ある夜、草木も眠る丑三つ時に、ベッドに入りながらもなんとなく眠れずにいたの上に何かが覆い被さった。
くーん。夜這いに来たよー」
 ここのところ二人っきりになる事がない従兄妹な婚約者がパジャマ姿に上気した顔で恥ずかしげにはにかんでいた。


 勃発・嫁姑戦争(前哨戦)


 なのはの突然の来訪には面食らっていたが、はすぐに受け入れていた。
「・・・いい加減我慢が利かなくなったか?」
「うん。あれ以来ヴィヴィオがべったりだったし、君も忙しかったからね。我慢してたんだよー」
 なのははの胸に顔を埋めるように抱きつく。子供のように甘えてくるなのはに苦笑しながらなのはを抱き寄せ、
唇を重ねる。
「ん・・・ちゅ・・・」
 しっかりと抱きしめあい二人は絡み合うように横になる。
 しばらくの間お互いの感触や体温を感じあうように抱きしめあい貪るようなキスをしていたが、どちらともなく
体を離す。
「ここ最近は本当にご無沙汰だったな」
「うん。色々邪魔が入るからね・・・」
 お互い完全にその気になり、更なる行為へ発展しようとしたまさにその時!
「そこまでなのです高町なのは! お兄様から離れやがれなのですっ!!」
「・・・・・・・・・・・きたか」
「・・・・・・ふ・・・ふふふふふふ・・・いつも・・・いつもいいところで・・・!」
 一人の闖入者に部屋に漂っていた甘い空気は一掃され、が諦めきった顔で肩をすくめ、なのはが
暗い笑みをこぼし始める。
 闖入者の名はミスティ・コラード。なのはとは最悪の相性を誇るなのはの怨敵にして、の義妹である。

「いつもいつもいつもいつもいいところで邪魔して! 私の何が嫌なの!」
「存在そのものなのですよ! 悪名高き管理局の白い悪魔が! お兄様をたぶらかすのはやめるのです!」
君がアリサちゃんと一緒にいるときは率先して二人きりになるように人払いまでするくせに!」
「アリサお姉様は別なのです! あの方こそお兄様にはふさわしいのです!」
 喧々囂々。のことはそっちのけで大喧嘩を始めた二人には溜め息を吐きつつ無理にでも寝る態勢に入る。
この二人が喧嘩をすると口だけではなく魔力砲が飛び交うのでベッドの脇に仕掛けてあったバリアで身を守るのも忘れない。
なんというかもう、そういう気分も失せてしまっていた。
「いい加減決着をつけようか! レイジングハート!!!」
「望むところなのです! アチャラナータ!!!」
 二人はデバイスを取り出して―――
「「セットアップ!!!」」
 完全な戦闘態勢に移行した二人は、部屋の壁を破って外に飛び出し、凄まじいとしか言いようのない何処までも不毛な
戦闘をおっぱじめるのだった・・・

 一方、部屋の惨状を呆然と見ていたは胡乱気な目で二人が飛び出していった破壊された壁を見て決心する。
「・・・この屋敷にAMFの発生装置を仕掛けておこう。魔法が使えなかったらこうはならんはずだしな」
 壁が破壊された所為で風通しが良くなりすぎた部屋をでて、アリサの部屋に避難することにしたのだった。
 ついでに、の部屋のパソコンは【壁際】に設置されておりその被害を受けていた。


 ―――翌朝、といってもほんの数時間後。
「おはよう皆の衆」
「「「「おはよーございますー」」」」
 結局眠れなかったはリビングに来ていた。リビングにはスバルたちフォワード陣とヴィータとちびっ子たちが
朝のアニメ番組を見ていた。なかなか面白いらしい。一部は本部内に急遽設置した仕事部屋で泊り込みの書類仕事である。
 どうも書類の不備などが見つかり急ぎの仕事が出来てしまったらしい。
。なのはは? 昨日夜這い掛けに行ってたろ?」
 ヴィータの意地の悪い発言に思わず顔を赤くするフォワードメンバーだが、は疲れ切った顔で肩を落とす。
「ミスティが乱入した」
「・・・・・・・・夜中の戦闘はあいつらだったか。見覚えのある魔力光だったんで気にしないことにしたんだよな」
 どうやら昨夜のなのはの行動を知っていたらしいヴィータが遠い目であさっての方向を見始める。
「あの〜、おにーちゃんは二人を止めなかったの?」
「・・・そんな気分にもなれなくてな。さっさと不貞寝した」
 スバルの疑問に答えた後、気だるげな感じでソファに座る。
「あ、これどうぞ。コーヒーです」
「ありがとうティアナ。すまんがそっちのサンドイッチも取ってくれ」
「はーい」
 食事時の雑用当番があるらしく今日はティアナが担当らしい。ハムサンドをかじりながらなんとなく外を見ると――
桜色と朱色の閃光が遥か遠くでぶつかり合っていた。
 その場の全員が暫くその光景を見ていたのだが・・・
「子供達。今日は遊園地でも行ってこようか」
「「「わーーーーい!!!」」」
 何事もなかったかのように遊びに行く話をしていそいそと準備するのだった。


 ―――その頃の嫁と小姑
「エクセリオンバスターーーーッ!!!!」
「フレアブラストォォォォォッ!!!!」
 お互い完全に殺す気で魔法をぶっ放す! でも非殺傷設定。―主人が殺傷設定にしようとするのを必死になって
止め続けている健気なデバイス達に幸あれ―
 桜色の魔力砲と朱色の爆炎を伴った魔力砲がぶつかり合い相殺する。
「今日こそは、今日こそは決着をつけてやるです高町なのは!!!」
「それはこっちの台詞だよミスティ!! 後腐れなく潰してあげるから!!」
 なのははブラスター2を起動しビットを展開、ミスティはアチャラナータのビットシステム【八大童子】を
周りに展開し陣形を組む。それぞれビットと童子から魔力砲だの魔力弾だのが発射され、普通の魔導師からすれば
悪夢のような戦いが更なる幕を上げていた。端的に言うと、何処のNT専用機だお前ら・・・
 そしてその彼女達の周りには止めに入って返り討ちにあった守護者達が無残な姿をさらしていた。
「だ、だれか・・・あの二人を・・・止め・・・がくっ・・・」
「セ、セレーーーーース!!! 死ぬなーーーーー!!!」
「だ、誰でもいいから不破総帥呼んで来い!! 更に被害が広がるぞ!!」
「いやアリサ様だ! あの方なら問答無用で二人を止められる!」
「誰かアリサ様を召喚しろーーーーー!!!!」
 最早何がなんだか分からない状況に陥りつつあった。
 なおこの二人の戦績は49戦0勝0敗0分け又はアリサによる調停が49である。
 一回目の調停では買い物帰りでバイクに乗っていたに流れ弾が直撃し、ぶつかり合う二人に向かって
渾身の絶龍砲をアウトレンジから叩き込んで強制終了。数回目の場合はお茶会中のアリサの目前に二人の魔力砲が
降り注いで紅茶やらお菓子やらが全て駄目になり、アリサが静かにキレて有無を言わせぬ迫力で空中にいる二人を
呼び出して3時間に及ぶ折檻で強制終了させたという過去があったりする。なお二人はその事を思い出すと
体の震えが止まらなくなるとか・・・


 ところ変わって、ミッド有数の遊園地にやってきたたちは無尽蔵の体力を発揮して遊びまくるちびっ子たちに
振り回されていた。
「ゼスト、生きてるか?」
「・・・すまん。俺はもう無理だ・・・」
 はまだ余裕があるものの、ゼストは既にグロッキーだった。絶叫マシーン十連続は流石にきつかったらしい。
「・・・子供らは元気だな・・・」
「遊んでる子供は大人では太刀打ちできない怪獣になる。スバルたちに任せよう。なあティアナ」
「・・・すみません。子供の体力を見くびってました・・・」
 ゼストと同じくグロッキーなティアナがに膝枕されて額に濡らしたハンカチを当てられていた。
<チンク。楽しんでいるところ申し訳ないがスバルだけでは心許ないので子供達の世話を頼む>
<了解した。なに、下の妹の世話には慣れている。正直なところノーヴェたちよりも手がかからないよ>
<そいつはよかった。聞き分け良い子達なんで少しばかり注意してくれてれば良いぞ>
<分かっている。む、すまんそろそろアトラクションが・・・>
 一緒に遊園地に来ていたチンクに子供達の世話を頼む。彼女は妹達の面倒を見ていた事もあり面倒見が良く
気も利くため最近は子供達の世話をしてもらっている。
「もうあと少しで閉園だな。気張れ二人とも。後二時間で帰れる」
「「・・・了解」」
 疲れ切った大人たちと年長の少女は尽きた体力を気力でカバーし家に帰る為の最後の戦いに臨むのだった。


 ―――その頃の嫁と姑
「なのは。ミスティ。あんた達の仲がこれ以上なく悪いと言うのは知っているわ。でもね、限度を考えなさい!!」
「「は、はい! 申し訳ありませんでした!」」
 急遽海鳴から呼び出された怒り心頭のアリサの前に、なのはとミスティは土下座しながら震えていた。
 それもそのはず、修復中だった南棟を完全粉砕してしまったのだ。
からあんた達の処遇は既に聞いているわ」
「「ええっ!?」」
「二人には不破邸にいる間は吸魔樹の腕輪をつけて魔法の使用絶対禁止!」
「「えーーー!?」」
「だまらっしゃい!! の部屋があんた達の所為で半壊してて使用できない状態なのよ!!」
「「あう・・・」」
 流石にには悪いと思うのか口をつぐむ二人。
 だが忘れてはいけない。の寝室は私室としても利用しており、破壊された部屋の個人のパソコンには構想中の新規開
発品のデータが山ほど入っていた事を・・・そしてそれは研究室の方には入っていなかったりする。
 直接経営にダメージが出る事は無いが・・・のやる気に深刻なダメージがあったらしい。
はしばらく開発関係の仕事からひいてシンクタンクの経営と新規創設する特別救助隊の方に力を入れるそうよ」
「「あう・・・・ごめんなさい」」
「謝る相手が違う!!」
「「ごめんなさい!!」」
 二人がアリサに説教をされ始めて早数時間、たちが帰ってきた。
「これはどういうことだ?」
「あ、あの・・・お兄様・・・」
「そ、そのぅ・・・」
 ゼストに子供達の事を任せて先に家に入らせたは、アインから二人が暴れた被害とその経過を聞いて
まったくの無表情になっていた。ちなみに怒っている理由は施設を破壊された事ではない。
「ゆりかごで使ったブラスターの反動が癒え切って無いにも拘らずブラスターを使っただと!?」
「あ・・・えっと・・・それは・・・」
 の剣幕に思わず怯えるなのは。
「相変わらずこの子は自分の体の事には無頓着よね・・・」
「止める方法は幾つかあるだろうが・・・よし、アレで行こう」
「あ、あの〜・・・私は何をされてしまうのでしょうか・・・?」
 とりあえずミスティはアリサに任せた。ミスティはアリサに心酔しており言う事を聞くのでいつも任せているのだ。
「自分の体が自分だけのものでなくなれば認識も変わるだろう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。あんた・・・」
「それぐらいの事にならないとどうにもならんだろう。多少予定が早まるだけだ」
「・・・まあいっか。自業自得だし」
「あの、私は何で担がれているんでしょうか・・・?」
 はなのはを肩に担ぎ足早に去っていった。

「アリサおねーちゃん。パパとママは?」
 ヴィヴィオがアリサの元にやってきていた。となのはを探しているらしい。
「ヴィヴィオ? あー・・・ねえヴィヴィオ。兄弟って欲しくない?」
「? エリオおにーちゃんやキャロおねーちゃんがいるよ?」
「ヴィヴィオに弟か妹が欲しくないかってことよ」
「ヴィヴィオおねーちゃんになるの?」
「そうよ」
「ほしー!」
「なら二人の事はそっとしておくのよ。今日はあたしがそばにいてあげるから」
「うん! えへへー、ヴィヴィオがおねーちゃんだー!」
 下の兄弟が出来ると聞いて素直に喜ぶヴィヴィオを微笑ましく眺めて、少しばかり複雑な視線をなのはの部屋に向ける。
 明かりがついたなのはの部屋でナニが行われているか想像してしまい頬を赤らめてから、ヴィヴィオを抱き上げて
密かに逃げようとしていたミスティの襟首を掴んで引きずりながら屋敷に入っていった。


 翌朝、どことなく満足そうなと疲れきっていながらも幸せそうに蕩けているなのはが目撃され、
事情を聞いたはやてがに迫っていたがいまだ残っている急ぎの仕事を理由にグリフィスとシャリオに
引きずられていったらしい。

「アリサちゃ〜〜ん! なんとかしてや〜! なのはちゃんにも先越される〜〜〜〜!!」
「あたしに泣きついてどうすんのよ。・・・こら、ミスティ逃げない」
「で、ですがお姉さま・・・これはきつすぎ「なんか言った?」何でもありません・・・」
 はやてはアリサに泣きつくが、実を言うと一番遅れているのはアリサである。まだ彼女は清い体なのだ。
 そしてとうのアリサはミスティをお仕置き中だった。何をどうお仕置きしているのかは凄惨すぎて描写できない。
「あんたもいい加減認めてあげなさいよ」
「い、嫌なのです。あの女だけは駄目なのです・・・欲を言うとお兄様の妻となられるのはアリサお姉さまだけが最も相
応しいのですよ・・・うあうっ!!」
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけどね。何で駄目なの?」
「あ、アリサお姉さま以外の婚約者の方はお兄様に甘えているだけに見えるのですよ。お、お兄様に相応しいのは・・・
うぐっ! 隣で支えられる女性なのです・・・だからこそアリサお姉さまこそが・・・いうあっ!!」
「あー・・・うん、アリサちゃん。その辺にしとかなミスティが壊れるんやないの?」
「大丈夫よ。この子頑丈だから」
 ミスティの惨状に自身の悩みを忘れたはやてはそそくさと退散した。
 そして不破邸の地下にあるアリサ謹製お仕置き部屋にはミスティの悲鳴が響き続け、あとでなのはの悲鳴も聞こえたと
スバルが顔を青くしながらティアナに語ったらしい。


 嫁姑戦争前哨戦  アリサの怒りにより引き分け




あとがき

なのはVSミスティでした。
実力はほぼ五分ですが、絶対に周りを巻き込むんで途中で強制終了されてお仕置きされてます。
いやもう自分でも何を書いているのか・・・・
なお、ヴィヴィオ的に自分の妹or弟はなのはとの子供であると認識しています。
というかこの時点ではヴィヴィオはまだすずかのおなかの子の事を知りません。
大体まだ一ヶ月ちょっとなので・・・

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