ところで、これからどうすんのよ。発情期にしちゃったらほぼ確実に出来ちゃってるわよ?』
 アリサの言葉に隊長陣は頭を抱え、フォワード陣は顔を真っ赤にする。
 とすずかは・・・・・・あまり困っていなさそうだった。
・・・なんでそんなに落ち着いている」
「・・・・・・シグナム。俺が一夫多妻の権利を持っているのは知っているだろう?」
 子供達が驚いた顔でを見る。実を言うと彼女達はと隊長三人の関係を知らなかったりする。
「確かにそうなんだが・・・」
「それにな。俺は月村の親父さん方に気に入られているというか・・・嫁にもらえ、もしくは婿に来いと
誘われていたんだよ・・・困った事にな」
「私達の一族はその特殊性や全てを知りながら当たり前のように接してくれる君を気に入ってるの。
 しかも一夫多妻が可能だって聞いたときから君や私にその事をずっと言ってて・・・」
 なのはもはやても少し困った顔で、しかし相手が見知った相手だからか満更でもなさそうだった。
 しかしアリサは・・・・・・・
『ねえ。私は三人までだってクロノさんから聞いてるんだけど・・・』
「あ、あたしが聞いた限りじゃあ、無制限だって聞いたけど・・・」
 無表情でに聞いてきた。その表情に若干おびえるヴィータが震える声で答える。
 フェイトは義兄の名前を聞いたときに盛大に顔を引きつらせる。
 その手に握るバルディッシュが鈍い光を放っているのは気のせいだろうか・・・
「アリサちゃん・・・やっぱり君の事・・・」
『し、仕方ないじゃない。周りにろくな男がいないんだし・・・』
 アリサは必死に言い訳しようとしているがどんどんどつぼに嵌っていっている。
「で、君。アリサちゃんに好かれる心当たりは?」
「小5の春ごろに起こった事件『それ以上言うなっ!!』やっぱりそれか・・・」
 自爆したアリサが顔を真っ赤にして突っ伏している。
 なお事件とは誘拐未遂事件で偶々近くにいたがアリサの悲鳴を聞いて神速を使って駆けつけ
アリサを取り囲む数人の男(父親の会社のライバル会社が雇ったならず者ども)に暴行される寸前だった
アリサを助け出した事件だった。
 なおその会社はある組織の関係企業で、殴り倒した男のうちの一人に昇竜の刺青をした男がいるのに気付いた
美沙斗に通報し、月村家・バニングス家が会社を経済的に追い詰め、その裏で動いていた組織を香港警防隊が徹底的に
下部組織に至るまで殲滅したという大事件に発展したのだった。
 なお一切表沙汰にはなっていない。
 その事件で娘を助けてもらったアリサの父や母は元々気に入っていた少年に娘が恋をしたことに気付き密かに応援し、
数年後一夫多妻が可能になったにアリサを任せようと画策していたりする。
 もっともクロノから偽情報を流された事で頓挫していたが・・・
『ああもうっ!! っ!! すずかと一緒に私の事も嫁にもらいなさいっ!!!!!』
「待てアリサ。それがプロポーズの言葉か!?」
 思わず突っ込むだが、なのは達の時も似たようなものだったと思い出す。
 は助けを求めるようにすずかを見るが、
君。不束者ですがアリサちゃんともどもよろしくお願いします」
 三つ指をついていた。
「最早逃げ道はないな」
「・・・・・・・もう好きにしてくれ・・・」
 元々姉妹のように仲が良かった彼女達は歓声を上げて喜び、アリサをミッドに呼んで宴会を始めようとしていた。
 話について来れなかったフォワード陣は戸惑いながらに祝いの言葉を言い、キャロに案内されて
屋敷の見学にくりだしていった。

 その後改めて家族会議を開きそれぞれの家も納得し、むしろ諸手をあげて喜んでいた。
 その際アリサからクロノの悪行(偽情報の散布)がハラオウン家に伝えられ、その事でアリサが苦しんでいた
事を聞かされたリンディとエイミィが前回のまだ済んでいないお仕置きを更なるものに進化させる事を話し合い
色々と策を練り始めたという。

 あと、次元航行艦クラウディアの艦長室で謎の爆雷が観測されたらしい。
 どっとはらい。


――おまけ・武装をプレゼントしてもらったティアナとの会話―――

「あの・・・総帥。これってバリバリに質量兵器なんじゃあ・・・」
「まあAMFの効果がないものになると自然にそうなるな」
「やばいんじゃありません? 管理局は質量兵器の開発を禁止してますよ?」
「奴らの作ってるアインヘリアルも似たようなものだ。というより規模で言うと管理局のが拙い。
 あれは使いようによっては街一つ余裕で焼き滅ぼす」
「・・・・・・・・・・・・・・・・マジですか?」
「マジだ。俺の贈ったそいつらは最高出力でもAA+相当だ。いやリミッターを外せばAAAは
行くんだが流石にアインヘリアル程の威力はない。ただ機動力という面で見れば比にはならんが・・・」
「乗ってみたんでそれは分かってます。物凄い私好みですけど」
「ティアナ用に調整したからな。事実上専用機だ。デバイスを組み込む事でAIを管制システムに出来るしな」
「・・・・・・あの、捕まるような事にならないですよね?」
「させんよそんなこと」
「断言しますかそこで・・・」
「今回の事件が終わったらその辺の規制を緩めさせるつもりでいるんだよ。というかAMF技術が
すでに裏に流出している以上魔法だけでは限界が来るぞ?」
「質量兵器が必要になる時代が来るんですね・・・」
「それでも街一つ焼けるような超高威力のそれは規制するぞ? あくまで最高AAランクの魔導師ができる事と
同レベル程度の威力しか認める気がないしな。そうでないと旧暦の二の舞だ」
「その辺はきっちり考えてらっしゃるんですね」
「事件後は色々と内部から変えないといけないからなあ・・・忙しくなりそうだ」
「頑張ってください。皆さんのためにも」
「まあ、回りまわって自分のためにもなるしな。少し気張りますか」



後書き
すずかとアリサの強襲。
というよりやっちゃった話でした。
途中で出てきたアリサの事件はとらハでのアリサ・ローウェルの事件が
アリサ・バニングスにも起こったのですが主人公が助けたという設定です。
その時からアリサは主人公に恋心を持っていたり・・・
すずかについては、発情期ネタは夜の一族を出すと出したくなるネタですので。
ノワールは匂いでなんとなくすずかの存在と状態に気付いたようです。
なお結婚後は、はやてやすずか・なのはは不破姓になりますがフェイトとアリサはミドルネームにFが付いて、
子供はそれぞれ母親の旧姓になる予定です。なのはの子だけ不破姓になりそうですが・・・
クロノについては・・・・・・・・ささやかな嫌がらせだったと思ってやってください。
彼はこういう事に関しては主人公と激しく一方的に敵対してますんで・・・

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