その日、予言が成就した。



 成就した日



 地上本部で開催された公開意見陳述会。
 厳重な警備の中、スカリエッティ率いる戦闘機人達と多数のガジェットが
地上本部を襲撃、多大なる被害を与えたのだった。
 防衛任務についていた機動六課だが、隊長陣はデバイスを取り上げられ本部の中へ。
 フォワード達は地上本部の地下で機人と戦闘、ほとんど何も出来ずに逃走するしかなかった。
 空ではヴィータとリインが騎士ゼストによって敗北。
 駆けつけた首都防衛隊も機人の航空戦力2機によって一方的に蹂躙された。
 その中で、ギンガ・ナカジマが機人4機に囲まれ、死闘の末に敗北。拉致された。

「わ、我々が4機相手でなお互角以上とは・・・!」
「何でこんなに強いんだよ! オレたちよりも強いじゃねえか!」
「あの人の直弟子らしいっすよ・・・」
「な、納得・・・・」
 チンク・セイン・ノーヴェ・ウェンディはボロボロになりながらもようやく撃破したギンガを眺めながら
話をしていた。しかし彼女達には気に掛かる事があった。それは・・・
「何で最後の方、あたしらを倒せるチャンスがあったのにやんなかったんすかね?」
「さあな・・・だが、予定通りゼロ・ファーストを回収するぞ」
「うぃっす」
 ウェンディとセインが回収用のトランクにギンガを運ぼうとしている時、そこに彼女が現れた。
「ギン・・姉・・・?」
「ちっ、ゼロ・セカンドか」
「まさかここで来るとは・・・」
 スバルはズタズタにされた姉の姿に呆然としている。そして・・・・・・・・
「ギン姉・・・ギン姉を、返せええええええええ!!!!!!」
 暴走。怒りの咆哮と共に目の色が変化し、凄まじいエネルギーを放出する!
「セイン・ノーヴェ・ウェンディ! 早く行け! 姉がしんがりを勤める!!」
「で、でも!」
「姉が一番軽傷だ! それに触れずに戦う事が出来る!」
「・・・わかったっす! チンク姉ご無事で!」
「ほら行くよノーヴェ!」
「ちっ! 分かったよ!」
 ギンガを回収し終わった彼女達はすぐさまその場を離れていった。
「来い! ゼロ・セカンド! 私が相手だ!」
「うああああああああああああああっ!!!!」
 暴走したスバルと手負いのチンクがぶつかり合った。


 その頃の機動六課隊舎は機人たちの襲撃を受けていた。
「なかなか良くがんばった」
「く・・・主力がいないときに攻めて来るなんて・・・!」
 シャマルもザフィーラもほとんど一方的にやられ、二人とも既にボロボロにされていた。
「それもこれで終わり。IS発動、レイストーム」
 その機人、オットーが光線を発しあたりを薙ぎ払う。
 シャマルとザフィーラはなすすべなく吹き飛ばされ、意識を失った。

「くそ・・・! ヴィヴィオ嬢ちゃん! 逃げろ!!」
「あ、あああ・・・・!」
 ヴィヴィオはヴァイスに守られながらも追い詰められていた。
 目前には長い髪と赤く輝く刃を持つ機人・ディード。そしてその後ろには幼い召喚師ルーテシアと
その召喚蟲ガリューがいる。逃げ場は無かった。
「邪魔です」
「がっ!」
 ヴァイスがディードに倒され、絶体絶命なその時、ヴィヴィオの脳裏にの言葉がよぎる。
―いいかいヴィヴィオ。危なくなったらそのぬいぐるみに助けてって言うんだよ―
「た、助けてうさたん!!」
 ディードたちは幼い彼女が気でも違えたのかと思ったその瞬間、風が吹いた。
『ヴィヴィオをいじめるなーーーー!』
 なんとヴィヴィオの持つウサギのぬいぐるみが間近に迫っていたガリューの顎にジャンピングアッパー!
 ガリューは天井すれすれまで打ち上げられ、そのまま顔から地面に落ちた。
 予想外にも程がある事態に思わず停止するディードとルーテシア、あと迎えに着たオットー。
 ヴィヴィオはパパがプレゼントしてくれたウサギの勇姿に目を輝かせている。
「と、とにかく確保を!」
『そんなことさせない!』
 近付こうとするディードの進路をふさぎ、間合いに入ったディードのどてっぱらにミサイルキックをかますうさたん!
 ディードはその小さな体に見合わない威力の攻撃によって途中の壁を粉砕しつつ吹き飛ばされる。
「ごほっ! げほっげほっ! な、何なんですかあのぬいぐるみは!?」
 このぬいぐるみの正体、それはがノリと勢いで作った幼児用ガードロボット試作機ヴィヴィオ命名うさたんである。
 近年増加傾向にある幼児を狙った犯罪(誘拐・変質者による性犯罪)等から守るために作ったため
子供が持っていても見た目的に問題ないぬいぐるみ型、ロボット型、特撮ヒーロー型が存在している。
 しかし、あくまでそういった者たちを想定して作ってあるためさすがに戦闘機人にはかなわなかったりする・・・はず。
「よくもディードを!」
 オットーが光線を放つがうさたんは機敏に動き華麗にかわす。その時、うさたんはヴィヴィオに目配せし、それを
正確に理解したヴィヴィオが立ち上がり毅然と言葉を放つ。
「うさたん! でんこうせっか!」
『了解ヴィヴィオ!』
 命令を出すヴィヴィオと命令に忠実に動き凄まじい速さでオットーに体当たりを仕掛けるうさたん。
 まるでその姿は某ポケ○ンマ○ター。彼女はあのアニメの大ファンである。うさたんはもちろんそれを知っている。
 それを見たルーテシアが復帰したガリューを前にしヴィヴィオ&うさたんに対峙する。
 一瞬の静寂のあと、二人は動く!
「ガリュー、ブレード!」
「うさたん、かわしながらキック!」
 二人の命令のままにそのしもべが激突する! ガリューは腕に生やしたブレードで切りかかり、うさたんはぎりぎり
でかわしながら追撃の一撃を蹴りでいなす! 主二人は不適に笑いながら更なる命令を発し、ここに壮絶なるバトルの
幕が上がった。

 うさたんに吹っ飛ばされた二人は状況についていけずに部屋の片隅で体育座りしながら小声でルーテシアの応援をし
ていたそうな。忘れ去られそうになっている二人の背中はとてもさびしそうだった・・・


 地上本部の地下にて、なのはとティアナは先行したスバルと連絡が取れないことにあせりを感じつつ移動していた。
「ティアナ。スバルからの応答は?」
「だめです。全く応答が・・・何やってんのよあの馬鹿」
 二人はスバルとギンガの身を心配しながら移動し、恐ろしいまでに破壊された通路で倒れているスバルを発見した。
 スバルはわき腹と左腕が抉られ機械部分が露出し火花が散っていた。
「スバル! 大丈夫なの!? スバル!!」
「・・・ぅあ・・・ティア・・・?」
「スバル・・・良かった・・・ギンガは・・・?」
 なのはの言葉にスバルは泣きそうに顔をゆがめる。
「ギン姉・・・あいつらに・・・!」
 その言葉に全てを理解した二人は悔しそうに顔をゆがめる。
「でも、ギンガさんは連れて行ってスバルは・・・」
「余力が・・・無かったんだと思う。あたし暴走しちゃってISまで使ってたから・・・」
 スバルの体の事を知っている二人は自分たちの周りを見つつ納得する。
「ギン姉がかなり追い込んでたらしくて、あたしの相手は一人だけだったし・・・でも、その子かなり強くて・・・」
 周りの被害は彼女の攻撃を避けた際に出来たとの事だった。
「振動破砕の一撃を一度だけとはいえ食らわせたから・・・ただじゃすまないとは思うけど」
「うん、分かった。とりあえず地上に出よう。スバルの治療もしなくちゃ」
「はい・・・スバル、ちゃんと掴まってなさいよ」
「うん。ありがとティア・・・」
 なのは達は地上にもどって行った。

「戦闘機人・・・想像以上に手ごわいみたいだね・・・」


「くっ! タイプゼロ・セカンド・・・まだ未熟だが持っている能力は凶悪極まりないな・・・」
 チンクは何とか地上本部を脱出したが、アジトに辿り着けずに途中の森の中で身を潜めていた。
「通信は・・・だめか。振動破砕で精密機器を幾つかやられた所為だな・・・」
 今のチンクは損傷が激しすぎるため機能停止寸前だった。
 そこに誰かの足音が聞こえた。
「・・・・誰だ?」
「・・・ナンバーズのNo.5。悪いが私と共に来てもらおう」
「管理局か?」
「いや・・・。楽園だ」
 停止寸前のチンクに声をかけたのは、チンクと同じストレートの銀髪を持つ美しい女性だった。
 その女性の言葉に、チンクは頬が緩むのを自覚して、意識を失った。


 機動六課の隊舎で、ヴィヴィオは意識を刈り取られオットーに抱きかかえられていた。
 バトルの結果はルーテシア&ガリューの勝利。うさたんはバッテリー切れを起こしてしまい停止してしまった。
 ガリューは非常にボロボロな風体だがそこはかとなく満足そうな雰囲気が漂っている。一方うさたんはオットーと
ディードに念入りに破壊されてしまい無残な骸をさらしている。ルーテシアは残念そうだった。
 そして彼女達は帰還する途中、エリオとキャロが妨害に入ったものの難なく撃退し、彼女達は帰還して行った。


 不破邸のラボの一角、スバルとギンガの為に作った戦闘機人用のメンテナンスユニットの中でチンクは眠っていた。
 そしてそれを静かに眺める男女の姿。
「ドクター。どうでしたか?」
「スバルたちのデータを基に作っていた予備パーツが規格に合っていたらしく何の問題も無く修復が完了した。
 あとエネルギーバイパスに少々無駄があったんで改善しておいた。性能の方も15%ほど上がっている」
 はチンクの解析をすると同時に少しばかり改造していた。そもそもスカリエッティの専攻は生命研究であり
機械工学は専門外。その道の専門家であるから見れば充分に手直しする余地があった。
 予備パーツにしても一つ一つが以前のパーツよりも高性能なのだ。性能が上がるのは当然だった。
「で、あの話はどう思う?」
「信憑性はあると思います。彼女達がスカリエッティから逃れようとしているというのは嘘偽りが無いように
思えました。彼女のように支援してもよろしいかと」
「あいつか・・・。思えばあいつが一番初めに裏切ったな。まあ、潜入任務が長い所為で他の連中は気付いてなさ
そうだが・・・。チンク以下の7番・8番・12番以外の連中もこっちに付きたがってるって?」
「はい。彼女達の救援はどうしますか?」
「チャンスが来るのを待つしかないな。チンクの救助は運が良かったとしか言いようがない。
 もう少しで管理局に拿捕されるところだったらしいしな」
「はい。センサーで追っていたおかげかぎりぎりで回収できました。もし管理局に拿捕されていれば
彼女はろくな目に遭わなかったでしょうね」
「見た目かなり可愛い子達のようだしな、ナンバーズって。一部の馬鹿に慰みものにされる可能性もあった。
 ・・・・スカリエッティの趣味なのかねえ、これは・・・」
「さあ・・・それは分かりませんが・・・あと不審な点はありましたか?」
「胎内に別の生命反応があった。彼女達の性能その他から考えてスカリエッティのコピーである可能性が高い」
「コピー・・・ですか? 一体何の為に?」
「自分が捕まったり殺されたりしても代わりが利くからだな。プロジェクトFの記憶転写クローンを使えば
そっくりそのまま自分を複製できるからだろう。更に応用すれば戦闘機人たちを人間にする事も可能だが」
 これは簡単に思いついた。改造される前の体に本人の記憶があればいいのだから。
「望まないでしょうね。そういう風に作られていますし・・・」
「スバルたちも今の体のままで生き抜くと決めているからな。我ながら野暮な事だ」
 溜息をつきながら自分の無駄におせっかいな部分を戒める。
「ギンガの事ですが、良かったのですか? わざと捕まるように指示していたでしょう?」
「大丈夫だ。例え人格をいじられようとも数時間後に元の彼女に戻すようにするウィルスを仕込んである。
 それにこれは奴らのアジトを知るためだとギンガ自身が志願した事だ。それに、アジトの位置は
既に補足済みだ。いつでも行動できるが、その前に色々とやる事が出来た」
 壊滅状態の六課に色々と救援しなければならないうえに、スバルの修復用のパーツを送らなくてはならない。
 今すぐに攻め込むのは少し無理があった。
「守護者各位に伝令。第一種警戒態勢で敷地内の守護に当たれ。あらゆる脅威から楽園を守護せよ」
『了解しました。警戒態勢に入ります』
「地下ドック。もしものときの為にアレに火を入れておいてくれ。予言から考えて奴らは戦艦を所持している」
『了解。【箱舟】の起動準備をして有事に備えます』
「アタラクシア内の研究者及び職員達に告ぐ。これからミッドチルダに未曾有の危機が起こる可能性がある。
 研究と業務を一時中断し【箱舟】に避難せよ。混乱を起こさず怪我の無いように」
『了解しました不破総帥』
 はアタラクシア全域に命令を発し、可能な限り被害を少なくしようとする。研究中のデータが無くなって
も構わない。必要なのはそれを作り出す優秀なる研究者とそれを支えてくれる職員達だ。
「ミスティ。警護は任せたぞ。余裕があるなら被害を受けている地域に救援に行くようにしておいてくれ」
『分かったのですお兄様』
「さて、手伝えアイン。とりあえずチンクの胎内のコピーを破棄する」
「分かりましたドクター。お手伝いいたします」
 とアインは眠り続けるチンクを手術台に寝かせ、手術を開始した。



 スカリエッティのアジトで、ノーヴェたちは帰ってこないチンクを心配していた。
「くそっ、チンク姉・・・!」
「ノーヴェ・・・あせっても仕方ないっすよ・・・」
「管理局のデータを見たけど捕まってないみたいだよ」
「あの人に拾ってもらえた事を祈るしかないね・・・そうすれば何とかなりそう」
 ディエチの言葉に一斉に頷く姉妹たち。
 しかし彼女達は大好きな姉の心配をするあまり、少し注意力散漫になっていた。
「ほほう、僕を裏切るつもりかね。なかなか面白い事を考える」
「っ!! Dr!!」
 彼女達は反射的に身構えるが、その体を赤い魔力の糸が彼女達を締め上げる。
「くっ、しまった。油断した・・・!」
「貴女達がそんな事を考えていたなんてね」
「まったく〜。本当につまんない子達ねぇ」
「この愚妹どもが・・・」
 他の姉妹たちも現れ軽蔑するように捕まった彼女達を見ている。
 しかしオットーとディードは何か考えているようだった。
「クアットロ。この子達もタイプゼロ・ファーストのように人格を書き換えなさい」
「はぁいDr。覚悟してね貴女たち。ゼロ・ファーストみたいにお人形にしてあげるわぁ」
「くそっ! くそおおおおおおおおおおおおお!!!」
 姉妹であるはずのクアットロの嬉しそうな、楽しそうな顔にどうしようもない怒りを覚えるノーヴェたち。
 彼女達は調整用のポッドの中に強制的に入れられ、抵抗も許されず人格を書き換えられてしまった。

 その光景を見ていたオットーとディードの眼には、何かを決意したような光が宿っていた。







後書き
地上本部襲撃の日。
大体はアニメと同じですが細部が少し違います。
ギンガは主人公の直弟子だけありアニメ本編よりも強いです。よってセインを加えた四人での
死闘の末に撃破ということに。その為スバル対チンクの時は救援が期待できなかったのでスバルの攻撃は
ほとんどが回避されています。チンクは戦闘経験も豊富なはずなので普通にスバルより強いです。
彼女単機でゼストを倒してますしね。
そして傷ついた彼女は楽園に回収されました。
ヴィヴィオ対ルーテシアは気にしないでください。少しギャグ分が欲しかったんで・・・
そして他の裏切り組みの大ピンチ。
オットーとディードが何かを決めたようですが・・・さてどうなる事やら。

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